人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2016年11月15日(火)放送

テーマ / 性同一性障害 ジャンル検索

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体の性、心の性、名前の性
 北九州市立大学では二〇一五年度に、性同一性障害の学生が心の性に沿った通称名を使える制度を導入しました。同大学の河嶋静代教授が二〇一四年に全国の大学に行ったアンケート調査によると、通称名を認めているのは、回答した二百四十一校のうち十校余りでした。

 北九大が通称名を認めるきっかけになったのは、Aさんという学生からの強い要望でした。Aさんは、男の子の体に生まれましたが、幼いころから自分は女の子だと思っていました。大学に入ると「自分らしく生きていく」という決意から、性同一性障害であることをカミングアウトし、服装を変え、性的マイノリティーの存在を理解してもらう活動に力を入れました。大学に対しても、「『君付け』ではなく『さん付け』で呼んで欲しい。そして、本名の男性名ではなく、日常的に用いている女性名を使いたい。」と申し出ました。そんなAさんの姿は、目の前にある壁を一つ一つ乗り越え、自分の道を切り開いていくんだという信念に満ちていました。
 Aさんの思いを受け止めた北九大は、学生相談室、学務課学生係、学生部委員会、学生サポート委員会が連携して審議。「性同一性障害の診断書などを提出すれば、学生証や卒業証書などへの通称名使用を認める」という制度を設けたのです。
 女性名を認められたAさんは、背中を押されるように戸籍の名前を変更し、続いて性別適合手術を受けました。卒業後は戸籍の性別も変更し、今は心身共に女性として社会生活を送っています。
「大学で通称名を認められたことが、自分の人生をよりよくしていく第一歩になった。」
と、Aさんは大学の対応を高く評価しています。
  「様々な性に寄り添う大学」というイメージが根付き始めた北九大では、学生たちの間にも支援者が増え、二〇一六年四月には学生が中心となって「小倉でレインボーパレードするっちゃ!」というイベントを開催。性の多様性を広く社会にアピールしました。

 性的マイノリティーの人たちは、「少数派」であることから「普通じゃない」と排除されたり、からかいの対象になったりすることもあります。多様性を尊重し、認め合い、誰もが自分らしく生きられる社会をつくっていけたらいいですね。
 では、また。