人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2019年11月04日(月)放送

テーマ / 犯罪被害者等 ジャンル検索

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犯罪被害者の思いを分かち合う
皆さんは、犯罪の被害に遭った人やその家族の苦しみが想像できるでしょうか。

佐賀県に住む廣瀬小百合さんは、二十一年前、当時大学三年生だった次男を亡くしました。通行中のトラブルで二人組の若者に暴行を受けたことが原因です。裁判では、加害者が初犯だったことや自首したことなどが考慮され、執行猶予付きの有罪判決が言い渡されました。「息子の命を奪った犯人が、刑務所にも入らず社会復帰するなんて…」我が子を亡くした悲しみ。犯人への怒りや憎しみ。判決への憤り。やり場のない苦しみと共に人生のどん底に突き落とされた廣瀬さんは、周囲からの慰めや励ましにさえ傷つき、孤立を深めていきました。約一年間、家に閉じこもったこともあります。それでも苦しみは薄れるどころか深まるばかり。廣瀬さんは「この苦しみは、私が死ぬまで続くでしょう」と言います。
そんな廣瀬さんの心の救いになっているのが、同じ境遇の人たちと過ごす時間です。時には夜を徹して苦しい胸の内を語り合い、時には言葉もなく涙を流し合う。「それが、犯罪被害者にとって唯一の癒やしなのかもしれません」と廣瀬さんは話します。
犯罪被害者同士の出会いと交流の場がもっと必要だと痛感した廣瀬さんは、二〇一一年、鹿児島県の犯罪被害者遺族である二宮通さんの提案に賛同して、二十人の犯罪被害者と共に「みどりの風」という会を設立しました。年に一度、泊りがけで思いを語り合うほか、犯罪被害者の実情を社会に訴えるシンポジウムなどを開いています。さらに、犯罪者の更生や再犯防止に役に立とうと、刑務所や少年院で体験を語る活動にも力を入れています。会には精神科医や弁護士、社会福祉士、臨床心理士などの支援会員もいて、犯罪被害者の不安解消や生活を立て直す手助けもしています。

いつ自分が犯罪に巻き込まれるか分からない時代です。北九州市でも安全・安心条例を施行し、犯罪被害者への支援体制の充実に取り組んでいます。
もし、犯罪の被害に遭って一人で苦しみを抱えている人がいたら、ほんの少し勇気を出して「みどりの風」に連絡してみませんか。電話番号は〇九〇―五三八五―二〇三八です。
では、また。