人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2018年11月12日(月)放送

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絵本で伝える「私」の大切さ
子どもの自殺を食い止めようと、絵本の読み聞かせを通して、自分を大事にすることの大切さを伝えている女性がいます。絵本作家の夢ら丘実果さんです。夢ら丘さんは、親しい友人を自殺で失ったことや、娘の通う学校でいじめが起こったことから、児童教育評論家の吉澤誠さんや聖路加国際病院の日野原重明医師、日本いのちの電話連盟の齋藤友紀雄理事たちと絵本を制作し、読み聞かせによる「命の授業」を始めました。
絵本の名前は「カーくんと森のなかまたち」。全国の小中学校で、これまで六百回以上、読み聞かせの授業を開いています。
 
絵本は、次のようなあらすじです。
ホシガラスのカーくんは、自分に何一つ取り柄がないことに劣等感を感じていました。自分なんかいなくていい、消えてしまいたいとさえ考えていました。でも、森の仲間たちに、今まで気付かなかった自分の長所を教わります。星のようにきれいな羽模様をしていること、木の実を割って種を運んで若い木を育てていることなどです。それを聞いて、カーくんは自信を取り戻していきます。
 
夢ら丘さんが読み聞かせをすると、子どもたちは、まるで主人公に自分を重ね合わせているかのように、真剣に聴き入ります。
授業の後、「困ったとき、相談したら、助けてもらえることが分かって安心した」「悩んでいる人がいたら力になりたい」など、様々な感想が寄せられるそうです。

夢ら丘さんは、いじめなどに遭って悩みを抱えている子どもは、心が弱くなって、心の風邪をひいている状態だと言います。また、そうした子どもの多くは、自分を肯定する自尊感情を高めることが必要だとも言っています。だからこそ心の風邪が深刻にならないうちに、自分の素晴らしさや尊さに気付いてもらえるよう、活動を続けているのだそうです。
 
最後に、絵本の一節を紹介します。

カーくんは、さっきゆめでみた森を思いうかべました。
だれもいない、いのちのかけらも感じられなかったあの森が、どんなにさびしかったか…。
だけどカーくんは、知らないあいだに、森に新しいいのちをあたえていたというのです。
そして、この森にはこんなに友だちがいて、カーくんのからだにはきれいな星空まであるなんて、はじめて気がついたのでした。
「みんなが、いてよかった。ぼくも、いてよかった。
ぼくも、ぼくでよかった…」

夢ら丘さんたちは、今後も、日野原先生のご遺志を引き継ぎ、この「命の授業」を続けていくとのことです。
では、また。