人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2014年11月13日(木)放送

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ホームレスを切り捨てない社会へ
今日は、ホームレスについてのお話です。

2008年のリーマンショック以降、ネットカフェを転々とするなど、

20代や30代の若者ホームレスの増加が指摘されています。

神奈川県(かながわけん)出身のフォトジャーナリスト、安田菜津紀(やすだなつき)さんは

東アジアなど国内外の貧困問題をテーマに活動を続けており、

若者ホームレスの取材も行ってきました。

その一人、20代のAさんは、仕事のミスで退職を余儀なくされ、

会社の寮も出ざるを得ませんでした。

両親は他界していて身を寄せる場所もなく、やむなく路上生活となりました。

職探しをしても住まいや連絡先がないと受け付けてもらえません。

生活保護を受けアパートに入居できると仕事も見つかりましたが、

すぐにその会社がつぶれてしまいました。

安田さんは取材を重ねるうちに、

よく耳にする「ホームレスは自己責任」という意見に疑問を持ち始めます。

「若者ホームレスは貧困家庭で育った人が多く、

肉親の庇護(ひご)を受けられない環境にあります。

どんなに優秀な人でも住所不定では雇うところもありません。

本人の努力ではどうにもならない社会的要因もあるのです」と話します。

ホームレスは家とともに人との関わりもなくした状態の人がほとんどで、

長く続けるほど社会から孤立し生きる意欲も薄れていくといいます。

安田さんはこうメッセージを送ります。

「お金や物を与えれば問題が解決するわけではありません。

当事者はほとんど自分から声を出せない立場にいます。

その声にならない声に誰もが耳を傾けることが求められていると思います」と。

北九州市で25年にわたり、炊き出しや就労支援などホームレスに温かい手を差し伸べている

「抱樸(ほうぼく)」というNPO法人があります。

2013年には困窮、孤立した方々の支援を目的とした入居施設「抱樸館北九州」も設立しました。

「抱樸」の奥田知志(おくだともし)理事長はこう訴えます。

「『無縁社会』とよくいわれますが、困ったときお互いに助け合う人間関係があれば、

ホームレスにならなくて済んだ人は多いはずです。

困窮・孤立者を生まない社会づくりをみんなが考えることが大切です」と。

ホームレスに必要な「人とのつながり」の大切さに、あらためて気付かされますね。

では、また。