【表紙】 公の施設に係る受益と負担のあり方 平成29年12月 北九州市 【目次】 第1章 公の施設を取り巻く現状と課題 P.1 1 公共施設の状況 2 本市の将来推計人口 3 本市の財政状況 4 北九州市公共施設マネジメント実行計画 5 公の施設の使用料等の課題 第2章 「受益と負担」による使用料等の設定に関する基本方針 P.7 第3章 受益者負担による使用料等の設定基準 P.8 1 使用料等の設定の基本的な考え方 2 受益者に負担を求める費用(原価)の考え方 3 基準を適用する「公の施設」 4 受益者負担割合の設定 5 公の施設の標準的受益者負担割合 6 基準を用いた具体的な使用料等の算定方法 7 使用料等の設定や改定に当たっての留意点 第4章 使用料等の減免制度について P.16 1 基本的な考え方 2 団体利用に対する減免 3 個人利用に対する減免 第5章 継続した見直しの取組み P.18 1 効果的かつ効率的な施設運営 2 本基準の適用対象外施設 3 継続した見直しの取組み <P.1> 第1章 公の施設を取り巻く現状と課題 1 公共施設の状況 (1)公共施設の保有状況 本市は、高度経済成長期の昭和38年(1963年)、五市対等合併によって誕生しました。当時は、全国的に積極的な社会資本整備が行われていた時期で、本市においても、当時の行政課題に対応して、旧五市の均衡を図りながら、公共施設の整備が進められました。 その結果、本市では、市営住宅、小中学校、市民センター、図書館、スポーツ施設など、様々な公共施設が市域の隅々まで整備されています。 平成22年度末時点での公共施設の保有量は、人口1人当たり約5.0uと政令市の中で最大であり、政令市平均値の約1.5倍となっています。 (2)公共施設の築年別の状況 本市が保有する公共施設の多くは、昭和40年代から50年代(1970年代から1980年代半ば)にかけて整備されており、建築後30年を経過した施設が半数を超えています。こうした施設の一部では、既に老朽化が進んでおり、近い将来、大規模改修や更新(建替え)が必要になってくることが予想されます。 現在の公共施設を全て保有し続けた場合に必要となる大規模改修や更新に係る費用は、「今後40年間で、約1兆2,040億円、年平均に換算すると毎年約301億円」という結果になります。(総務省モデルをベースに試算) この試算額は、本市が実際に公共施設の大規模改修や更新に支出している経費(年額約180億円)と大きくかい離しており、財源の確保や施設保有量の縮減など、将来に向けた取組みが必要となります。 <P.2> 2 本市の将来推計人口 本市の人口は、平成25年(2013年)3月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した推計によれば、平成52年(2040年)には784,162人まで減少する見込みとなっています。人口構造も大きく変化することが見込まれており、年少人口(0〜14歳)や生産年齢人口(15〜64歳)が減少し、老年人口(65歳以上)の割合は高くなる推計となっています。 <P.3> 3 本市の財政状況 【一般会計歳入の推移】 本市の一般会計歳入の総額は、年度によって変動はあるものの、横ばいの状況にあります。また、一般会計歳入に占める市税の割合は30%程度で推移しています。 【一般会計歳出の推移】 一方、一般会計歳出の傾向をみると、人件費、扶助費、公債費の合計である義務的経費が、毎年増加しています。 <P.4> 【福祉・医療費の推移】 扶助費に国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療の各特別会計への繰出金、負担金を加えた「福祉・医療費」は年々増加しています。 4 北九州市公共施設マネジメント実行計画 公共施設におけるこれらの課題を踏まえ、本市では市民の安全・安心を確保し、子どもや孫の世代が安心して暮らせる地域社会を築いていくため、真に必要な公共施設を安全に保有し続けることができる運営体制を確立することを目的に、公共施設マネジメントに取り組んでいます。 この取組みを具体化するために、平成28年2月に、「北九州市公共施設マネジメント実行計画」を策定しました。