特集文学館10周年

過去と未来を結ぶ文学の架け橋

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 明治時代以降、多くの文学関係者を輩出し、豊かな文学の歴史が息づく北九州市。文学館は、本市にゆかりのある文学者の貴重な資料を収集・保存・展示するとともに、調査研究の拠点となっており、11月1日に10周年を迎えます。今回は、文学館の取り組みや収蔵品、10周年記念の企画などを紹介します。

文学を育む豊かな土壌

 江戸時代には長崎街道の宿場町として、明治時代以降は官営八幡製鐵所に代表される近代工業都市として発展してきた北九州市。大陸や首都圏などと人や情報の往来が活発になったことで、豊かな文化が育まれてきた街でもあります。

 明治期には、文豪・森鷗外が陸軍軍医として小倉に赴任し数年を過ごしたほか、俳人・杉田久女や「放浪記」で知られる作家・林芙美子、芥川賞作家の火野葦平、さらには、多くの推理小説を残した松本清張など多くの文学者を輩出しています。

 企業での文芸に関するクラブ活動や同人誌活動なども盛んで、岩下俊作は八幡製鐵所(現・新日鐵住金)勤務の傍ら、同人誌「九州文学」に「富島松五郎伝」を発表。後に「無法松の一生」として映画化され、ヒットしました。また、文学館の初代館長・佐木隆三も勤務していた八幡製鐵所の職場雑誌「製鐵文化」や社内報「くろがね」に寄稿し、後に労働者作家として注目されるようになるなど企業の文化活動が文学の土壌を豊かにしてきました。

学芸員のお薦め

 文学館は、昭和50年に建築家・磯崎新さんの設計で建築された歴史博物館を改装利用しています。アーチ状の天井や磯崎さんデザインの直径7mのステンドグラスが見所です。

 収蔵品では、作家のリリー・フランキーさんの自筆原稿や、映画「無法松の一生」がベネチア国際映画祭でグランプリ(金獅子賞)を受賞したときの盾などが必見です。

 また、10月22日(土)~12月4日(日)には、「没後20年司馬りょう太郎展」が開催されます。歴史小説で知られる作家・司馬りょう太郎の自筆原稿や初版本などが展示される貴重な機会です。

「文学の街・北九州」の取り組み

 現在、本市では文学館を中心に、「文学の街・北九州」のキャッチコピーのもと、新人作家の発掘や、本市ゆかりの文学者の顕彰などを目的とした三つの文学賞を主催しています。新人作家の登竜門となることを目指す「林芙美子文学賞」は短・中編小説が対象で、受賞作は「小説トリッパー」に掲載されます。また、「子どもノンフィクション文学賞」「あなたにあいたくて生まれてきた詩コンクール」は、小・中学生が対象。文章や詩に親しむきっかけ作りや「文学の街・北九州」を広く全国に発信することに寄与しています。

 皆さんも文学の秋にじっくりと浸れる文学館へ、足を運んでみませんか。

文学館

所在地:小倉北区城内4‐1 TEL093・571・1505

開館時間:9時30分~18時(入館は17時30分まで)

休館日:月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、年末年始

料金:一般200円、中学・高校生100円、小学生50円(特別企画展開催中は別途観覧料が必要)

※それぞれが2割引きになる「松本清張記念館」とのセット券もあります

開館10周年記念イベント

(1)バースデーコンサート

 響ホール室内合奏団メンバーが、本市ゆかりの作家にちなんだ楽曲を演奏し、開館記念日を祝います。11月1日(火)14~15時、文学館で。

森鷗外の自筆書簡
▲森鷗外の自筆書簡

(2)森鷗外の書簡を3日間だけ特別公開

 森鷗外が江戸時代の医師・渋江抽斎についての本を執筆する際、抽斎の息子である翻訳家・渋江保に宛てた書簡を公開します。鷗外の自筆を間近に見てみませんか。11月1日(火)~3日(祝)、文学館で。

(3)講演会&対談

 11月3日(祝)に、文学館にゆかりのある作家による講演会と対談が北九州芸術劇場(リバーウォーク北九州6階)で開催されます。
 第一部(13時30分~15時)では、福岡県出身の直木賞作家・五木寛之さんが「いまを生きる力」をテーマに講演します。第二部(19~20時30分)では、共に小倉北区生まれの作家であるリリー・フランキーさんと山崎ナオコーラさんが北九州への思い入れや文学観について語ります。

 共通の内容 申し込みは(1)(3)は必要。(3)は10月21日、(1)は30日まで。詳細は文学館(TEL093・571・1505)へ。

【この特集に関するお問い合わせ】 市民文化スポーツ局文学館 TEL093・571・1505

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