ご存じですか? 北九州市では今、四百人あまりの保護司の方が活動しています。保護司とは、犯罪や非行によって「保護観察」を受けることになった人の更生を図るため、生活を見守ったり、さまざまな相談にのったり、指導をしたりする人のことです。
北九州市で保護司として活動している山内富士子さんは、保護司になって十年目。これまで担当した中に、十五歳の少年がいました。彼は小学生の頃から野球をしていて、周囲からも将来を期待されていました。ところが、ケガで野球ができなくなって高校も辞めてしまい、そこから、窃盗や学校の窓ガラスを割るなどの非行に走っていったそうです。
「きっと、やり場のない思いを抱えていたんでしょう。面談は月に二回でしたが、最初の頃はすっぽかされるなど、大変なこともたくさんありました。
私が心がけたのは、とにかく話を聞くことです。なぜ犯罪行為をしてしまったのか。そこに至るまでの話を聞くうちに、だんだんと家族にも言えなかったことを吐き出してくれるようになりました。
保護司というよりも親のような気持ちになって、叱ったことも何度もありました。
とにかく諦めない、彼のそばに寄り添い、絶対に見捨てないと心に決めていました。
半年ほどがたって、『高校に行きたい』と言えた頃から、彼は少しずつ変わり始めました。働きながら通えるように、夜間高校の説明をしたところ、自分の意志で、学校を選択し、通学を決めました。本人の努力、そして協力雇用主の方の助けもあり、五年の保護観察を三年で終えて、今では立派に更生しています。」
犯罪や非行からの立ち直りには、保護司だけでなく、働く場所を提供して、自立や社会復帰に協力する「協力雇用主」の方や、家族や友達の助けも必要です。罪を償い更生しようとしている人たちを、地域ぐるみで支えることが、安全で安心な社会づくりへの一歩につながります。
「一番伝えたいのは、『ひとりじゃないよ』ということなんです。」と山内さんは言います。
差別や偏見により、更生しようとしている人の意欲が失われることがないように、私たち一人一人が、この問題への関心と理解を深めていくことが大切ですね。
では、また。