災害時障害者サポートマニュアル    はじめに  本マニュアルは、災害時等の緊急時に、障害者を支援する側が障害者の障害種別に対応した支援方法を理解し、避難所運営や避難誘導行動を円滑に行えるようにするために、作成しました。  本マニュアルは、「自助」として障害者自らが活用するものではなく、地域での助け合いである「共助」による救援・救護に備え、支援する側が障害者の障害種別に対応した支援方法を理解し、避難誘導行動が円滑にできるようにすることを目的とするものです。  このマニュアルを各地域における共助の取組に積極的に活用していただきたいと思います。 目次 障害のある人をサポートするとき(基本編) 1ページ 障害のある人をサポートするとき(状況別編) ●災害が発生したとき 2ページ ●避難誘導するとき 5ページ ●避難先にいるとき 8ページ 障害のある人をサポートするとき(障害種別編) ●視覚障害のある人をサポートするとき 11ページ ●聴覚障害のある人をサポートするとき 13ページ ●言語障害のある人をサポートするとき 15ページ ●肢体不自由の人をサポートするとき 17ページ ●内部障害のある人をサポートするとき 19ページ ●知的障害のある人をサポートするとき 21ページ ●発達障害のある人をサポートするとき 24ページ ●精神障害のある人をサポートするとき 28ページ ●高次脳機能障害のある人をサポートするとき 31ページ ●難病患者の人をサポートするとき 32ページ 参考情報 34ページ 1ページ 障害のある人をサポートするとき(基本編) まずは… ・外見からは、わからない障害がある人もいます。本人のプライバシーに配慮しながら障害の有無の確認をしましょう。 ・本人へのお手伝い、支援が必要かどうかの声かけをしましょう。 ・こちらの名前や身分、所属等を伝えましょう。 ・本人への配慮とあわせて、避難所等で周囲の人の理解を得ることも大切です。周囲の人への本人への配慮に対し、十分な説明をしましょう。 杖や車いすを使用しているため、移動が大変な人 ・どのような支援が必要か、本人に聞きましょう。 ・動作の前には必ず一声かけてから支援しましょう。 目に障害があるため、情報が伝わっていない可能性のある人 ・本人のそばに行き、周囲の状況、現在の状況を伝えましょう。 ・言葉で情報を伝えましょう。 耳に障害があるため、情報が伝わっていない可能性のある人 ・身振りや手振り、口の動き、筆談、手話などで情報を伝えましょう。 知的障害や精神障害などがあるため、混乱したり、動けなくなってしまう人 ・災害発生時には、誰もが動揺します。そんな時こそ、ゆっくり、はっきり簡潔に話しましょう。 ・急に体にさわられたり、手を引かれることを嫌う人もいます。こちらからではなく相手から腕や肩をつかんでもらうことも大切です。 障害が重いため、自分で判断することが難しい人 ・どのような支援が必要か、家族や介護者等に確認してから行動しましょう。 ・家族や介護者等に確認できない場合は、区役所や病院等の機関に連絡をとりましょう。 避難誘導時の二次災害防止 ・緊急の場合を除き、無理せずまわりに応援を求めるようにしましょう。 ・支援が必要な人への災害時の避難誘導は、避難路を確保しながら複数の人で対応しましょう。 2ページ 障害のある人をサポートするとき(状況別編) ●災害が発生したとき 対応のポイント ・不安をやわらげる工夫をしましょう。 ・ゆっくり・はっきり・具体的に伝えましょう。 ・短く、わかりやすい文やことばで伝えましょう。  災害が発生した時、障害のある人は、一般的な情報があっても、危険に対して理解・判断しにくい場合があります。  また、危険に対しても、適切な行動を取りにくい状況に置かれがちです。  障害の状況も一人ひとり違います。外見からは、わからない障害もあります。本人の希望とペースに合わせた対応が求められます。  言葉だけではなく、身振りや手振り等のコミュニケーション手段を工夫して説明しましょう。周囲の被害状況、避難先等の情報を伝えましょう。 3ページ Q. こんな場合は… A. このように対応… Q1.強く不安を感じている、混乱している。 A1.「大丈夫ですか?」など、優しく声をかけてから、状況を具体的にわかりやすく簡潔に説明しましょう。状況を知ることで、不安が和らぐことがあります。 Q2.本人が言いたいことをうまく表現できない。 A2.近くに家族や介護者等がいないか確認しましょう。本人がうまく言えない場合は、ヘルプカード等、非常時の緊急カード類に記載してある連絡先に連絡しましょう。 Q3.ケガをしている、または、体調不良を訴えている。 A3.ケガをしているか、体の痛みを訴えているかなどを確認して、生命の危険が判断される場合は、すぐにヘルプカード等、非常時の緊急カード類に記載してある連絡先に連絡しましょう。状況によっては、119番通報をしましょう。  本人が意思表示できない場合で、家族や介護者等の指示がある場合は、その指示に協力してください。  一人で対応せず、周囲にも応援を求めましょう。 Q4.目が見えない、または目が見えにくいようだ。 A4.本人のそばに行き、「避難所運営担当の○○です。お手伝いが必要ですか?」など声をかけると安心します。周囲の状況、現在の状況を伝えましょう。  説明するときは「あっち、そっち」などの言葉は使わずに、前後、左右、上下等、具体的な言葉を使うよう心がけましょう。 4ページ Q5.耳が聞こえない、または耳が聞こえにくいようだ。 A5.本人の受け答えの様子を見ながら、身振りや手振り、筆談、口の動き、手話等複数のコミュニケーションをとってみましょう。安全確保を優先するために、メモや身振り・手振り等で身を守るように伝えましょう。 Q6.歩行に障害がある、杖や車いすを使用している。 A6.どのような支援が必要か、本人に聞きましょう。動作の前には必ず一声かけてから介助を行いましょう。 Q7.医療機器を使用している。 A7.本人、または家族や介護者等に現在の健康状態を聞き、配慮することを聴き取りましょう。ヘルプカード等、非常時の緊急カード類があれば個別の支援方法を確認しましょう。 5ページ ●避難誘導するとき 対応のポイント ・避難誘導は、避難路を確認しながら複数の人で行いましょう。 ・一人で無理はせず、周りに応援を求めましょう。  災害発生時は、誰もが動揺します。そんな時こそ「ゆっくり、わかりやすく話す」ことが大切です。  何が起こっているのか、これからどこへ、どのように避難・移動するのかを、具体的に、わかりやすい言葉で、ゆっくりと、簡潔に説明しましょう。  本人に移動手段の要否、また希望の介助方法を確認しましょう。どこに避難したか、避難先のメモを残しましょう。 6ページ Q. こんな場合は… A. このように対応… Q1.避難誘導に応じない。 A1.状況を受け止められていないのかも知れません。話す側も落ち着いて、一度にたくさんのことを言わずに、一つひとつを簡潔に伝えるようにしましょう。話し言葉だけではなく、文字を利用することもあります。 