人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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明日への伝言板試聴コーナー

  • 2023年11月8日(水)放送
  • テーマ / 拉致問題 ジャンル検索
  • ただ家族を取り戻したい

鶴田弥生

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ただ家族を取り戻したい

皆さんは、北朝鮮に拉致された被害者の家族の中に、わずか一歳で母親と離ればなれになってしまった人がいることを御存じですか?

「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の事務局長を務められている飯塚耕一郎さんこそ、その方です。
生みの母親の存在を知ったのは、仕事でパスポートが必要になり、戸籍謄本を取った時のことでした。母親の欄に書かれていたのは、『田口八重子』という全く知らない女性の名前です。驚いた耕一郎さんは父親に尋ねました。
「これはどういうことなんだ?」
口ごもり、なかなかはっきり話そうとしなかった父親が、ようやく「お前は私の実の子ではなく、妹の八重子の子どもなんだ」と打ち明けてくれたそうです。
なぜ八重子さんがいなくなったのか。それは北朝鮮の拉致によるものだということや、一九八七年の大韓航空機爆破事件の時に八重子さんの消息がわかったことなどを、ポツリポツリと話してくれました。

実の母親が北朝鮮で生きている…。
ところが、その思いは、二〇〇二年に突然打ち砕かれることになります。この年、北朝鮮は初めて拉致の事実を認めましたが、日本政府が拉致されたと認定している十七名のうち、八名が死亡、四名は入国しておらず、生存しているのは五名のみだと言うのです。この時、田口八重子さんは交通事故で死亡したと伝えられました。耕一郎さんはその知らせを赴任先の海外で聞き、生みの親と育ての親、それぞれの深い苦しみを思うと涙が止めどなく流れたと言います。

のちの調査によると田口八重子さんは北朝鮮で生きている可能性が高いとみられています。一歳の時に母親が拉致され、二十五歳の時には死亡を告げられ、その後、生きているとわかってもなお、会うことが叶わない。そんな日々は、どんなに辛いことでしょう。拉致問題は、拉致被害者やその家族が本来生きたはずの人生を奪った、あってはならない人権侵害なのです。

拉致問題は未だ解決されていません。「母に会いたい。」「子どもに会いたい。」…
拉致被害者の家族は、「私たちはただ、家族を取り戻したいだけなのです」と声をあげ続けています。私たちも、拉致問題への関心を絶やすことなく持ち続けていきましょう。
では、また。