人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2013年11月13日(水)放送

テーマ / いじめ/アイヌの人々/同和問題 ジャンル検索

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因果応報
北九州市人権推進センターがお送りする「明日への伝言板」です。 

 

今日は、北九州市が募集した人権作文の中にあったお話を紹介します。

 僕の故郷は、北海道の辺境の地にある。

広い大地にたくさんの牛、森と湿原のある風景。

 中学生のとき、隣のクラスにアイヌの子がいた。

彼女は男子生徒の執拗(しつよう)ないじめに遭い、授業が終わると、

いつも逃げるように職員室に駆け込んでいた。

その女子生徒は毛がもじゃもじゃしていることから

「もじゃり」というあだ名を付けられた。

僕は、内心かわいそうだと思いながらも、その子が廊下を走ると、

「もじゃり、阿寒(あかん)湖畔に帰れ」とか「アイヌ臭い」などと暴言を投げた。

 やらないと自分がいじめられる。

 大学合格で、初めて北海道を飛び出し、九州の大学に来て、

僕は混血アイヌとレッテルを貼られた。

「おまえはアイヌの混血だ」

「先祖が悪いことして、蝦夷(えぞ)地に流れていったんだろう」と言われた。

胸ぐらをつかまれたり、罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられたりした。

 中学のとき彼女をいじめた分だけ、自分自身、差別を受けて因果応報を体感した。

我慢できたのは友達の厚い支えのおかげだ。

相手の立場になって考えることがいかに難しいか、

自分が差別されて初めて分かるものなのだ。

 そして、親友たちは、本州や九州や四国にも「同和問題が根深くある」と教えてくれた。

アイヌ差別も部落差別も、理不尽な歴史をたどっている。

 その後、北海道に帰った僕は、

かつていじめた彼女の家を探して、殴られるのを覚悟で謝りに行った。

本人は不在だったが、お父さんが出て来た。

事情を話したら握手してくださった。

今は、一生をかけて罪滅ぼしをしていくつもりだ。

 いかがでしたか。

アイヌの人々は日本列島北部周辺、特に北海道に先住していた民族です。

明治政府により、アイヌ独自の文化を否定し、

日本人に同化させる政策がおよそ百年間も続きました。

2008年、アイヌは先住民族と認められ、その伝統や文化は尊重されるようになりました。

しかし、いまだに偏見や差別が残っているのも事実です。

 私たちみんなが、アイヌの人々や同和問題について正しく理解し、

差別やいじめを受けた人の立場になって考えてみることが大切ですね。

 では、また。