人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

メニュー

ここからコンテンツです

  • 2017年10月20日(金)放送

テーマ / 高齢者 ジャンル検索

YouTubeで音声を再生します。

PDFダウンロード
看取りの現場から
写真家でジャーナリストの國森康弘さんは『写真が語る、いのちのバトンリレー ~さまざまな看取りの現場から』と題して北九州市で講演を行い、数々の写真を紹介しました。

その中にこんな写真があります。小学五年生の女の子・恋ちゃんが、優しいまなざしを向けながら、亡くなったひいおばあちゃんに触れる写真です。
「今まで大事にしてくれて、ありがとう。」
恋ちゃんは、旅立ったひいおばあちゃんにお礼を言いました。
その前の夜、家族もひいおばあちゃんに声をかけました。
「一生懸命生きてくれて、ありがとう。」
ひいおばあちゃんは、みんなに見守られながら息を引き取りました。
「おばあちゃん、最期まで穏やかやったなあ。」
家族はそう言いながら、その顔を見ていました。

ひいおばあちゃんは、恋ちゃんが生まれてからずっと、そばにいました。恋ちゃんが大きくなるにつれ、ひいおばあちゃんは足腰が弱り、家族の名前を忘れていきました。でも、恋ちゃんは「名前を忘れても、心の中では家族を大事に思ってくれている」と感じていました。

恋ちゃんは、ひいおばあちゃんを
「最期まで優しい顔だった」
と言いました。そして、
「ひいおばあちゃんは、私の心の中で生きている」
と語りました。
 
恋ちゃんが暮らす滋賀県東近江市の永源寺地域。田んぼや畑が広がる農村地帯です。そこには、地域や家族がお年寄りを見守る風景が、たくさんあります。
その根っこになっているのが、月一回開かれる勉強会です。
住み慣れた家で最期まで自分らしく生きられるまちを作るにはどうしたらいいか。
地域の人たち、お医者さん、看護師さん、ヘルパーさん、おまわりさん、民生委員さん、お坊さん。いろいろな人たちが集まって話します。百回以上、勉強会は続いています。みんな顔見知りで、いざという時、すぐに連携がとれます。

自分の家で最期を迎えたい。そう思う人はたくさんいます。でも、その願いがかなう人は、全国で一割を少し超えるほどです。そんななか、永源寺地域では、自宅で亡くなる人が五割を超える年もあります。
恋ちゃんのひいおばあちゃんも、自宅で一生を全うしました。それを家族とともに支えたのが地域です。そこでは、みんながお年寄りに優しく寄り添っています。
では、また。