人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

メニュー

ここからコンテンツです

  • 2018年10月23日(火)放送

テーマ / ホームレス ジャンル検索

YouTubeで音声を再生します。

PDFダウンロード
ホームレス支援の今
北九州市内のホームレスは今年、六十二名になりました。最も多かった平成十六年の四百三十四名に比べると、大幅に減少しています。その一翼を担っているのが、認定NPO法人「抱樸」の活動です。
「抱樸」では、ホームレスのための炊き出し、物資の提供などとともに、就労先やアパートの紹介などの自立支援を行っています。理事長の奥田知志さんは「ホームレスの支援活動をしていると、『ホームレスは自己責任だ。放っておけ』という声を聞くことがある。でもね、『おんなじいのち』なんだよ。まず、住む所と食事が必要なんだ。」と言います。
しかし、奥田さんは住む所や食事を用意しても、それだけではホームレスは自立できないと気付いたそうです。
「家族や友人、所属する企業もない、社会的な孤立と困窮の中にいるのがホームレスと分かった。だから、僕たちは物を与えるだけでなく、周りの人との関わりをつくる努力を続けるんです。」
奥田さんたちは炊き出しで出会ったホームレスに寄り添い、見守って、職を探したり、場合によっては最期の看取りまで行っています。
ある男性は八十年あまりの人生のうち、五十年以上を刑務所で暮らしたそうです。刑務所を出ても、帰る家も家族もない彼は、刑務所に戻るために放火を繰り返していましたが、奥田さんたちが数年に渡って、友達づくりや、近所づきあいなどに協力した結果、彼は今、アパートで平穏に暮らしています。奥田さんは「やっと彼もホームレス卒業です」とうれしそうに話してくれました。
奥田さんたちの活動によって、三十年間で約三千百人がホームレスを卒業し、その六割は仕事を持つ就労自立を果たしたそうです。
「人は一人では生きられない、弱いんです。それなのに、現代は人と関わらない、迷惑もかけないのが良いとされます。だから、困ったときに『助けて』と言えない、孤独で社会的に孤立した人が増えているのではないでしょうか」と奥田さん。
人とのきずなを大切にして、お互いが思いやりをもって助けあう社会でありたいですね。
では、また。