Q2.避難誘導をしても動けない。 A2.急に身体に触れたり、強引に手をひいたりすると強い抵抗を示すことがあります。こちらからではなく、相手から肩につかまってもらったり、腕をつかんでもらうことも有効な方法です。 Q3.道に迷ったり、人や物にぶつかったりしている。 A3.混乱や興奮により、状況を整理できていないのかも知れません。道や建物の中で迷っている場合や、混雑している場所では、目的地までの誘導をお願いします。 Q4.目が見えない、または目が見えにくいようだ。 A4.視覚障害のある人に、誘導する人の腕や肩につかまってもらいます。曲がる方向や階段の上がり下がり等を伝えながら、誘導する人が半歩ほど前を歩きます。  どの経路を通っているのか、周囲の様子が日頃とはどのように変わっているのか、どのように危険なのかなど、周囲の状況を詳しく伝えながら誘導しましょう。 7ページ Q5.耳が聞こえない、または耳が聞こえにくいようだ。 A5.防災スピーカーやサイレンが聞こえていない場合があります。  火災等の危険が迫ってきているときや、緊急に避難する必要がある場合は、落ち着いて分かりやすい身振りや手振り、文字等で伝えましょう。身の回りの状況を説明しながら誘導しましょう。 Q6.歩行に障害がある、杖や車いすを使用している。 A6.段差やでこぼこの少ないところを選んで誘導しましょう。歩行しづらそうな人に対しては、支援の方法を聞き、腕を持つなどの介助を行います。車いすの人を介助する場合も、動作ごとに「車いすを押します」など必ず一声かけましょう。 Q7.杖や車いすでの移動が難しい。 A7.杖をなくしたり、車いすが壊れてしまった場合、障害物や道路状況により杖や車いすでの移動が困難な場合は、本人の希望や状態を確認したうえで、より具体的な介助方法を聞きましょう。  担架が用意できない場合は、背負ったり、複数の人で抱えて移動したり、毛布やシーツの両端を結んでくるむように乗せて、頭側を前進する方向に向けて引っ張って移動する方法もあります。   Q8.医療機器等を使用している。 A8.医療機器等の持ち出しが不可欠で、車等が必要な場合もあります。医療機関への連絡の必要性、必要な医薬品、補装具等を確認しましょう。また、ペースメーカーを使用している場合は、携帯電話やスマートフォン等の電子機器の使用確認を取るようにしましょう。判断できない場合は、医療機関に連絡を取りましょう。 8ページ ●避難先にいるとき 対応のポイント ・一人ひとりの状況の把握をしましょう。 ・共通の対応と個別の対応を、区別する必要があることを前提に支援しましょう。 ・避難先周辺の医療機関等との連絡方法を確保しましょう。  情報不足やコミュニケーション不足により、障害のある人が孤立することがないように配慮しましょう。  本人自身が、ケガをしていることや体調不良に気が付かないことがあります。本人に具体的に聞くほか、身体状況を一通りよく見るように心がけてください。  家族の中に障害のある人がいると、本人のそばを離れられない場合があります。配給等は、家族の代わりに並ぶ、別途配給するなどの配慮をしましょう。 9ページ Q. こんな場合は… A. このように対応… Q1.本人の意思がよくわからない。 A1.近くに家族や介護者等がいるか確認しましょう。ゆっくり、わかりやすく、具体的に伝えるよう心がけましょう。絵や写真、図等を使って伝えることも理解の手助けになります。 Q2.一斉放送が伝わっていないようだ。 A2.個別に声をかけるようにしましょう。大事な情報は、わかりやすく説明したり、メモに書き出すなどして伝えましょう。 Q3.大きな声を出したり、落ち着かない様子でいる。 A3.静かな場所に誘導する、またはパーテーションやテントを使用するなど、個別の空間を作ることで落ち着くことがあります。落ち着くまで待って話を聞くなどの対応をしましょう。  あらかじめ、危険な場所や近づいてはいけない場所には、×印をつけるなど、わかりやすい工夫をしましょう。 Q4.パニックを起こしている。 A4.強い不安や症状悪化、発作等が見られ、意識がはっきりしない場合で、家族や介護者等に確認できない場合は、速やかに主治医に連絡して指示を受けます。連絡が取れない場合は、最寄りの医療機関に相談しましょう。 10ページ Q5.目が見えない、または目が見えにくいようだ。 A5.回覧や掲示による情報は、まったく見えない人や視力の弱い人には、情報が伝わりません。伝達事項や各種情報をその都度、正確に伝わっているか確認することが必要です。 Q6.耳が聞こえない、または耳が聞こえにくいようだ。 A6.音情報を得られていない状態であることを理解しましょう。放送が流れても伝わらないので、音情報はメモや掲示で伝えましょう。  話し始めに本人が分かるような合図をしましょう。( 例: 肩をたたくなど) Q7.杖や車いすを使用している。 A7.避難先で杖、車いすの利用者、または移動に支援が必要な人がいる場合には、車 いす等が通ることのできる通路を確保してください。  また、避難先のトイレが使用できない場合も考えられますので、支障を生じることがないか、本人によく確認しましょう。 Q8.医療機器等を使用している、常用薬がある。 A8.医師、医療機関への連絡の必要性、必要な薬品、医療機器等を本人に確認しましょう。普段飲んでいる薬は、忘れずに飲むように勧めましょう。  避難先の環境、食事やトイレ確保等、個別の協力が必要となることを前提に対応しましょう。 Q9.一般の避難所での対応が困難な要援護者について。 A9.災害時には、まず一般の避難所に避難していただき、心身の状態等により一般の避難所での対応が困難な要援護者については、態勢の整った協定施設から、順次、福祉避難所として要援護者を受け入れていただくこととしています。  福祉避難所では、施設側の対応可能な範囲内で、簡易ベッドや毛布、車いす等の貸し出し、おむつ等の消耗品や食事の提供など、日常生活上の支援を行うこととしています。  一般の避難所での対応が困難なときは区役所に相談しましょう。 11ページ 障害のある人をサポートするとき(障害種別編) ●視覚障害のある人をサポートするとき 大切なこと「言葉で情報を伝える」 視覚障害のある人は、見え方により、ニーズも違ってきます。 大きく分けて、全く見えない人(全盲)、見えにくい人(弱視)、に分かれます。 さらに、見えにくい人(弱視)の場合、その人その人により見え方が違います。 例えば、 ・視野が狭い・視力が低い・ぼやける・まぶしく見える・中心部分が見えない・中心部分だけが見える といった状態にある人がいます。 本人の見え方を聞いておくと、配慮の仕方の参考になります。 【主な障害特性】 ・視覚による情報を受け取ることが困難。 ・移動にも困難が伴う。 【避難所で困ること】 ・避難所での連絡事項等を掲示物だけで表示されても、情報を受け取ることが困難。 ・災害の状況がテレビなど映像や写真で伝えられても、視覚による情報を受け取ることが困難、または受け取ることが遅れる。 ・周囲の災害の状況が判断できず対応が遅れる。 ・歩きなれた場所でも、状況が変わると移動できなくなるため、移動が困難になり、単独での避難が困難となる。 12ページ 【避難所で配慮すべき点】 ・音声による(必要な情報は読み上げて伝えるなど)情報伝達や状況説明、避難誘導時等の移動援助。 ・大きな字やメリハリのある色での情報伝達や案内表示。 ・体育館等の広い場所では、位置の確認が難しいため、トイレへ移動しやすい場所に避難場所を確保するなど。 サポートの例 @ 声をかける時には前から近づき「○○さん、こんにちは。△△です。」など自ら名乗り、その場を離れる時にも声をかけて本人に分かるようにしましょう。 A 場所の説明をするときは、「そこ」「あそこ」といった言葉を避け、「あなたの右側に」などと具体的に伝えるように心がけてください。「2時の方向に」などのクロックポジション(時計の文字盤を見立てた表現)での説明も有効です。障害のある人の向きを中心に説明しましょう。 B 誘導するときは、いきなり本人の体にさわったりせず、まずどのように誘導すればよいか尋ねてださい。なお、誘導する人は自分の腕か肩をつかんでもらい、本人の斜め半歩前に立って、安全性を確保するために道路や周囲の状況などの情報提供をしながら歩く速度をあわせることが一般的です。 13ページ ●聴覚障害のある人をサポートするとき 大切なこと「情報提供の仕方を工夫する」 聴覚障害のある人は、聞こえ方や本人の育った環境、年齢などによりニーズも違ってきます。 大きく分けて、音声言語を習得する前に聞こえない、または聞こえにくくなった人(ろう者、難聴者)と、習得した後に聞こえなくなった、または聞こえにくくなった人(中途失聴者、難聴者)に分かれます。 【主な障害特性】 ・聴覚によるさまざまな生活情報を受け取ることが困難。 ・外見では分からない障害であるため、社会の様々な場面において誤解を受けやすく孤立しやすい。 ・コミュニケーションの方法も手話を主なコミュニケーション手段とする人、文字によるコミュニケーション(筆談、字幕、要約筆記)を必要とする人など人により様々である。 【避難所で困ること】 ・災害の状況について、テレビの音声やラジオなど耳から入る様々な情報を受け取ることが困難、または受け取ることが遅れるため、適切な行動が取れない。 ・災害時は、情報収集のためのツール(ファックス、電子メール、字幕付テレビ番組など)が使えなくなる。 【避難所で配慮すべき点】 ・身振りや手振りによる情報伝達や、メモ、携帯電話やスマートフォンなどを活用した、文字による情報伝達をする。 ・聞こえなくても、口を見て読みとれる場合もあるので、はっきりと口を動かして表情豊かに話す。 14ページ サポートの例 @ コミュニケーション方法は、手話、身振りや手振り、口話、筆談等、個々人によって違いますので、 本人の受け答えの様子を見ながら、複数の方法を用いたコミュニケーションをとってみましょう。 A 手話通訳が必要なときは、手話通訳者を依頼することが望ましいです。 B 手話が出来ない人も多くいますので、対面で口をきちんと開け、文章の意味のまとまりで区切って伝えましょう。 C 筆談にいつでも応じられるように、ホワイトボードやメモ用紙、筆記用具を準備しておくと良いでしょう。携帯電話やスマートフォン等、また、何もない時は手のひらに指で字を書いて伝えることもできます。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  聴覚に障害があるということは、音による情報のやりとりが難しいということです。災害時の初期や緊急時は、情報の多くが「音声」によって伝達されるため、聴覚に障害のある人は、必要な情報の入手が困難になります。  補聴器を付けていても、十分に聞き取れていない人がいます。また、補聴器を付けていても周囲が騒がしかったり、同時に話されると聞き取りが困難です。  電話を本人の代わりに受けるとき等は筆記して渡すようにしましょう。筆記には文字だけでなく、絵や図を使うとより分かりやすく伝えることができます。また、身振りや手振りを用いる方法もあります。本人の希望する方法で行いましょう。  一斉放送等、音声での情報は伝わりにくいです。伝達事項や各種の情報は、その都度筆記で伝えるなど、文字や視覚情報で伝えることが必要です。 15ページ ●言語障害のある人をサポートするとき 大切なこと「その人にあったコミュニケーション方法を」 言語障害の人には、さまざまな人がいますが、大きく分けると2通りの人がいます。 ●「聞くこと(言葉を聞いて理解すること)」「話すこと(読んで理解すること)」「読むこと」「書くこと」の言語機能に何らかの障害がある人。(言語機能の障害:失語症など) ● 言語機能には問題はないが、話すための発語器官に麻痺等があり、言葉が不明瞭な人、声を出すための声帯に異常があるなどのために声が出ない、出しにくい人。(音声機能の障害:構音障害、音声障害など) 【主な障害特性】 言語機能の障害がある人 ・聞くことの障害 音は聞こえるが「ことば」の理解に障害があり、話の内容が分からない単語や簡単な文なら分かる人でも、早口や長い話になると分からなくなる。 ・話すことの障害 伝えたいことをうまく言葉や文章にできない発語がぎこちない、いいよどみが多い、誤った言葉で話したりする。 音声機能の障害がある人 ・「話すこと」に障害があるが、言葉を思い浮かべること、人の話を理解すること、読み書きに問題はない。 【避難所で困ること】 ・災害の状況についての一斉放送等、音声のみの情報は伝わりにくく適切な行動が取れない。 ・体調や家族との連絡等、必要な情報を本人から発信することが難しい。 【避難所で配慮すべき点】 ・ゆっくりと、短く、分かりやすい言葉で話しかける。 ・話し言葉に表情や身振り、手振りを添える。 ・絵・文字(漢字)を書いて示す。 16ページ サポートの例 言語機能の障害がある人 @ 表情が分かるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、分かりやすく話しかけましょう。 A 一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別の言葉に言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすくなります。 ホワイトボードやメモ用紙、筆記用具を準備しておくとよいでしょう。 B「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすくなります。 C 話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなります。 音声機能の障害がある人 @ しっかりと話を聞きましょう。 A 携帯用会話補助装置、簡易筆談器、文字盤などを使ってコミュニケーションをとることも考慮しましょう。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  一斉放送、音声のみでの情報は伝わらないことがあります。