実行計画では、8つの基本方針を定めるとともに、40年後の施設量を約24.2%削減する施設分野別実行計画を定めました。実行計画の実現に向け、施設分野別の5ヵ年行動計画の策定や、モデルプロジェクトとして門司区で施設集約の検討に着手するなど、公共施設マネジメントの取組みを着実に進めています。 5 公の施設の使用料等の課題 公共施設マネジメントでは、将来的な財政負担の軽減に向けた取組みとして、総量抑制や、施設の長寿命化、施設の維持管理・運営費の削減などのほか、施設利用者に応分の負担を求めるといった視点も必要になります。 <P.5> 市民の福祉を増進する目的で設置されている「公の施設」の維持管理・運営費は、施設利用者が負担している「使用料等」と、施設を利用しない人も含めた市民全体で負担している「市税収入等」で賄われています。 本市の公の施設の多くでは、使用料等の収入に対して維持管理・運営費の支出が超過しており、80%以上は市税収入等により賄われています。 そこで、「公共施設マネジメント実行計画」では、「受益と負担のあり方の視点から、施設使用料等や減免制度を見直す」ことを基本方針として掲げています。 (1)公の施設の運営状況(平成25〜27年度決算平均額) 1 対象施設: 417施設※ 2 管理運営コスト:約139億円…支出+利用料金   (大規模改修などの投資的経費は含まない) 3 使用料・利用料金収入:約25億円(うち約12億円は利用料金収入) 4 減免額:約11億円 5 受益者負担割合(減免除):17.8%…(使用料+利用料金)÷管理運営コスト 6 受益者負担割合(減免含):25.4%…(使用料+利用料金+減免額)÷管理運営コスト  ※市営住宅、学校、特会施設等を除く (2)市民利用施設の使用料の見直しに関する市民アンケート結果 平成29年4月27日から5月23日にかけ、本市に居住する18歳以上の市民3,000人を対象にアンケート調査を実施しました。 <P.6> (回答数1,246人、回答率41.5%) その結果、次のような状況が伺えました。 ・ 施設利用者の受益と負担の視点から、使用料の見直しを検討する事について、82.6%の方が賛成意見(「見直すべき」「どちらかといえば見直すべき」の合計)となっています。 ・ 減免制度について、一定の政策目的に配慮しながらも、社会情勢の変化などに応じた見直しを行うことについて、85.3%の方が賛成意見(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)となっています。 <P.7> 第2章 「受益と負担」による使用料等の設定に関する基本方針 本市では、これまで公の施設の使用料等の決定や改定に当たり、類似施設との比較、近隣自治体との比較、民間事業者との均衡、物価変動などを考慮し設定してきました。 公の施設で公共サービスを提供する場合、施設の建設に要した費用だけでなく、日常の管理運営に必要な人件費、光熱水費、補修費などの管理運営コストが必要になります。施設の利用に当たっては、その対価として利用者から「使用料等」を徴収していますが、「使用料等」だけでは全ての管理運営コストを賄うことができないため、その差額は市民の税金などで負担しています。 このような状況から、「北九州市行財政改革大綱」(平成26年2月策定)では、行政サービスや受益と負担水準のあり方について、市全体として総合的な視点で検討を行うこととしました。 行財政改革大綱を受けて策定した「公共施設マネジメント実行計画」では、施設の公共関与の必要性の程度や収益性の程度なども勘案しながら、統一的な視点で見直しを行うこととしています。 今後、施設の老朽化が進み、維持補修も含めた管理運営コストの増加が想定される一方、引き続き厳しい財政運営が求められる中、真に必要な公共施設において、公共サービスを持続的に提供していくためには、当該公共サービスの管理運営コストを念頭に置いた上で、利用者に応分の負担を求めるという「受益と負担」の原則に基づき、使用料等を設定していく必要があると考えます。 こうしたことから、受益者負担の原則により、利用者と未利用者との負担の公平性・公正性を確保するため、統一的な基準を策定し見直しを行います。 <P.8> 第3章 受益者負担による使用料等の設定基準 1 使用料等の設定の基本的な考え方 「受益と負担のあり方」を踏まえた、公の施設の使用料等の設定に当たっては、受益者に負担を求める費用(原価)を明らかにし、施設の設置目的や行政サービスに応じて設定した「受益者負担割合」を乗じて行うことを基本とします。 2 受益者に負担を求める費用(原価)の考え方 施設に係る費用は、 1 取得及び建設に要する費用(イニシャルコスト) (施設の建設費(減価償却費)、用地費、高額備品購入費、その他投資的経費、公債償還に係る支払い利息など) 2 維持管理に要する費用(ランニングコスト) (人件費、光熱水費、修繕費、保守点検費、消耗品費、委託費など) の2つに分類することができます。 1 「取得及び建設に要する費用(イニシャルコスト)」のうち、施設建設費等は、減価償却費として原価に含めるべき費用です。しかし、公の施設は、「住民の福祉を増進する目的」をもって地方自治体が設置したものであり、市民全体の財産と  <P.9> して、誰もが利用することができるものです。 また、同様の見直しを行っている他都市においても、減価償却費などのイニシャルコストを原価に算入していない事例が多いことも勘案して、当面は、「1 取得及び建設に要する費用」や大規模改修など資本的支出に当たるものは公費で負担すべきものとします。 よって、今回の基準設定に当たっては、受益者負担の対象とする費用(=原価)は、「2 維持管理に要する費用」(ただし大規模改修などの投資的経費は含まない)とします。 3 基準を適用する「公の施設」 本市が保有する「公の施設」のうち、 ・無料での提供を前提とする ・本市で独自に使用料等を変更できない ・当初から受益と負担の視点で使用料の設定が行われている といった下記の施設は、「受益と負担のあり方」の視点で使用料等の見直しを行うことは適切ではないため、本基準の適用を除外することとします。 1 社会基盤施設 (道路、河川、無料公園など) 2 法令等により、全国で統一的な基準等があり、本市独自で使用料等の設定・変更ができない施設 (市営住宅、学校教育施設※、保育所、図書館、保健福祉施設の一部など) 3 独立採算が求められる特別会計・公営企業会計の施設 (市営バス、病院、上下水道、港湾施設など) 4 庁舎に準ずる施設 (文書館、消費生活センターなど) ※教育委員会において「学校の施設開放における受益と負担のあり方」について別途検討中 <P.10> 対象施設一覧 大分類  市民文化  中分類  地域コミュニティ  対象施設 市民センター、地域交流センター  中分類  市民活動拠点  対象施設 生涯学習施設、婦人会館、男女共同参画センター、勤労婦人センター、勤労青少年ホーム  中分類  文化(ホール・市民会館等)  対象施設 北九州芸術劇場、響ホール、市民会館、黒崎ひびしんホール、大手町練習場、旧百三十銀行ギャラリー、旧古河鉱業若松ビル 大分類  社会教育  中分類  美術館・博物館等  対象施設 美術館、文学館、松本清張記念館、自然史・歴史博物館、漫画ミュージアム、長崎街道木屋瀬宿記念館、小倉城庭園  中分類  青少年  対象施設 少年自然の家、足立青少年の家、玄海青年の家、畑キャンプセンター、キャンプ場、ユースステーション、夜宮青少年センター、こども文化会館、児童文化科学館  中分類  環境・産業学習  対象施設 水環境館、ほたる館、香月・黒川ほたる館、エコタウンセンター、響灘ビオトープ、環境ミュージアム、産業技術保存継承センター 大分類  スポーツ  中分類  スポーツ  対象施設 体育館・スポーツセンター、武道場、野球場、庭球場、陸上競技場、運動場・球技場、プール 大分類  保健福祉  中分類  保健福祉(高齢者福祉)  対象施設 新門司老人福祉センター、年長者研修大学校  中分類  保健福祉(スポーツ系)  対象施設 穴生ドーム、障害者スポーツセンター  中分類  保健福祉(福祉会館)  対象施設 福祉会館  中分類  保健福祉(火葬場)  対象施設 火葬場  中分類  保健福祉(障害者福祉会館)  対象施設 障害者福祉会館 大分類  子育て支援  中分類  子育て支援  対象施設 緑地保育センター、子育てふれあい交流プラザ、子どもの館  