人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2017年11月15日(水)放送

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三陸
今日は北九州市立文学館が平成二十八年度に募集した第七回「あなたにあいたくて生まれてきた詩」コンクールの中から、北九州市の中学二年生、中林宏太さんの『三陸』という詩を紹介します。
 
 『三陸』
九州国際大学付属中学校二年 中林宏太


日が昇って、日が沈む
ただそれだけで大切なもの
穏やかな海面に光が反射する
丸い島々、断層、松
この海が数年前、牙をむいた
どこから来た、と笑顔の人がきく
この人々の生活を津波が襲った
仮設住宅の人々が作った文鎮
プレハブの商店街の食事はおいしかった
赤土の広がり
更地の中に一つ残った庁舎の鉄骨
新しい道路
一歩一歩しか進まない日々を
三陸の人々は、前へと歩く
海と共に

いかがでしたか。青森から岩手、宮城と広がる三陸海岸は、六年前の東日本大震災で、大きな被害を受けました。あの日から、現地の人々は悲しみや困難を乗り越え、頑張ってきました。  
北九州からやって来た中学生の宏太さんに、笑顔で「どこから来た?」と声をかける人。未だ多くの人々が仮設住宅で暮らしていますが、そこでも文鎮が作られ、プレハブの商店街は元気に街を盛り立てています。三陸の穏やかな海の風景や、現地の人々の優しさに触れて、宏太さんは感動したのですね。
がれきの山だった地区も、更地となり、かさ上げ工事も進み、宅地になったりしています。津波にあった農地も多くは復活し、海辺に並んでいた水産加工工場も九割近くが、その営業を再開しています。全国から駆け付けたボランティア、各自治体からの応援、世界各国から差し伸べられた支援もあって、三陸の復興は一歩一歩、進んでいます。
三陸は世界有数の漁場です。美味しいものがたくさん獲れる豊かな海です。あの津波を起こした海だけれど、この海とともに生きていこうと決めた現地の人々。その頑張りにエールを送るように、宏太さんは詩をこんな風に締めくくりました。

一歩一歩しか進まない日々を
三陸の人々は、前へと歩く
海と共に

私たちも、被災地で暮らしている人々に心を寄せ、復興の努力を続ける人々を忘れないように、東日本大震災の記憶を心に留めておくことが大切なのではないでしょうか。
では、また。