また、日付や時間、金額なども聞き間違えることが多くあります。伝達事項や情報は分かりやすい言葉で話す、絵・文字(漢字)・数字等を書いて伝えるなどの工夫が必要です。  体調のすぐれない時、家族に電話したい時など、自分からは上手く伝えられないことが多くあります。ゆっくりと時間をかけて本人の伝えたいことを引き出すことに加え、表情や身振り、手振りなど言葉以外の情報についても読み取っていく必要があります。電話の代行が必要な場合もあります。 「聞くこと(言葉を聞いて理解すること)に障害のある人」  話し言葉に表情・身ぶりを添えたり、絵・文字(漢字)を書いて示すことも理解の助けになります。 「話すことに障害のある人」  言いたい言葉が出ない、思ったことと違った言葉を言うことがあります。ゆっくり待つことが大事ですが、どうしても言葉で言うことが難しい人には、「はい」「いいえ」で答えられるような質問をする等の工夫が必要です。 17ページ ●肢体不自由の人をサポートするとき 大切なこと「本人の希望を聞く」 肢体不自由とは、手や足などの体の一部、または全部に障害があることを言います。 症状や原因もいろいろあり、「生まれたときから」「事故で」「病気の後遺症で」な どさまざまです。 【主な障害特性】 ・移動、日常生活動作(移動・食事・更衣・排せつ・入浴など)に困難がある。 【肢体不自由の人への配慮】 ・杖を利用している人は、床が濡れていると、転倒することがあります。 ・体温調整機能が低下している人がいるので、室温に注意しましょう。 ・介護者の存在を確認するとともに、本人の状況を把握して周囲の人のサポートを求めましょう。 【避難所で困ること】 ・障害の程度により、支援者なしでは避難が困難な場合がある。 ・災害発生時の過度の緊張により普段行える動作や歩行や移動が困難になることがある。 ・普段は徒歩や車いすで移動している人でも道路に障害物が倒れたり、路面が悪くなったりして移動ができない場合がある。 【避難所で配慮すべき点】 ・同じ障害でも、行動や動作の仕方は様々であるので、何ができて何ができないか、本人に確認する。 ・避難所のバリアフリー化が必要となる。 ・移動を中心とした支援、状況に応じて移動するための用具の確保が必要となる。 ・日常生活の介助等が必要となる。 18ページ サポートの例 @ 杖や車いすを使っている人がいることを意識して、十分なスペースの確保が大切です。通路にあたる場所には、通行の邪魔になるようなものを置かないようにしましょう。 A 困っている様子があれば、声をかけ、本人の意思を確認してから手助けをします。ゆっくりとした動作しかとれない人もいますので、大変そうだからと先回りせず、じっと見守ることも大切です。 B 車いすを使用している人に話しかけるときは、腰をかがめて同じ目線で話すように心がけましょう。 C 介助者がついている場合でも、意思を確認する場合は、必ず本人とコミュニケーションを取るようにしてください。 D 靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮も大切です。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  肢体不自由の人は、災害時には普段より移動全般が困難になります。危険を避けるためにも本人に確認しながら、希望に沿った支援をしましょう。  災害時には車いすが使えないこと、さらには身動きがとれなくなってしまっていることも想定されます。担架が用意できない場合は、背負ったり、複数人で抱えて移動したり、毛布やシーツに乗せて移動する方法もあります。  避難先に車いすや杖の利用者、または移動に支援が必要な人がいる場合には、車いす等が通れる通路を確保してください。  避難先のトイレが使用できない場合等が考えられますので、必要な支援に協力しましょう。本人がゆっくり歩くことができるように、段差やでこぼこの少ないところを選んで誘導します。歩行しづらそうな人に対しては、支援の方法を聞き、腕を持つなどの介助を行いましょう。  車いすの急な発進や停止、方向転換は事故のもとです。動作ごとに「車いすを押します」など必ず一声をかけてから介助をしましょう。また、階段を上り下りする場合には特にゆっくりと移動することが基本であり、車いすごと持ち上げる場合には3〜4人で運ぶのが安全です。 19ページ ●内部障害のある人をサポートするとき 大切なこと「ひとり、ひとりの状況の把握」 内部障害とは、心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、ぼう胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIV による免疫機能のいずれかの障害であり、それにより日常生活に支障があります。 【主な障害特性】 ・外見からは障害があることが分からない、分かってもらいにくい。 ・疲れやすく長時間の立位などが困難な場合がある。 ・常に医療的対応を必要とすることが多い。 【内部障害のある人への配慮】 ・内部障害のある人は外見からは障害があることが分からない、分かってもらいにくいので、事前に障害の内容などをヒアリングしておくことが必要です。 【避難所で困ること】 ・医療機関や関係機関からの必要な支援や処置が受けられるか不安がある。 ・治療上食事面で制限を受けている人は、一般的な「非常食」では対応できない場合が多く、避難生活が長期にわたる場合は体調に影響を及ぼす。 【避難所で配慮すべき点】 ・医療機器の使用状況や医療機関との連絡方法の確認、必要な医療機器の確保、治療や処置が受けられるよう配慮が必要である。 ・医療の必要性、食事管理等の理由により、避難所の区画を分けることを検討する必要がある。 ・治療に必要な薬剤の確保が必要となることがある。 ・定期的な受診(服薬)や処置を必要とする人もいる。例えば、じん臓機能障害の人は週に数回の人工透析が必要な場合があり、また、オストメイト(人工肛門、人工膀胱を造設した人の総称)は、適時ストーマ装具(蓄便、蓄尿のための容器)を洗浄、交換する必要があり、災害時にはオストメイト対応のトイレが必要となる。 20ページ サポートの例 @ 本人(家族)に、現在の健康状態を聞き、配慮すべきことを聴き取りましょう。また、ヘルプカード等、非常時の緊急カード類(医療情報や支援方法等が書かれている物)の有無の確認をしましょう。 A かかりつけ医師や医療機関への連絡の必要性、必要な医薬品、補装具等の確認をしましょう。 B 避難先の環境、食事やトイレ確保等、一般の避難者とは異なる配慮が必要な方もいるので、個別の対応が必要であることを前提に支援しましょう。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  内部障害は、外見からは障害があることが分からない、分かってもらいにくいので、人工透析等の治療行為、ペースメーカー等の医療器具の使用、人工肛門・人工膀胱を造設した人のストーマ装具、適切な食事や投薬など、非常時・災害時には、個々の障害による対応が必要とされます。  