人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2016年11月21日(月)放送

テーマ / 病気に起因する人権問題 ジャンル検索

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闘い、挑戦する難病夫婦
  「やったあ。」
フルマラソンのゴールで歓声が上がりました。二〇一六年二月の北九州マラソンです。難病を抱える全盲の妹尾真由美さん、しばらくして、違う難病を患っている、視覚障害者の夫・耕基さん、どちらも伴走者と一緒に駆け込み、拍手で迎えられました。
 二人は原因不明で治療法が確立されていない「指定難病」を抱えるアラフォー夫婦です。

  「難病」という言葉が使われるようになったのは昭和四十年代からです。患者数が少ないため、国の対策も治療薬の開発も十分ではありませんでした。二〇一五年に難病法が施行され、国が指定し医療費を助成する「指定難病」は三百六疾病に、北九州市には現在およそ七千九百人の患者が確認されています。
 真由美さんは視力・脊髄障害を起こす中枢神経系疾患「多発性硬化症」です。十年前に発症し、話せず、歩けず、食べられない状態になり、失明しました。悲しみの底に突き落とされましたが、「これではいけない」とリハビリを始めると症状が改善し、目も光や明暗を感じる感覚は残りました。
 耕基さんも就職後、眼や皮膚などの炎症を主な症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患「ベーチェット病」を発病しました。視力は右が〇・一、左が〇・〇四です。拡大鏡が手放せません。
 二人は生活訓練の集いで出会い、結婚して八年になります。真由美さんは耕基さんからパソコンの音声読み上げソフトなどを教えてもらい、明るさを取り戻しました。鍼灸・マッサージの仕事をし、料理もします。二人はマラソンだけでなく、スキューバダイビングにも挑戦。社会に難病への理解が深まることを強く願っています。

 夫婦をよく知るベーチェット病友の会福岡県支部の大本律子支部長は
「難病は対症療法しかなく、闘いはずっと続きます。二人は視力など病気で失ったものを嘆くのではなく、残った能力などを生かすことに一生懸命です。前に向かって行く姿はすてきです。」
と話します。難病患者は、決して人生に受け身なのではなく、社会で活躍したいと願っています。ただ、偏見や周りの人の理解がないことで社会に出られず、孤立してしまう人もいます。難病への理解を深め、支援することで、難病の人々も活躍できる社会をつくっていきたいですね。
 では、また。