人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2017年10月18日(水)放送

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里親と過ごして
今日は、里親制度をテーマに、お話しします。
北九州市で実際にあった出来事をもとに構成したお話です。

「おはようございます!」
「おっ、元気いいね。」
「先生、おはようございます。」
「おはようございます。毎日送り迎え、ありがとうございます。」

小学二年生の太郎くんは、数か月前から、里親の山田さん夫婦と暮らしています。それまで、お母さんとの二人暮らしでしたが、お母さんの心の病気や経済的な理由から、親子で一緒に暮らせなくなり、里親制度を利用することになりました。それを後押ししたのは、太郎くんに温かい家庭を体験させたいという、校長先生の強い思いでした。

住まいが小学校の校区外にある山田さんは、毎日、太郎くんを送り迎えしていました。
ある日、山田さんが慌てて学校に戻って来ました。

「どうしたんです。そんなに息を切らして。」
「忘れ物です。給食袋。太郎くんに渡してください。」

先生たちは、相談を受けることもありました。

「家ではいい子なんです。でも、いい子すぎて心配で…。」
「山田さんも気づかないうちに遠慮していませんか。お互い様かもしれませんよ。」

やがて太郎くんに変化が生まれました。忘れ物がなくなり、授業中そわそわすることがなくなりました。険しくなりがちだった表情が、以前の優しい笑顔に戻りました。

「先生、昨日の晩御飯、太郎くんが好き嫌いを言ったんです。魚はいやだ。ハンバーグがいいって。初めてです。私うれしくて…。」

それから半年が経ち、太郎くんのお母さんは元気になりました。太郎くんはふたたび親子で暮らすことになりました。
里親生活の最後の日、山田さん夫婦が太郎くんと一緒に、校長先生にあいさつに来ました。

「できれば、これからも授業参観や運動会に来たいのですが…。」
「太郎くんのお母さんもそれを望んでいます。ぜひ、来てください。」
「太郎くん、いつでも家に遊びに来てね。」
「うん…ありがとう。」

しぼり出すような声で、太郎くんは、精一杯のお礼を言いました。

いかがでしたか。先生たちは、わが子のように接する里親の山田さん夫婦の姿に心を打たれたそうです。家庭の温もりが必要な子どもにとって、里親制度が果たす役割は本当に大きなものです。
では、また。