人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2018年10月31日(水)放送

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先生は先生なんだ
皆さんは、「性同一性障害」をご存知でしょうか。からだの性とこころの性が一致しないことで悩み、偏見や差別の不安を抱える人が、もし身近にいたら…。今日は、愛知県で中学校教員を勤める幸奈さんのお話です。

男性に生まれながら、小さな頃から自分の性について複雑な思いを抱いていた幸奈さん。大学時代には、思い切ってカミングアウトした経験があるものの、中学校の教員になってからは、男性の服装で教壇に立ち、本当の自分をずっと隠していたそうです。
ところが、職場で、免許証の提出が必要となり、免許証の写真は女性の姿で写っていたことから、管理職に事情を話す必要に迫られた幸奈さん。それを機に覚悟を決め、信頼していた女性の先輩を皮切りに、一年をかけ同僚一人ずつと話をし、共感や理解を得ていったと言います。
その一方で、性同一性障害の人は、身近にいるということを生徒たちに伝えたいとの思いから、担任を受け持つクラスで、性的少数者のボランティアによく行っていること、幸せの追い求め方は人それぞれだと思うことなどを、熱心に生徒に話しました。そんな一年間を過ごし、自分のことを理解してもらえるのでは、と手応えを感じた幸奈さんは、生徒たちに問いかけました。
「どうして先生は、いつもブカブカのジャージを着ていると思う?」生徒からは色々な反応が返ってきましたが、答えは、「女性ホルモンを注射する治療で、大きくなってきた胸を隠すため」という、子どもたちにとって意外なものでした。しかし、幸奈さんからいろいろな話を聞いていた子どもたちからは、「驚いたけど、先生は先生なんだと思った」「私はそんな人を守る人になりたい」と温かな感想が寄せられたそうです。

三十年春、幸奈さんは、次の中学校に着任しました。そこでは、最初から性同一性障害であることを明かして、勤務しているそうです。幸奈さんのようにカミングアウトが受け入れられる状況は、まだまだ少ないのかもしれません。でも、こんなふうに、周りの人の理解が深まれば、みんなが過ごしやすい世界に少しずつ変えていけるのではないでしょうか。
では、また。