人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2018年11月13日(火)放送

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「もし」を考える
今日は、北九州市八幡東区の中学三年生、山内碧海さんの作文をご紹介します。題は『「もし」を考える』です。この作文は一部省略して朗読しています。

「盆休みだから職員が足りないのよ。」
母からのお願いで、私は母の勤めるデイサービスにお手伝いに行った。お茶くみや健康観察の手助け、デイサービスに来るおじいさん、おばあさんの話し相手になることが、私の仕事だった。
デイサービスにやってきた、初日の利用者さんは十一人。
「はい、碧海ちゃん。このカップは、一番端のおじいさんに渡してね。」
せっせとお茶をくんでは渡し、くんでは渡しをくり返していると、職員の方が、大きくて底にプレートのようなものがついたカップのお茶を手渡してくれた。そのおじいさんは車椅子に乗っていたが、特別他に目立った障害のある方ではないように見えた。内心不思議に思いながらも渡しに行くと、おじいさんはぱっと笑顔になって、
「ありがとうねぇ。わたしは手の力が弱いから、他のみなさんと同じコップだと落としてしまうんだよ。危ないだろう?」
そうか、とすぐに納得がいった。 
その不思議な形のコップをおじいさんに渡したとき、私は少し恥ずかしくなった。外見に目立ったところがないからといって、この人は普通の人だと勝手に決めつけてしまったことに気付いたからだ。お年寄りの中には、表面には出ていなくても、体の内側に大きな病気を抱えている人がいる。何も知らなかったら、大けがをさせることになってしまったかもしれない。一人一人、体の内側の事情まで異なる人々が、デイサービスにはいた。
私がデイサービスで過ごしたのはほんの数日だが、これは、お年寄りの方だけにいえる問題ではないことがよく分かった。体の外側に目立つところのない若い人でも、内側にはとても重い病気があるかもしれない。私たちは周囲の人たちの「もし」の場合を考えて日々を過ごす必要がある。

いかがでしたか。
デイサービスでの体験を通して、大切にしたいことに気付いた碧海さん。私たちも日常生活の中で、相手を思いやる心を持ちたいものですね。
では、また。