中分類  子育て支援(児童館)  対象施設 児童館 大分類  観光・産業  中分類  観光  対象施設 関門海峡ミュージアム、旧大阪商船、旧門司三井倶楽部、旧門司税関、門司港レトロ観光物産館、門司港レトロ展望室、旧九州鉄道本社、九州鉄道記念館西駐車場、門司麦酒煉瓦館、旧大連航路上屋、小倉城、門司港レトロ駐車場  中分類  産業関連(産業支援系)  対象施設 テレワークセンター、学術研究都市、起業家支援工場、折尾東部総合食料品小売センター、農家年長者創作活動施設  中分類  産業関連(レジャー系)  対象施設 脇田漁港フィッシャリーナ、釣り台付き遊歩道  中分類  産業関連(コンベンション等)  対象施設 国際会議場、国際展示場、商工貿易会館 大分類  その他  中分類  有料公園(レジャー系)  対象施設 到津の森公園、ひびき動物ワールド、志井ファミリープール  中分類  有料公園等  対象施設 白野江植物公園、山田緑地、平尾台自然の郷、響灘緑地、河内自転車貸出施設、総合農事センター  中分類  自転車駐車場  対象施設 自転車駐車場  中分類  霊園等  対象施設 霊園、納骨堂  中分類  交通安全センター  対象施設 交通安全センター <P.11> 4 受益者負担割合の設定 (1)性質別分類の考え方 公の施設には、地域コミュニティ施設、文化・スポーツ施設、子育て支援施設、各種福祉施設など多種多様な施設があり、設置背景や目的、提供しているサービス内容が異なることを踏まえ、施設の種類ごとに、公的関与の必要性や収益可能性の程度などを勘案しながら受益者負担のあり方を検討します。 1 公的関与の必要性 (分類T) (考え方)公的な関与の下、社会的弱者の擁護、安全・安心の確保、地域コミュニティの維持あるいは社会教育など、市民が社会生活を営むに当たり、必要な生活水準の維持に寄与することを目的として設置された施設 (分類U) (考え方)一定の公的な関与は必要であるものの、個人がそれぞれの価値観や趣味・嗜好等に応じて活用することができ、より快適かつ潤いのある日常生活やにぎわいの創出等に寄与することを目的として設置された施設 (分類V) (考え方)一定の公的な関与が必要な上記以外の施設 2 収益可能性 (分類A) (考え方)民間でも類似・同種のサービスが提供されている、あるいは既に相応の収益性があり、使用料等で運営することが期待できる施設 (分類B) (考え方)A及びCに該当しない施設 (分類C) (考え方)民間では類似・同種のサービスが提供されておらず、また収益性が著しく低く、使用料等で運営することが期待できない施設 <P.12> (2)性質別分類による受益者負担割合の設定   ※図表省略 <P.13> 5 公の施設の標準的受益者負担割合 ※ 前段の割合は減免分も含めた現在の受益者負担割合、後段の括弧内の割合は減免分を除いた受益者負担割合 ※ 保健福祉施設(スポーツ系)は、スポーツ施設の使用料等の金額を勘案して検討 AI(50%程度)   保健福祉施設(福祉会館) 74.1%(53.2%)  保健福祉施設(火葬場)  52.0% (52.0%)  自転車駐車場  53.8% (53.3%) AU(75%程度)  産業関連施設(コンベンション等) 90.2%(58.6%)  産業関連施設(レジャー系) 67.0%(63.9%)  有料公園(レジャー系) 82.8%(70.6%) AV(100%)  霊園等 98.7%(98.7%) BI(25%程度)  市民活動拠点施設 9.7%(6.7%)  美術館・博物館等 20.7% (17.0%) BU(50%程度)  スポーツ施設 34.1%(16.9%)  保健福祉施設(スポーツ系) 31.9%(13.3%)  産業関連施設(産業支援系) 30.2%(24.1%)  観光施設 35.1%(33.5%) BV(75%程度)(空白) C1-I(10%程度)  地域コミュニティ施設 11.3%(1.8%)  青少年施設 4.9%(3.5%)  環境・産業学習施設 2.8%(1.8%)  保健福祉施設(高齢者福祉) 16.7%(16.7%)  子育て支援施設 14.8%(14.1%) C2-I(0%)  保健福祉施設(障害者福祉会館) 0%(0%)  子育て支援施設(児童館) 0%(0%)  交通安全センター  0%(0%) CU(25%程度)  文化施設(ホール・市民会館等) 21.5%(10.7%)  有料公園等 14.6% (12.6%) CV(50%程度)(空白) <P.14> 6 基準を用いた具体的な使用料等の算定方法 使用料等は原則として、次の考え方により算定します。  