人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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明日への伝言板試聴コーナー

  • 2021年11月19日(金)放送
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  • せっちゃくざい

鶴田弥生

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せっちゃくざい

今日は、北九州市立文学館が令和二年度に募集した第十一回「あなたにあいたくて生まれてきた詩」コンクールの受賞作品の中から、京都市の小学六年生の『せっちゃくざい』という詩を紹介します。

『せっちゃくざい』

「ごめん…ごめんね」
そう言いたいだけなのに
口がせっちゃくざいで
ひっつけられたみたいに
開かなかった

目の前には
みけんにしわをよせて
うちがなげたボールが
あたってしまった
額をさわる友達
うちが
なげたボールは
バッチーン て
すごい音をたてて
友達に
あたってしまった

思い返すと
強くなげてしまった
うちが悪い…
うちが悪いんだ

そう思った時
せっちゃくざいが
やわらかくなって
とけた…ような気がした

「さっきはあててごめん」

友達は ゆるしてくれた
「別に いいよ」

せっちゃくざいが
二つの心をつなげてくれた

いかがでしたか。
自分の投げたボールが、友達の額に、すごい音を立てて当たってしまった…。目の前には、みけんにしわを寄せて、痛そうにしている友達の姿が…。
心の中では「ごめん」と思っているのに、その言葉をすぐに口にできなかった理由を、作者は「口が接着剤で引っ付けられたみたいに」と表現しています。この時、「接着剤」となったのは、作者の動揺や困惑だったのかもしれませんね。
でも、作者はすぐに自分のしたことを思い返してみました。そして、ボールを強く投げてしまった「うちが悪い」と、素直に認めることができたのです。
もし、作者が「そんなつもりはなかったのに」とか「わざとじゃなかったのに」などと自分のことだけを考えていたら、恐らく出てこなかった思いではないでしょうか。相手の立場になって、自分の行為を振り返ってみたからこそ、自分が悪かったと思えたような気がします。
そして、この気づきが、「ごめん」という言葉を言えなくしていた「接着剤」を、やわらかくして溶かしてくれたんですね。
詩の最後にある、今度は二人の心をつなげてくれた「接着剤」。それは、相手の立場に立って考える「思いやりの心」ではないでしょうか。
では、また。