林芙美子文学賞
▲林芙美子(1903~51年)(写真はヨーロッパから帰国した昭和7年頃撮影)
文学界の新たな才能を募る
本市は、今年度から短編小説を対象とした新たな文学賞を創設しました。名称は優れた短編小説を多く残している地元ゆかりの作家・林芙美子にちなみ「林芙美子文学賞」としました。今回は、林芙美子文学賞の紹介と賞の名称になった林芙美子の魅力について特集します。
「自分史文学賞」から「林芙美子文学賞」へ
平成2年から24年間実施されてきた「北九州市自分史文学賞」は、本市にゆかりがあり、史伝を多く残している森鷗外にちなんで創設されました。今回創設する林芙美子文学賞は、自分史文学賞を継承・発展させたもので、原稿用紙50枚以内の短編作品を対象にしています。
林芙美子は、門司区小森江で生まれた説もあるなど本市とのゆかりが深い作家です。
「放浪記」や「浮雲」といった長編小説が有名ですが、「清貧の書」「晩菊」「骨」など高い評価を受ける多くの短編小説も残しています。このことにもちなみ、賞の名称に林芙美子の名を冠しました。「林芙美子文学賞」の特徴
林芙美子文学賞では、本市が文化振興の柱としている「芸術・文化の担い手の育成」を目指します。この賞を契機に、将来の文学界を担う新たな才能が世に出ることを期待しています。また、広く全国に作品を募ることで、文学活動が活発に行われてきた歴史があり、松本清張や火野葦平、杉田久女など多くの優れた文学者を輩出してきた本市の文学的土壌の豊かさを全国へ発信していきます。
林芙美子文学賞の選考委員には、3人の女性作家が決まりました。いずれも高い人気と実力を兼ね備える作家であることから、この文学賞の評判が高まっています。また、事前審査では、北九州文学協会の会員や一般公募の選考委員が参加するなど、地域ぐるみでこの文学賞を支えていきます。
大賞を受賞した作品は、生前林芙美子も寄稿した雑誌「婦人公論」に掲載し、全国へ発信します。
北九州市ゆかりの作家・林芙美子
林芙美子は、昭和初期から戦後まで、数多くの傑作を世に送り、幅広い人気を集めました。彼女は、幼少期から小学校までの感受性豊かな時期に、門司・若松・下関・直方などを転々としていました。その頃に出会った人々や暮らしが、その後の作品の土台となっていきます。まさに、彼女の文学の原点がこれらの地にあったのです。
広島県尾道市の高等女学校を卒業後上京。それまでつけていた自身の日記を基に書いた初めての作品「放浪記」がベストセラーとなり、一躍人気作家となりました。その印税で数カ月間、一人でパリに旅行するなど、積極的に行動する女性でした。
林芙美子は、ペン1本で生計を立ててきた、自立した女性の象徴であり、生涯を通して、男性に頼らない、借金はしない、という考えを貫いたことも魅力でした。昭和26年、47歳で急逝する2日前に出演したラジオ番組では、「庶民の作家として終わりたい」と語るなど、庶民に寄り添いながら執筆し続けました。今でもその作品は多くの人に愛されています。
市内にある林芙美子関連施設・史跡
林芙美子記念資料室
生前林芙美子が愛用した物などを展示しています。
所在地:門司区港町7―1(旧門司三井倶楽部2階) TEL093・332・0106
■開館時間/9~17時 ■休館日/年中無休 ■料金/一般100円、中学生以下50円
北九州市立文学館
林芙美子直筆の原稿や書簡などを展示しています。
所在地:小倉北区城内4―1
■開館時間/9時30分~18時(入館は閉館の30分前まで) ■休館日/月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、年末年始 ■料金/一般200円、中学・高校生100円、小学生50円
林芙美子生誕地記念文学碑
この碑の近くで生まれたという説があります。碑文には林芙美子の詩「掌草紙」が刻まれています。
所在地:門司区羽山2丁目12
「林芙美子文学賞」 募集要項
ご応募お待ちしています
- ◆応募資格
- 年齢、性別、職業、国籍などは問いません。
- ◆応募様式等
- 筆者オリジナル未発表作品
- 400字詰め原稿用紙50枚以内の日本語作品
募集要項の詳細や応募用紙は北九州市立文学館のホームページからダウンロードできます。
- ◆賞
- 大賞(1編)…「婦人公論」に作品掲載 賞金100万円
佳作(数編)…賞金各10万円 - ◆応募締め切り
- 9月30日(火) ※当日消印有効
- ◆入選作発表
- 平成27年1月下旬
- ◆原稿送り先
- 〒803―0813 北九州市小倉北区城内4-1 北九州市立文学館「林芙美子文学賞」係
- ◆選考委員
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井上荒野
《主な受賞歴》
第11回島清恋愛文学賞(「潤―」)
第139回直木三十五賞(「切羽へ」)
第6回中央公論文芸賞(「そこへ行くな」)
撮影:三原久明角田光代
《主な受賞歴》
第132回直木三十五賞(「対岸の彼女」)
第2回中央公論文芸賞(「八日目の蝉」)
第40回泉鏡花文学賞(「かなたの子」)川上未映子
《主な受賞歴》
第138回芥川龍之介賞(「乳と卵」)
第14回中原中也賞(「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」)
第49回谷崎潤一郎賞(「愛の夢とか」)
【この特集に関する問い合わせ】 北九州市立文学館 TEL093・571・1505