(電話の呼び出し音)
(ボランティア)「はい、チャイルドラインです。」
(高校生)「もしもし……。」
近年、家庭や地域で、人と人との関係が薄れていく傾向の中、虐待、いじめ、貧困問題など、子どもを取り巻く環境はますます深刻化しています。
ここ「特定非営利活動法人チャイルドライン北九州」では、十八歳までの子どもの電話を受けています。
かかってくる電話の内容は、ただ聞いて欲しいだけのその日あった出来事だったり、辛い悩みや抱えこんだ秘密を打ち明けたりとさまざまです。
ボランティアが電話を受けるときに心がけているのは、まず「聴く」ということです。お説教や助言の押し付けではなく、子どもの心にしっかりと寄り添う、子ども本位の「やさしい電話」であることを大切にしています。
理事長の河嶋静代さんは、最近の子どもたちの電話から見えてきたことがあると言います。
「チャイルドラインには、周りに誰も話す人がいない子どもたちが電話をかけてきます。しかし、以前に比べて、自分を素直に表せない、『語るのが苦手』な子どもたちが増えてきました。育ちの中でコミュニケーションの取り方を経験してこなかったり、自分の欲求や感情を誰にも受け止めてもらえず、それらを抑制してきたりしたからかもしれません。電話からは、家族がいるけれども愛情を注がれていないと子ども自身が感じていたり、友人がいても心でつながっていないので寂しかったりという、心理的な孤立・孤独の状態にあることが感じ取れます。」
チャイルドライン北九州にかかってくる電話には、無言のものも多いといいます。中には、二度、三度かけてくるうちに、やっと「もしもし」と言えた子どももいるそうです。
「たとえ会話が成立しなくても、電話の向こうにいる子どもの気持ちを聴く、それが『チャイルドライン』のモットーである『子どもの心の居場所』の役目だと考えています。子どもの心理的な孤立や孤独を防ぐためには、私たちの活動とあわせて、家庭や地域における日常生活の中で、子どものSOSを敏感にキャッチする大人の存在が必要だと思います。」
いかがでしたか。
子どもたちが安心して暮らすために、子どもたちの声に耳を傾け、寄り添う、チャイルドラインのような「心の居場所」に、私たちもなりたいですね。
では、また。