使用料等 = 原価×受益者負担割合  (1)従前の使用料等を改定する場合     P13の標準的受益者負担割合を基準として使用料等の改定を行います。  ・算定単位:施設群(対象施設一覧[P10]の中分類)  ・算定基礎:施設群全体のコストカバー率  ・算定方法: 1)『公の施設の標準的受益者負担割合(P13)』で示した施設群の「受益者負担割合」を、現行の施設群全体のコストカバー率で除して値上率を算出します。 2) 1)で算出した値上げ率を、施設群のすべての施設の現行単価に一律に乗じて使用料等を算定します。   例    ●●●施設(施設中分類単位)の現状    ・コスト:10,000千円    ・使用料等収入: 4,000千円    ・減免額: 500千円    ・コストカバー率: 45%〔(使用料等収入+減免額)/コスト〕    ・受益者負担割合案: 50%    ・値上率の算出:50%(受益者負担割合案)÷45%(コストカバー率)=1.1    ・新料金:現行単価×1.1倍 ※上記の基本算定方法により難い場合であっても、施設中分類単位で必要な受益者負担割合を満たすことを目標に使用料等の改定を行うよう努めます。 (2)新規に使用料等を設定する場合    ○ 1人あたりの使用料等を設定する場合      ●使用料等=1人あたりの原価(原価÷年間利用者数)×受益者負担割合    ○ 1室あたりの使用料等を設定する場合      ●1室あたりの使用料等=1室あたり原価※×受益者負担割合        ※1室あたりの原価=1uあたりの単価(原価÷貸室全体面積÷年間開館時間)                  ×利用面積×利用時間 <P.15> 7 使用料等の設定や改定に当たっての留意点 (1)激変緩和措置 標準的負担割合に基づいて算定した使用料等が、従来よりも、大幅な値上げとなった場合、利用者負担の急激な増加が懸念されます。 その場合、使用料等の改定額を、従前の使用料等の1.5倍を上限として措置することができることとします。 ◆政令指定都市の状況 千葉 上限 1.5倍     横浜 上限 未設定     川崎 上限 1.5倍     相模原 上限 1.3倍     静岡 上限 1.5倍     浜松 上限 1.5倍     名古屋 上限 1.5倍     大阪  上限 1.5倍 (2)市場価格との調整 この基準により算定した使用料等が、民間が提供する同種・類似のサービスや、周辺自治体の同種・類似の施設の使用料等と比較して著しく高価となる場合は、市場価格との均衡を図るため、基準により算定した額の1/2を下まわらない範囲で使用料等を調整することができることとします。なお、その場合は、同時に今後のサービス提供のあり方や、施設経営の視点から管理運営コストの低減などについても再考することとします。 一方、民間が提供する同種のサービスと比較して、著しく安価である場合は、民業を圧迫することなどが懸念されるため、使用料等を調整することができることとします。 <P.16> 第4章 使用料等の減免制度について 1 基本的な考え方 本市では、一定の政策目的を実現するために使用料等に対する「減免制度」を設け、施設の利用目的や利用者の状況に応じて、年間に約11億円(平成25〜27年度決算額平均)の減額、免除を行っています。 減免制度は、一定の必要性があるものの、「受益者負担の原則」の視点からみると、例外的な運用でもあります。 社会経済情勢の変化に応じて、必要とされる政策が異なるように、減免制度についても、時々の社会経済情勢に合わせて、不断の見直しに取り組んでいく必要があります。 2 団体利用に対する減免 団体利用に対する減免には、大きく分けて(1)市の主催・共催・後援を受けた事業に対するもの、(2)市が認定した団体の施設利用の2種類があります。 