人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

メニュー

ここからコンテンツです

明日への伝言板試聴コーナー

  • 2023年11月14日(火)放送
  • テーマ / 子ども ジャンル検索
  • つながった夏

鶴田弥生

YouTubeを再生する

PDFダウンロードPDFダウンロード
つながった夏

今日は、北九州市立文学館が令和四年度に募集した第十三回「あなたにあいたくて生まれてきた詩」コンクールの最優秀賞みずかみかずよ賞を受賞した北九州市の小学四年生、金子愛奈さんの詩を紹介します。題は『つながった夏』です。

『つながった夏』

ばあちゃんと初めての長崎
おはかまいりに連れていってもらった
 じいちゃんとばあちゃんの田舎なのよ
 今はもうだれも住んでいないけど
 ここがばあちゃんが生まれた家よ
 この川にはホタルがたくさんいたのよ
 この山道を自転車で学校に通っていたのよ
 ばあちゃんたちは七人きょうだいでね
 あのみかん畑をみんなで手伝っていたのよ

ひとつひとつ話してくれるばあちゃんの
楽しそうな声を聞きながら
きれいなところだなあ そう思っていたら
大きな池の前で車がとまった

 じいちゃんが子どもの時に泳いでいた池よ

じいちゃんは今 しせつに入っている
そういえば 前に聞いたことがある
じいちゃんが子どものころ 八月九日
今のわたしと同じ四年生だったじいちゃんは
朝から友だちとこの池で泳いでいた
そのとき急にピカッと
目がいたいくらいに空が光った
少しおくれて ドドオォーン!
たぶん近くに大きなかみなりが落ちたんだ
じいちゃんはそう思って
あわてて池から上がったら
すぐに海のむこうから
真っ黒い雲が もくもくわきあがって
まわりは夕方になったみたいに暗くなった
海のむこうの長崎市が
新がたばくだんにやられた と聞いたのは
次の日のラジオだった って

ここなの?
わたしも じいちゃんと同じ方を向いて
その池の前に立ってみた
今日はきれいな青い海と白い雲と青い空
あの海のむこうなの?
想ぞうしてみた
じいちゃん 怖かっただろうな

わたしと じいちゃんと
戦争と
初めてつながった夏

いかがでしたか。
おじいさんと同じ場所に立って、あの日原爆が落ちた海の向こうの風景を見たとき、作者の金子さんは初めて戦争を身近に感じることができたんですね。
戦争を知らない世代が増えた今、私たちは戦争の悲惨さを見て見ぬふりをしたり、自分には関係のないことだと無関心になったりしがちです。戦争は、尊い人のいのちや生活を奪う重大な人権侵害です。
北九州市には、私たちに平和の尊さを思い起こさせてくれる「北九州市平和のまちミュージアム」が令和四年四月に開館しました。一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
では、また。