人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

メニュー

ここからコンテンツです

  • 2015年10月29日(木)放送

テーマ / 生命/平和/環境/思いやり/気付き ジャンル検索

YouTubeで音声を再生します。

PDFダウンロード
嘉代子桜・親子桜
皆さんは「嘉代子桜・親子桜」という名前の桜を聞いたことがありますか?北九州市内の全ての市立小学校と六つの公園に、この名前の桜が植えられています。今日は、特別な思いが込められたこの桜の由来を紹介します。

今から七十年前の一九四五年八月九日、長崎に原爆が落とされ、多くの命が失われました。その一人に、当時十五歳だった林嘉代子さんがいました。嘉代子さんのお母さんは、娘をしのぶ思いと平和への願いを込めて、娘が亡くなった現在の長崎市立城山小学校に五十本の桜を植えました。その桜は「嘉代子桜」と呼ばれ、今も六本が残っています。
それから六十年以上たった二〇〇九年、北九州市は「嘉代子桜」に由来する桜に「嘉代子桜・親子桜」と名付け、平和の尊さを伝えていくため市内に植樹を始めました。というのも、八月九日の原爆投下は当初、小倉の街が標的でした。しかし、その日は視界が悪かったため、長崎に変更されたのです。北九州市にとって原爆は他人事ではなく、翌二〇一〇年には「非核平和都市宣言」も行っています。
桜の苗木は、長崎の市民団体「かよこ桜親子桜を広める会」から提供を受けました。被爆者である田中安次郎さんの呼び掛けで結成されたこの団体は、「嘉代子桜」に込められた願いを全国へ広める活動を行っています。田中さんはこう話します。
「私は次の世代へ平和のバトンをつなぐ存在。桜を通して戦争の悲惨さ、平和の大切さ、命の尊さを伝えていきたい。」
と。
北九州市での植樹は、市の職員が田中さんの活動に共鳴し、協力を求めて実現しました。市内の小学校では、この「嘉代子桜・親子桜」を平和に関する学習などで取り上げています。市は今後、市立中学校や別の公園でも植樹を進めることにしています。

毎年、春になると美しい花を咲かせる桜。桜を見たら、「嘉代子桜・親子桜」のことを思い出し、平和の大切さとありがたさについてあらためて考えていきたいですね。
では、また。