市の主催・共催・後援を受けた事業に対する減免制度は、大規模イベントやコンベンションの誘致によるにぎわいの創出や、催事や競技の支援による文化・スポーツの振興など、効果的・効率的な政策目的の達成に資するものである一方で、  ・所管局ごとに主催・共催・後援の基準が異なる  ・施設ごとに主催・共催・後援を受けた事業に対する減免割合が異なる といった現状があります。 受益者負担の公平性・公正性を確保するためには、将来的に減免割合などの取扱いを統一していくことが望ましいと考えますが、効果的かつ効率的な政策実現に対する配慮も必要なことから、当面は、所管局ごとに異なる主催・共催・後援基準の統一化を行います。将来的には、減免割合の統一化や減免の有効性を確認する仕組みの検討を行うこととします。 市が認定した社会教育関係団体、学校教育関係団体、社会福祉団体など、施設の設置目的に沿った活動を行っている団体の施設利用に対する減免は、施設所管課において、当該認定団体の活動が、減免目的に合っているかどうか、定期的に確認を行い、必要に応じて見直しを行うこととします。 <P.17> 3 個人利用に対する減免 個人利用に対する減免には、利用者が(1)高齢者である場合、(2)障害者である場合、(3)子どもである場合の3種類があります。 このうち、65歳以上の市民には年長者施設利用証を配布し、市内の文化・観光施設やスポーツ施設等を無料、または割引料金で利用できる減免制度を導入しています。 この制度は、高齢者の健康の維持増進と積極的な社会参加を目的に実施していますが、本市の高齢化率が25%を超え、生産年齢人口(15〜64歳)の減少傾向が続く中で現状を継続した場合、世代間の負担の不均衡や、施設における公共サービスの提供に大きな影響が生じる可能性もあります。 今後も施設を安定的、持続的に運営し続けていくためには、年長者施設利用証により現在10割減免(無料)となっている施設では、少なくとも大人料金の3割の負担を求めていくこととします。 障害者手帳等の提示による減免については、障害のある方がスポーツやレクリエーション、芸術・文化・余暇活動に取り組むことのできる環境を整備するために行われています。この減免を通じて、障害のある方の経済的負担の軽減を図ることは、障害のある方が自分らしく豊かな日常生活を送ることができる地域社会の実現に資することから、従前どおりの取扱いを継続します。 また、子どもは、多くの施設で子ども料金を設定しています。また、子どもに対する減免は、教育活動の一環として施設を利用する場合や、夏休みの施設利用など期間を限定した減免のみであるため、従前どおりの取扱いを継続します。 <P.18> 第5章 継続した見直しの取組み 1 効果的かつ効率的な施設運営 公の施設には、午前(9時〜12時)、午後(12時〜17時)、夜間(17時〜21時)など、数時間単位で貸出時間が設定されているものがあります。これらの施設では、たとえば1時間の利用と3時間の利用で負担する使用料等が同額であることや、効率的な施設運営ができない可能性があるといった課題が見受けられます。 そのため、基準による使用料等の見直しに当たっては、受益と負担のあり方を踏まえるとともに施設の効率的な運営の視点からも、利用実態に即した貸出時間の設定などの見直しもあわせて行うこととします。 また、施設運営に当たっては、施設の魅力を向上させることや、施設の利用頻度を高めるために、回数券の割引率拡大や、回数券・定期券・共通入場券の導入を図ることなどにより、施設利用者数と使用料収入の確保及び増加を図ることとします。 2 本基準の適用対象外施設 本基準の適用対象外であっても、学校の施設開放など、受益と負担のあり方を踏まえて、公の施設の負担について見直すことができる施設については、適宜見直すこととします。 3 継続した見直しの取組み 管理運営コストには、社会経済情勢の変化や物価の変動、税制改正の動向などの変動要素があります。また、施設の管理運営コスト削減の取組みや、利用者数の推移など施設の運営状況によっても変動します。 そのため、大幅に管理運営コストが変動する場合を除き、概ね5年ごとに(指定管理者制度導入施設については、指定管理者の更新時期にあわせ)見直しを行うことを基本とします。