人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2019年10月28日(月)放送

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拉致問題を風化させない
一九七〇年代から八〇年代にかけて、北朝鮮によって多くの日本人が拉致されました。現在、国が認定しているだけで十七人の拉致被害者がいます。その一人が、二〇〇二年に帰国した蓮池薫さんです。

蓮池さんは、大学生だった一九七八年七月、恋人の祐木子さんと一緒に拉致されました。新潟県柏崎市の海辺を散歩中、突然、顔を殴られて船に乗せられ、気がついたら北朝鮮に連れて来られていたそうです。そこから、二十四年間にわたる北朝鮮での生活が始まりました。
蓮池さんは何度も日本に帰してくれと抗議しましたが聞き入れられませんでした。常に監視されており、逃げることはもとより自由に出掛けたり人に会ったりすることもできず、何を話すにも細心の注意が必要だったそうです。蓮池さんは当時のことを、「命以外のすべてを奪われ、夢も希望も失って絶望した」と語ります。
その後、一九八〇年に祐木子さんと結婚。翌年、子どもが生まれました。何もかも失った北朝鮮の地で、家族という新たな絆ができたのです。つらい生活を耐えることができたのは、家族がいたからだと蓮池さんは言います。
そんな中、拉致問題に大きな転機が訪れます。北朝鮮が日本人を拉致していたことを認め、二〇〇二年十月、蓮池さん夫妻を含む五人の拉致被害者が日本に帰国することができたのです。しかし、蓮池さんにとって何より大切な子どもたちは、北朝鮮に残されたままでした。蓮池さんと祐木子さんにとって、子どもたちといつ再会できるか分からないつらく苦しい時期が続きました。子どもたちが無事帰国し、再び家族で一緒に暮らせるようになるまで、それから一年七カ月という時間がかかりました。

蓮池さんが帰国して十七年、拉致問題はいまだに解決していません。北朝鮮に取り残されたままの人や、安否の分からない拉致被害者がまだ何人もいます。また、帰りを待ち続ける家族の高齢化も進んでいます。蓮池さんは、全国各地の講演で、「拉致は家族を引き裂き、夢を奪い、運命を狂わせるもの。すべての拉致被害者の救済を急がなければいけません。風化させず、関心を持ち続けてください」と訴えています。
では、また。