人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2013年11月06日(水)放送

テーマ / 高齢化社会 ジャンル検索

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何げないひと言
北九州市人権推進センターがお送りする「明日への伝言板」です。

 今日は、北九州市が平成24年度に募集した人権作文の入選作品から、

人と人との触れ合いについてのお話を紹介します。

 日差しの強い夏の日、

長く続く登り坂を愛犬と散歩していたときのことだった。

30メートルほど先に、車椅子のおばあさんが目に入った。

私は以前、バスの中で席を譲ろうとして、

かえって嫌な顔をされた苦い経験があったので、

何と声を掛けたらいいのかと考え始めていた。

 車椅子のおばあさんと2メートルほどの距離になったとき、

何げなく出てきた言葉は「暑いですね」だった。

 「木が大きくなったから、日陰をつくってくれて、ありがたいですよ」と言って、

おばあさんはポプラの木を見上げた。

 この団地ができて、三十数年。

建設当時に植えられた街路樹の成長とともに、住民もその年月だけ年老いてきた。

今では、60歳以上の人が47%を占めている。

「最初のころは、まだ小さかったですものね。どちらまで行かれるんですか」

「中央広場までです」

「僕もたばこを買いに行くところですから、一緒に行きましょうか」

車椅子の後ろに回り、グリップを握った。

「ありがとうございます。とても助かります」

中央広場まで押していくと、

「あとは自分で行けますから。本当にありがとうございました」。

おばあさんは深々と頭を下げた。

 お互いに自然と出た言葉が良かったに違いない。

そのひと言が相手との距離を縮め、その後の言葉を引き出してくれたのだ。

 高齢化が進む中、誰もが人と人との温かい関わり合いの中で生きたいと願っている。

そのためには、さりげなく相手の心に届くひと言が必要になる。

見知らぬ同士でも、いたわる心で一歩を踏み出すことである。

 いかがでしたか。

作者の戸惑いや安堵(あんど)感がリアルに伝わってきますね。

 時代と共に町も人も変わっていきます。

作者が暮らす団地もかつてはニュータウンという名で呼ばれていたのでしょう。

今では高齢者の姿が目立つようになりました。

地域の中で誰もが心地よく暮らしていくために、

作者が言うように「人と人との温かい関わり」が求められています。

 皆さんもひと声掛けてみませんか?

 では、また。