人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2014年11月17日(月)放送

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悲しみに向き合って生きる
今日は、ある日突然、妹一家を殺害された入江杏(いりえあん)さんの経験を基に、

被害者遺族の問題を考えてみます。

2000年の大みそか、東京都(とうきょうと)世田谷区(せたがやく)で、

会社員宮沢(みやざわ)みきおさんと妻泰子(やすこ)さん、小学二年生のにいなさん、

保育園児の礼(れい)くんの一家四人が殺害される事件が起こりました。

泰子さんは入江さんの妹でした。

入江さんは事件現場となった住宅の隣に住んでいたにもかかわらず、

防音壁で隔てられていたため事件に気付きませんでした。

事件は今も未解決です。

「なぜ、妹家族が殺されなければならなかったのか。なぜ、救えなかったのか」

事件後、入江さんは自責の念を抱き、生きる気力さえなくしてしまいます。

そんな入江さんを救ったのは、

にいなさんが童話「スーホの白い馬」のワンシーンを描いた一枚の絵でした。

「スーホの白い馬」は少年と馬の話です。

少年スーホが大切に育てていた馬がいました。

しかしその馬は王様に取り上げられ殺されてしまいます。

悲しむスーホ。でも、夢に現れた馬は言うのです。

「悲しまないで。私の骨や皮で楽器を作ってください。

そうすればいつもあなたのそばにいられます」と。

絵には、ほほ笑む少女の姿も描かれていました。

にいなさんのようでした。

そのとき、入江さんはご主人から言われます。

「ママが泣くと絵の少女も泣くよ。過去は変えられないけど、

過去のとらえ方で今と未来は変えられるからね」と。

入江さんはその言葉に生きる力をもらいました。

そして、悲しみから立ち直るのに必要なのは、

自分を無条件に受け入れ、愛してくれる人の存在なのだと気付きます。

現在、入江さんは自らの経験を基に講演や絵本の創作、

全国の小学校で読み語りの活動を行っています。

活動を通じて入江さんは、学校や社会が悲しみから目を背けたがっていることに疑問を感じ、こう訴えます。

「悲しみは喜びの裏返しです。悲しみを知ることで喜びの大切さを知るのです。

子どもたちには、悲しみのメッセージにも耳を傾け、心を育んでほしいですね」

いかがでしたか。

悲しんでいる人に寄り添うのは難しいことです。

でも人は、気に掛けてくれる人がいるだけで癒(いや)やされます。

人の悲しみに気付き、励まし合える社会にしたいものですね。

では、また。