人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2017年10月31日(火)放送

テーマ / 犯罪被害者  ジャンル検索

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犯罪被害者の立場から
「始めはうつむいていた不登校の子どもが、ハッピービバークに通ううちに上を向いてしゃべりだすのよ。そんな変化がうれしいの」
と、佐賀市の市民団体「ほっとケーキ」代表の山口由美子さん。
山口さんが友人とともに、不登校などで悩む親同士が支え合う親の会「ほっとケーキ」を作り、さらに不登校の子どもたちの居場所「ハッピービバーク」を開催するようになって、もう十六年あまり。
きっかけは、十七年前のバスジャック事件でした。
たまたまその高速バスに乗り合わせたために、車内で当時十七歳の少年に刃物で重傷を負わされた山口さん。しかし、刃物をかざす少年を前にして、「どうして、この子はこんなことをしなければならないのか」と思ったそうです。
事件後、少年がいじめを受け、不登校になったあげくの犯罪だったと知ります。同い年の娘がかつて不登校になり、親子で向き合った経験を持つ山口さんは、「なぜ、少年は事件を起こしてしまったのか、と考えずにはいられなかった」と言います。そして、事件の翌年には、不登校の問題に向き合う活動を始めたんだそうです。
犯罪被害者は、心や身体などに深い傷を受けるだけでなく、事件後も、地域での心ない言葉や、報道機関による配慮を欠いた取材で辛い思いをします。このバスジャック事件の被害者の中にも、平穏な暮らしを求めて、幾度も引っ越した人がいるそうです。
山口さんは、
「私の場合、病院は、名前を仮名にするなどして、私のプライバシーを守ってくれましたし、退院後は、住所を知られてしまうのでタクシーを使いたくないと悩む私を、友人たちが代わる代わる、車で通院させてくれました。静かに見守ってくれた友人もいて、ありがたかったわ」
と言います。
「ほっとケーキ」では、保護者が安心して語り合い、お互いの気づきを大切に活動しています。
山口さんは、
「少年はいじめの被害者でした。不登校ののち、加害者になってしまったけど、もう、そういう被害者も加害者も、出て欲しくないの」
と語ります。
犯罪被害者の心の傷をいやすことは簡単ではありませんが、温かく見守る社会でありたいですね。
では、また。