人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2016年11月08日(火)放送

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いじめ問題と向き合って
 文部科学省の調査によると、平成二十六年度に全国の小、中、高校で発生したいじめはおよそ十九万件に上り、いじめが原因とみられる自殺者は五人でした。
 今日ご紹介する小森美登里さんも、十八年前に、高校生だった娘をいじめによる自殺で失いました。

 小森さんの一人娘、香澄さんは、高校に入って間もなくいじめを受けるようになりました。様子がおかしいことに気付いた小森さんは、担任の先生に相談し、注意深く様子を見守りながら、青少年相談センターに足を運んだり、精神科に通ったりしました。しかし香澄さんは元気を取り戻すことなく、自ら命を絶ってしまいました。
 その後、小森さんは、学校からいじめをなくしたい一心で、この問題と向き合ってきました。その中で見えてきたのは、いじめに対する大人の認識に誤りがあるのではないか、ということです。例えば、「悪口ぐらいで」と、心の傷を軽く見がちな傾向や、「いじめられるのは弱いから」と、被害者に原因があるという考え。そして「やられたらやり返せばいい」という乱暴な解決策。このような接し方ではなく、被害者がどれほど苦しんでいるのかを分かってあげることが大事です。
 小森さんは、いじめの加害者へのアンケートも行いました。七割が「いじめをしていたころ、自分も悩んだり、つらかったことがあった。」と回答。浮かび上がって来たのは、「いじめの原因は、いじめる側の心にある。被害者へのケアだけでなく、加害者の背景に寄り添うことも必要なんだ。」ということです。小森さんは、十八年前の自分の対応は間違っていたと悔やみます。
「私が取った行動は、いじめられている娘に対するものばかりでした。加害者がいじめ行為をやめない限り、娘は苦しみから解放されないのに…。」

 香澄さんは、自殺する四日前にこう言い残しています。
「お母さん、優しい心が一番大切。その心をもっていないあの子たちの方がかわいそうなんだ。」
小森さんは、この言葉を心に刻み、いじめの撲滅に取り組み続けています。
「加害者、被害者、そして傍観者。いじめに関わっている人の中に、幸せな人は一人もいません。」
小森さんの言葉に力がこもります。
 では、また。