呼吸器機能障害のある人は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらいましょう。  免疫力・体力の低下、ストーマ装具等の交換等が必要な方のための衛生等、環境に配慮しましょう。また、ペースメーカーなどを使用する人の近くで携帯電話など電波の発生する器具を使用しないで下さい。  食事(飲み物)は非常食では対応できない場合があります。人工透析患者が果物や100%果汁のジュースなどの生ものを摂取すると危険な場合があります。 21ページ ●知的障害のある人をサポートするとき 大切なこと「本人のペースに合わせて、分かりやすく」 知的障害のある人とは、知的機能の障害(知能を中心とした発達の遅れ)が18 歳前後までにあらわれ、日常生活において何らかの援助を必要としている人のことを言います。 知的障害といっても、すべての能力が劣っているというわけではありません。その人によっての特性が一人ひとり異なります。 【主な障害特性】 ・周囲の人からの状況説明を理解できない場合がある。 ・周囲の人に自分のこと(氏名、住所、連絡先)を説明できない場合がある。 ・異常事態により情緒不安定やパニック等が起こることがある。 ・状況、環境の変化に柔軟に対応することが苦手で、苦手な事態に遭遇すると体調を崩しやすくなる場合がある。 ・他者との交流が苦手な場合がある。 ・具体的なことに比べて、抽象的なことを理解するのが苦手な場合がある。 ・読み書きや言葉の理解、計算が苦手な場合がある。 ・作業手順を覚えることや課題の処理に時間がかかる場合がある。 ・一度に複数の指示を出されると、指示が抜けてしまう場合がある。 ・空間的な理解や判断が苦手な場合がある。 【知的障害のある人への配慮】 ・その人によっての特性が一人ひとり異なるため、個別に一人ひとりの特性を理解しながら、情報の伝え方を工夫する必要があります。 22ページ 【避難所で困ること】 ・災害発生時に周囲に適切な支援者がいない場合、状況把握が困難な場合や支援が必要な  ことを意思表示することが困難な場合がある。 ・多動的傾向のある人は、異常事態により、いつも以上に多動的となる場合がある。 ・家族と連絡がとれず、不安が増大してしまい、不安定となる場合がある。 ・パニック症状がでることがあり、集団生活が困難となる場合がある。 【避難所で配慮すべき点】 ・多動性や徘徊的傾向のある知的障害のある人には、危険回避のため、その行動に合わせた付き添いや見守りが必要。 ・仕切りなしの一体的な避難所ではなく、各家庭あるいはグループホームなどの生活単位ごとに仕切られた空間の確保が望まれる。 ・服薬の有無の確認が必要である。 サポートの例 @ 言葉だけでなく、絵や写真など、実物のイメージがわかるものを見せて伝えるようにしましょう。 A 話しかけるときは、ゆっくりと、短く具体的に話しましょう。 B 答えやすいような聞き方をしましょう。   例:「どうする?」→「やりたい?、やりたくない?」 C 子ども扱いせず、実際の年齢に応じた接し方を心がけましょう。 D 付き添いの人がいる場合でも、必ず本人の意思を確認するようにしましょう。 E 話し合いのときには、他の人の意見をわかりやすい言葉に直して伝えたり、その人が発言しやすいような配慮を行いましょう。 23ページ もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  繰り返しになりますが、知的障害のある人は、知能の発達が遅れているために、生活をするうえでさまざまな不自由さが生じます。言葉を上手に使うことが不得意だったり、物事の理解が比較的ゆっくりしています。  複雑な会話や抽象的なことを理解するのが苦手なので、ゆっくりと穏やかに、短く具体的に説明するなどの配慮が必要です。また必要に応じて、絵や写真、文字等を用いると、正確に情報を伝える手助けとなります。  自分から要求を伝えられない人もいるので、実物を見せて選んでもらうことも有効です。 24ページ ●発達障害のある人をサポートするとき 大切なこと「ビジュアル、シンプル、クリアーに穏やかに接する」 発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、その他これに類する脳機能の障害であって、通常低年齢において症状が発現するものです。 【主な障害特性】 ・突発的な災害などの危険な状況が分からず、臨機応変に対応することが困難。 ・同時にたくさんの情報処理が苦手、自分にとって必要な情報を選択することや物事の優先順位決定が苦手なため、適切な行動が取りにくい。 ・外見上は健常者と区別がつかないため、適切な支援を受けられないことがある。 ・いつもと違う状況や環境で不安になると、調子を崩しやすい。 ・人と上手に関わることが苦手で、集団行動がとりにくい場合がある。 ・感覚の過敏さや鈍さがあり、大きな声や子どもの泣き声におびえたり、急に触られると過剰に反応したりする。 ・反対に、痛みに鈍くケガや病気に気づかない場合もある。 【発達障害のある人への配慮】 ・一斉に伝えるだけではなく、個別に、ゆっくり、具体的に声かけをしましょう。 ・否定的な言葉は使わず、肯定的な柔らかい言葉で伝えましょう。(×「〜はダメ!」 ○「〜しましょう。」) ・自分から要求を伝えられない人もいるので、実物を見せて選んでもらうことも有効です。 ・生活のスケジュールをなるべく普段に準じて、本人が見て分かりやすく提示しましょう。 ・パーテーションや敷物などで本人の居場所を分かりやすく設定してください。 ・順番などを待つことが苦手で、物資の配布の列に並べない場合もあります。また、子どもを一人にできないので、保護者も取りに行けないことがあるため、配慮が必要です。 ・「こだわり」が強い場合が多いことから、洋式トイレしか使えない、食べ物も特定のものしか食べられない等、その言動を周りに「わがまま」と誤解されやすい面があります。  他にも、危険を予測することや避難の必要性を理解することが難しい等、災害時においてはできるだけ先が見通せるような情報を提供するなどの適切な支援を必要とします。 25ページ ・急に体に触られたり、手を引かれることを嫌う人もいます。こちらからではなく相手から腕や肩をつかんでもらうことも有効です。 ・大きな音や子どもの泣き声が苦手な人もいます。静かなところに移動して様子を見たり、刺激を遮断することも有効です。(毛布をかぶる・音楽を聴くなど) ・ケガや痛みを伝えられない人もいます。また痛みに鈍い人もいるので、よく観察するとともに、視覚的に分かりやすいように本人の身体を指しながら確認したり、ばんそうこうを渡してみる方法があります。 ・何らかの理由でパニックになったときは、静かな部屋に移動し落ち着くまで見守ることも有効な場合があります。 ・発達障害の中でも、自閉症の人は、コミュニケーションや対人関係、生活をするうえで様々なことにおいて困難さがあります。 【避難所で困ること】 ・災害発生時に周囲に適切な支援者がいない場合、状況把握が困難な場合や支援が必要なことを意思表示することが困難な場合がある。 ・本人や家族の意思表示がない限り、周囲に気づかれにくい状況にある。災害時の混乱した状況の中ではこのような傾向が強まる。 ・ 環境の変化に適応できず、情緒不安定となったり、普段できていたことができなくなることがある。また、不安や抵抗を言動で強く示す場合がある。 ・パニック症状がでることがあり、集団行動が困難となる場合がある。 ・大きな音や人が大勢いて騒がしい場所が苦手で、その場にいられなくなることがある。 26ページ 【避難所で配慮すべき点】 ・専門的な知識を持つカウンセラー等の配置、または巡回による支援が必要である。 ・大部屋ではなく他の人たちから離れた避難場所の提供、比較的規模の小さい避難所への移動が望まれる。 ・避難所内での情報提供に際しては、個別にその人に合う伝達方法を工夫する。 サポートの例 @ 声かけで分からない時や、様々なことを説明する際は、言葉だけではなく、絵や写真、文字(文章)、実物、ジェスチャーなどを使ってわかりやすく伝えましょう。 A 話しかけるときは、ゆっくり穏やかに、短く具体的に話してみましょう。必要に応じて、その人がわかりやすい言葉に言い換えてみてもよいでしょう。 例:「もうちょっと」→「あと5 分」、 「あそこ」→「黄色い柱のところ」 27ページ もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  情報は一度にたくさん伝えないで、整理して一つずつ伝えるようにしましょう。  メモや文書で伝えるのも有効です。その場合は強調する部分に色を付けるなどして、わかりやすくしましょう。  気持ちが上手く伝えられない、言葉にできなくて困っている場合には、相手の状況や気持ちを推察して、こちらから気持ちを確認しましょう。また、質問の内容は「はい」「いいえ」で答えられるものにしましょう。  何に困っているのか、簡潔に尋ねましょう。この時、複雑な問いかけや強い口調で接すると余計にうまく答えられなくなってしまうので、優しく穏やかな口調で接するよう配慮しましょう。  ストレスの表れとして確認行為が頻繁になったり、一つのことにこだわって思考が堂々巡りしてしまう場合があります。安心して話ができるよう、ゆっくり、優しい口調で声をかけリラックスした雰囲気を作りましょう。  感覚が過敏で不快と感じる音を聞き流せない人もいます。ざわざわした場所で一斉に伝えられると、正しく伝わらない場合があるので、場所を変えたり個別に伝えるなどの配慮をしましょう。  何時も本人を尊重するように支援しましょう。 28ページ ●精神障害のある人をサポートするとき 大切なこと「不安をやわらげる」 精神障害とは、統合失調症、気分障害、アルコール依存症などさまざまな精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさが生じるものです。 【主な障害特性】 ・精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる。 ・精神疾患の中には、長期にわたり、日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある。 ・精神疾患により、「ひきこもり」が長期化することがある。 ・代表的な精神疾患として、統合失調症や気分障害等がある。 統合失調症の特性 ・目の前の出来事に考えがまとまらない。 ・危険であると分かっているのに、その場を離れられなかったり、考えていることに言動が伴わなかったりすることがある。 ・ 状況、環境の変化に柔軟に対応することが苦手で、苦手な事態に遭遇すると調子を崩しやすくなる場合がある。 ・服薬継続が欠かせず、薬の副作用のため動作が緩慢になる場合もある。 ・他者との交流が苦手な場合がある。 ・幻聴や幻覚、妄想などの症状が生じることがある。 気分障害の場合 ・気分の波が主な症状としてあらわれる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ。 ・うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる。 ・躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。 29ページ 【避難所で困ること】 ・災害発生時に周囲に適切な支援者がいない場合、状況把握が困難となる場合がある。 ・同様に支援が必要なことを意思表示することが困難な場合がある。 ・避難所での生活になじめず、安定や安心を得ることが困難となる場合があり、この結果、病状が悪化する可能性がある。 ・ 服薬している薬が飲めなくなる、かかりつけの病院に受診できなくなるなどの医療に対する不安。 【避難所で配慮すべき点】 ・支援を必要としているが言い出せない人を見つけ、支援するための専門スタッフの配置。 ・居場所の確保(ついたてや間仕切りの利用、人の少ない場所の確保。) ・緊急時の医療機関との連絡先、連絡方法の確認、薬の確保。 30ページ サポートの例 @ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心がけましょう。 A一度に多くの情報が入ると混乱するため、伝える情報を紙に書くなどして整理し、ゆっくり、具体的に伝えましょう。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  支援するときは、自然体で冷静な態度で対応しましょう。周囲の心の動揺は思った以上に伝わります。また、精神障害者であると分かった途端に態度を変えてしまうことは良くありません。  大きな声や叱咤激励のような指示は、しかられているように感じ、不安にさせる可能性があります。「大丈夫ですか?」など優しく声をかけてから、状況を具体的にわかりやすく、ゆっくり簡潔に説明しましょう。状況を知ることで不安がやわらぎます。  話をする場合は、一度に多くの内容を盛り込まず、ひとつのことを簡潔に伝えるようにしましょう。言葉だけでなく文字も利用しましょう。  急激な環境の変化に適応できず、感情が高ぶりイライラしたり、状況に合わせた行動ができない人もいるので、ゆっくり話を聞きましょう。  強い不安や症状悪化等がみられる場合は、速やかに主治医に連絡し指示を受けましょう。もし、連絡がとれない場合は、最寄りの医療機関へ相談しましょう。 31ページ ●高次脳機能障害のある人をサポートするとき 大切なこと「ゆっくり、はっきり、具体的に」 高次脳機能障害とは、交通事故や頭部のけが、脳卒中等で脳が損傷を受けたため、その損傷部位に応じて、言語や記憶、思考、空間をとらえる能力等の脳機能に障害が起きた状態を言います。