人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2016年11月24日(木)放送

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岩切の女性たちの防災宣言
 二〇一一年三月に発生した東日本大震災で、震度六強を観測した仙台市宮城野区岩切地区。大津波で地域の三十五%が浸水する被害を受けました。混乱の中、避難所で立ち上がったのが「岩切の女性たちによる防災宣言をつくる会」のメンバーです。

 東日本大震災が起こるおよそ九カ月前の二〇一〇年六月、つくる会のメンバーは市の総合防災訓練で「岩切・女性たちの防災宣言」を発表しました。当時の女性区長が
「大地震が昼間に起きたら家にいるのは女性が多い。女性の視点で宣言をつくれば、防災対策の意味が深まるのでは。」
と提案したのがきっかけです。会を束ねた緑上浩子さんはPTAや婦人防火クラブ、子育てサークルに呼び掛け、集まったおよそ二十人と話し合いを重ねました。そうして、ひごろから心掛けたいことを宣言にまとめたのです。
  「あなたの大切な人は誰ですか?」
宣言はそんな言葉から始まります。
「いざというとき、どうやっておじいちゃんを助ける?」
「中学生の息子だって、みんなを守る側に立つことができる。」
など、仕事で夫や父親が家にいない状況での心の備えを促す言葉が続きます。そして
「私たちは、ここ岩切でみんなが安心して暮らすために、自分たちでできることを考え行動します。大切な人の命を守るため
 に。この地域で育つ子供たちのために。」
と結ばれています。
 翌年、東日本大震災が発生。大勢の被災者が避難を余儀なくされました。非常事態の中で、防災宣言をつくったメンバーは自然と
「私たち女性が積極的に動かなくては。」
と行動を起こしたのです。
「お年寄りや女性の不安の声を聞いて歩く。」
「着替えや授乳のためにプライバシーを確保する。」
など声を上げにくい人たちに配慮した避難所の運営を進めました。緑上さんは
「私たちは決して防災の専門家ではありません。」
と話し、今もメンバーと防災リーダーとして学び続けています。

 岩切地区の取組は、二〇一五年、仙台市で行われた国連防災世界会議でも紹介されました。彼女たちの宣言と活動は、熊本地震を体験した九州の私たちにとって、さらに、自然災害の多い日本に暮らす全ての人にとって、命を守るための道しるべといえるのではないでしょうか。
 では、また。