人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2013年10月24日(木)放送

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なくならない結婚差別
北九州市人権推進センターがお送りする「明日への伝言板」です。

今日は、平成24年度に北九州市が募集した人権作文の入選作品の中から、

結婚差別に関するお話を紹介します。

 十年ほど前、私には結婚を意識して交際している女性がいた。

笑顔を絶やさず芯(しん)のしっかりした彼女が、ある日突然、涙ながらにこう言った。

「父が、結婚は絶対に許さないと言っている」。

どうやら彼女の父親は、信用調査会社を使い、

私が同和地区の出身であることを突き止めたらしい。

 幼いころから家や学校で部落差別の話をよく聞かされていた私は、

さまざまな問題意識を持ち合わせていたし、

結婚への道のりが平たんではないことも承知していたつもりだ。

しかし、いざわが身に結婚差別が降り掛かってみると、

怒りとも悲しみとも虚無感ともつかない感情が込み上げ、

それまでの知識や理解は全て吹き飛んでしまった。

同時に、そんな言葉を伝えなければならなかった彼女に対し、申し訳ない気持ちになった。

 二十歳を超えていた私たちの結婚に、親の承諾は必要なかった。

彼女も家を出る決心をしていたので、勝手に入籍して新生活を始めることもできた。

しかし、それは何か違う気がしていた。

二人の結婚がどれだけ他人に迷惑を掛けるのか…。

やがて生まれてくる子どもに、母方の祖父母との断絶をどう説明するのか…。

この点で、迷いが生じていた。

 私は、何百年も続いてきた愚かな差別や偏見を、

子や孫の代まで残すものかと思い、彼女の両親の理解を得ようと決意した。

だが、何度足を運んでも会うことさえ拒否され続ける日々が、二年も続いた。

やがて、互いの心に微妙な距離が生まれ、感情をぶつけ合うことが増えていった。

私たちは結果として、差別に負けてしまったのだ。

 次の世代の人たちに伝えたい。

もし私と同じ問題に直面したら、どうか真正面から受け止めて戦ってほしい。

目の前に立ちはだかる大きな壁を明日へのドアに変えられるのは、若い力だと信じている。

 いかがでしたか。

同和地区出身者への偏見による結婚差別は、

北九州市が2010年に行った市民意識調査の結果からも、

今なお根強く残っているといえます。

もし、あなたのお子さんの結婚相手が同和地区の人だと分かったら、

あなたはどうしますか。

 それでは、また。