人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2019年11月25日(月)放送

テーマ / アイヌの人々 ジャンル検索

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アイヌ民族の伝統を守る新法成立
「イランカラプテ!」。アイヌ語で「こんにちは」を意味する言葉です。二〇一九年四月、「アイヌ新法」が成立しました。この法律は初めてアイヌの人々を「先住民族」と認め、これをきっかけにアイヌの言葉や伝統的な文化を継承する活動が盛んになると期待されています。

北海道平取町にある、「二風谷アイヌ文化博物館」では、アイヌの歴史や文化を伝えています。豊かな自然に恵まれ、昔からアイヌの人々が多く住んでいる地域です。
アイヌ語で集落のことをコタンと言います。アイヌの人は、かつては海や山、川で主に狩りや植物採集をして生きていました。また、新築祝いや先祖供養のために、神に歌や踊りを捧げるなど独自の文化を育んできました。
アイヌの言葉の中には、私たちになじみのあるものも多くあります。例えば稚内や登別など北海道の地名の多くは、実はアイヌ語です。また、平取町では現在でも毎年夏に、舟おろしを意味する「チプサンケ」というお祭りをしています。一本の木をくり抜いた船に魂を入れて進水する儀式です。アイヌの人々は、このような儀式や言葉、歌、踊りなどを、大切に受け継いできたのです。
しかし、明治時代になると本州から北海道に多くの人が移
り住み、アイヌの人々は住んでいた土地を追われたり、風習である狩猟や魚取りを制限されたりとつらい思いをしてきました。
国はそれを反省して、アイヌ新法に「アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活できる社会の実現を目指す」という言葉を盛り込みました。日本政府がアイヌ民族の伝統的な暮らし方を大切にすると約束し、観光や産業を支援していくと決めたのです。
博物館の学芸員、長田佳宏さんは「日本列島の北に、豊かな文化があったことを現代の人に知ってもらいたい。アイヌ文化を知ることは、日本の文化の多様性を知ることです」と語ります。

二〇二〇年には、北海道白老町に「国立アイヌ民族博物館」が完成する予定です。長田さんは「アイヌ民族に関心を持って北海道に来る人が増えるとうれしい。アイヌの人や文化と触れ合ってほしい」と期待しています。
では、また。