症状の現れ方には個人差が大きく、一見しただけではわかりにくいため、本人が気づきにくいこともあり、周囲の理解を得るのが難しいという特徴があります。 【主な障害特性】 ・文字や表示、話の意味を十分に理解するのが難しいことがある。 ・必要な情報を見落としたり、忘れてしまうことがある。 ・自分の感情や行動を調整することが難しくなることがある。 【避難所で困ること】 ・言いたいことを上手くまとめて話せなかったり、言葉が出にくい人もいる。 ・複数の指示を一度に言われたり、複数の指示者から言われたりすると混乱する。 ・道、建物の中や混雑している場所では迷うことがあり、人や物にぶつかることがある。 【避難所で配慮すべき点】 ・自分でメモを取ってもらい、双方で確認する。 ・短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩を取るなどする。 ・ひとつずつ順番にやる。 ・感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る。 ・通路に物を置かない等、安全に移動できるようにする。 サポートの例 @ ポイントをしぼって、ゆっくり、はっきり、具体的に話をしてください。 A 絵や図、写真等を添えて話をすると理解しやすくなります。大切な説明や予定は、メモに書いて渡してください。 B 人や物にぶつかることがあるので、目的地までの誘導をしましょう。 C 自分の感情や行動を調整することが難しくなることがあるので、誘導中に興奮しているときは、場を変えたり、話題を変えたりしましょう。 32ページ ●難病患者の人をサポートするとき 大切なこと「本人の状況確認」 難病には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クローン病、全身性エリテマトーデス等多くの種類があります。病状や障害の程度は、それぞれの病気で運動障害、消化機能障害、免疫機能低下などさまざまです。難治性であったり、経過が慢性にわたる疾患が含まれます。 外見からは病気であることが分からない人、症状が安定しない人、常時医療的ケアが必要な人、医療機器を日常的に利用している人もいます。 【主な障害特性】 ※難病は種類が大変多く、すべてに共通した対応は困難であるが、災害時に困難が予想される人工呼吸器を使用している(特に筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症等)難病患者について記載している。(他の疾患については、各障害種別の項目も参考にして下さい。) ・ 多くの患者は、呼吸予備能力が極めて乏しく、肺への送気が途絶えると短時間の内に死亡してしまうため、適切な人工呼吸管理が必要である。 【避難所で困ること】 ・適切な人工呼吸管理が必要である。 【避難所で配慮すべき点】 ・確実に人工呼吸管理ができているかの確認が必要である。 ・医療機関と連携して、受け入れ可能な医療機関を確保する必要がある。 ・医療機関等による治療のための希少薬の確保等が必要である。 33ページ サポートの例 @ 本人(家族や付き添っている介護者等) に健康状態、配慮すべきことを聴いて対応しましょう。また、ヘルプカード等、非常時の緊急カード類の有無を確認しましょう。 A 本人の意思表示が難しい場合や家族等に相談できない場合は、医療機関へ連絡を取りましょう。 B 一見、健康そうであっても体調に波があり、体力の低下等もあるため、できる限りその人の状態やペースに合わせて移動するなどの対応をしましょう。 C 避難先の医療関係者等と連携を取りながら対応しましょう。 D 医療行為が必要な人のための衛生等、環境に配慮しましょう。 E 災害により、病状が悪化する場合があります。また、通院が困難になったり、医療機器が使えなくなると生命に関わることがあります。 F 本人が体調不良を訴えた場合には、すぐに医療機関に連絡しましょう。 もっとおしえて!〜ほかにもあります、こんなこと〜  難病患者には外見からは病気であることが分からない人、症状が安定しない人、常時医療的ケアが必要な人、医療機器を日常的に利用している人もいます。病気の種類によって必要なサポートが異なりますので、本人や家族、付き添っている介護者等の要望に沿いながら対応しましょう。 34ページ 参考情報 災害情報の入手に役立つツール 【防災情報北九州 北九州市の防災専用ホームページ】  気象情報や避難勧告等の防災情報のほか、防災啓発や防災マップの情報など、防災に関する各種情報を一元化し、ホームページに掲載しています。 ※防災指令発令時(災害発生時)等には、市ホームページのトップ画面に専用の項目が追加されるとともに、「防災情報北九州」には様々な情報が掲載されます。 ※多くの情報配信サービスには、文字数制限があるため、詳細については「防災情報北九州」で確認する必要があります。 ・防災情報北九州 URL http://kitakyushu.bosai.info/pinpoint/index.html 【防災ガイドブック】  災害時の心得や土砂災害危険箇所等を記載した、区毎に作成された防災ガイドブックです。平成27年6月に全世帯へ配布しています。 ・「北九州市防災ガイドブック」URL(北九州市ホームページ) http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kiki-kanri/13801096.html 【登録制の防災メール】  気象情報や避難勧告等の防災情報が配信されるサービスです。  事前に登録することで、希望する情報のメールが送信されてくるので、各種防災情報を迅速に収集でき初動対応に有効な手段です。 ・北九州市「もらって安心災害情報配信サービス」URL(北九州市ホームページ) http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shoubou/file_0035.html ・福岡県「防災メール・まもるくん」URL(福岡県ホームページ) http://www.bousai.pref.fukuoka.jp/mamorukun/ 【ツイッター】  避難勧告や気象情報のほか、防災訓練や防災啓発に関する様々な情報を提供します。 ・北九州市防災・危機管理情報 アカウント  https://twitter.com/kitakyushu_kiki 35ページ 【防災スピーカー】  津波情報を迅速かつ効果的にお知らせするため、門司区及び小倉南区の沿岸部、小倉北区の藍島及び馬島に、同報系防災行政無線の防災スピーカーを設置しています。  放送する緊急情報は、津波警報や大雨等の特別警報の他、避難に関する情報です。 ・「同報系防災行政無線について」URL(北九州市ホームページ) http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kiki-kanri/13801077.html 【視覚・聴覚障害者に対する避難情報の提供】  携帯電話を保有していないため、緊急速報メールや登録制防災メールにより情報を入手できない視覚・聴覚障害者の方へ、避難情報を提供するサービスを開始しています。 ・「視覚・聴覚障害者の方に対する避難情報の提供について」URL(北九州市ホームページ) http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kiki-kanri/13801093.html 【緊急速報メール (エリアメール)】  気象庁が配信する緊急地震速報や津波警報、特別警報、国・地方公共団体が配信する災害・避難情報を、回線混雑の影響を受けずに受信することができます。  対象エリアにある全ての携帯対応端末に強制的に情報を送信します。  なお、流れる音は2種類(ブザー音とチャイム音)です。  ただし、機種によっては受信できないものもあります。 地震発生→大きな地震を検知し、震度4以上の揺れが推定される地域に対して配信(気象庁からの自動送信)→緊急地震速報(ブザー音)→各携帯会社がメッセージ配信処理し、メッセージを特定エリアに一斉配信※対象エリア以外には配信されません。 津波発生→大きな地震を検知し、震度4以上の揺れが推定される地域に対して配信(気象庁からの自動送信)→津波警報(チャイム音)→各携帯会社がメッセージ配信処理し、メッセージを特定エリアに一斉配信※対象エリア以外には配信されません。 災害発生→避難勧告・避難指示など災害に関係する緊急性の高い情報を作成・配信(国・地方公共団体)→災害・避難情報(チャイム音)→各携帯会社がメッセージ配信処理し、メッセージを特定エリアに一斉配信※対象エリア以外には配信されません。 36ページ 【災害用伝言ダイヤル】  震度6弱以上の地震など大きな災害で、被災地へ電話がつながりにくい状況になった場合に利用できる伝言板です。 【伝言の再生】 1. @F@に電話をかける 2. 再生の場合Aを押す 3. 被災地の固定電話の番号を押す 4. @#を押す 5. 再生がスタート 【伝言の登録】 1.@F@に電話をかける 2. 録音の場合@を押す 3. 被災地の固定電話の番号を押す 4. @#を押す 5. 伝言を録音する(30 秒) 6.H#を押す 37ページ 防災情報の入手に役立つツール 気象情報や河川情報などを日頃からチェックできる手段(ツール)の紹介です。 役立つホームページ 【気象庁ホームページ】 ・警報・注意報、レーダー、ナウキャスト、雨量、台風、気象情報、土砂災害警戒判定メッシュ情報などの気象情報。 http://www.jma.go.jp/jma/index.html 【福岡県 河川防災情報】 ・雨量情報、水位情報など http://www.kasen.pref.fukuoka.lg.jp/bousai/main.html 【高解像度降水ナウキャスト】 ・短時間的予測情報 http://www.jma.go.jp/jp/highresorad/ 【土砂災害警戒区域図】 ・福岡県砂防課ホームページ http://www2.sabomap.jp/fukuoka/ 役立つスマホアプリ 【Yahoo! 防災速報】 ・気象情報、地震情報、避難情報などをプッシュ通知 https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.yahoo.android.emg 38ページ 〜よりよい支援のために〜支援者自身のこころのケア  どのようなかたちであれ災害に関与した人はすべて何らかの影響を受けます。被災地の現場は混乱しており、ストレスの高い状態が続くため、支援者も心身の変調をきたしがちです。   突然の大きな災害や事故に対するストレス反応は、「異常な出来事に対する正常な反応」であり、災害や事故の現場でストレスを受けない人はいません。自分だけは大丈夫と過信してはいけません。  支援者は、少しでも役に立ちたいとの思いから、普段以上に気負ったり、無理を重ねたりすることがあり、気づかないうちにストレスや疲れがたまっていることが多くあります。  また、支援者は被災者を支援することで自らも傷つくことがあります(二次受傷)。  よりよい支援を行うために、まずは支援者自身の安全と健康管理に注意し、自らの状況を整えましょう。 【ストレス症状チェック表】  このチェック表には評価基準や診断基準は設定されていません。  自分自身の状態を把握するための参考としてご活用ください。 □災害現場の光景が突然目に浮かぶ。(被災の体験談が頭から離れない。自分も被災したような気持ちになってしまう。) □食欲不振 □睡眠障害 □脱力感、強い疲労感を感じる。 □強い無気力感や悔しさを感じる。 □強い罪悪感や自責感を持つ。 □気分、感情がすぐれない。 □理由もなく気分が沈み、涙が出る。 □憂うつ、気が滅入る。 □落ち込みやすい、悲観的になる。 □飲酒量が増加 □興奮気味、常に緊張している。 □胃腸の調子が悪い。 □集中力がなくなる。 □悪夢をよく見る。 □怒りっぽくなる。 39ページ 【支援者のストレス対処法】 ●ストレスの兆候が現れたら、恥じることなく、自分の気持ちやストレスに感じていることを素直に認めましょう。 ●現場でどんな活動をしたか、事実関係を簡単に報告してから任務を解きましょう。 ●自分の行動をポジティブに評価しましょう。 ●自分の体験・目撃した災害状況や、それに対する自分の気持ちを仲間と話し合ってみましょう。 ●自分だけで何とかしようと気負わず、自分の限界を知り、仲間と協力し合い、お互いに声をかけながら活動することが大切です。 ●時々仕事から離れ、体を伸ばしたり、深呼吸をしてみましょう。 ●家族や友人と過ごす時間を大切にしましょう。 ●休めるときは十分に休みましょう。 【注意が必要なサイン】 次のようなサインがあらわれたら専門家に相談したり、心身を休ませましょう。 ●ストレス症状が強すぎると感じる。 ●お酒の量が増えたり、飲まずにはいられないと感じる。 ●災害や救難に関連した光景が、突然、繰り返しよみがえり不快となる。 ●集中力や記憶力が低下したと感じたり、簡単なミスが増えてきた。 40ページ 参考文献 ・「障害者と災害−障害者が提言する、地域における協働防災のすすめ−」(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会) ・「スタッフのてびき」(公益財団法人日本レクリエーション協会) ・「災害時障害者サポートマニュアル」(八王子市福祉部障害者福祉課) ・「北九州市地域防災計画」、「北九州市防災ガイドブック」(北九州市危機管理室) ・「災害・事故時 こころのケアの手引き」(北九州市保健福祉局精神保健福祉センター) 災害時障害者サポートマニュアル 発行月:平成28年3月(令和元年12月20日第2刷) 発行:北九州市保健福祉局障害福祉部障害福祉企画課 住所:〒803-8501北九州市小倉北区城内1番1号 電話:093-582-2453 FAX:093-582-2425 (北九州市印刷物登録番号 第1910111B号)