人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2014年10月16日(木)放送

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「知る」ことから始まる
今日は、北九州市が募集した人権作文の入選作品の中にあったお話を紹介します。

私はかつて、同和地区に近い住宅地に住んでいた。

なぜか住民たちは、その地区に近寄らないようにしていた。

そこには、動物の革製品を作る工場があり、皮をなめした臭いがしていたのは事実だ。

そしてそれは、あまりいい臭いではなかった。

ある日、小学一年生の息子と私は、近道をしようと、その地区の中で自転車を走らせていた。

スピードを出していたせいか、息子が自転車ごと、工場の横のどぶに落ちてしまった。

顔から足まで泥まみれになり、ワーワー泣きじゃくる息子のもとへ、

工場で作業をしていた二人が駆けつけてくれた。

二人は自転車を引き上げ、息子を水道まで連れていき、

頭から水をかけてきれいに洗ってくれた。

後日、お礼に工場を訪ねた私に、彼らは「普通のことをしただけです」と言う。

私はそれまで「同和地区」というだけで何か自分たちとは違う特別な人のように思っていた。

ところが、知り合ってみると、親切でごく普通の人たちだった。

私は、先入観で見ていたことを恥じ入った。

この経験をきっかけに、同和地区はいつ、何のためにできたのかなどを知りたくなった。

人間がつくった制度で、時の権力者が都合よく利用した面もあるようだ。

歴史的な事実を知ることで理解も深まる。

何よりも「知る」ことが大切だ。

私がそうだったように、知らないことが誤解や偏見を生むことにつながるのだ。

現在、身分制度はなくなり、法の下の平等が憲法に定められている。

あとは個々の人間の心に潜む意識だと思う。

泥まみれになった息子を、自分が汚れるのも構わず洗ってくれた人たち。

「知る」ことの大切さに気付くのと同時に、

あの日以来「持つまい偏見、させまい差別」が私の座右の銘になった。

いかがでしたか。

「知らないこと」や「知ろうとしないこと」が偏見や差別を生みます。

大切なのは、まず「知る」こと。正しい知識を持つこと。

その上で、自分の目と心で判断することです。

私たち一人一人がそういう認識で行動すれば、

差別という負の連鎖も、きっと絶つことができるはずです。

では、また。