人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

メニュー

ここからコンテンツです

明日への伝言板試聴コーナー

  • 2022年11月4日(金)放送
  • テーマ / 拉致問題 ジャンル検索
  • みんな待っているから

鶴田弥生

YouTubeを再生する

PDFダウンロードPDFダウンロード
みんな待っているから

皆さんは、拉致問題、拉致被害者と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

一九七七年十一月十五日、新潟市で暮らしていた横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されました。当時めぐみさんは十三歳。中学校でバドミントン部の練習を終えた後、下校の途中を襲われた突然の出来事でした。
ずっと後になって関係者から次のような証言がありました。

「めぐみさんは激しく抵抗したため、四十時間もの間、北朝鮮に向かう船の真っ暗で寒い船倉に閉じ込められた。彼女は『お母さん、お母さん』と泣き叫び、出口や壁などあちこちを引っ掻いて苦しんでいた。北朝鮮に着いた時は、手の爪が剥がれそうになるほど血まみれだった…」

そのことを知った家族の悲しみや嘆きは、言葉では言い表せないほどでした。
これまでに政府が認定した拉致被害者は十七名。そのうち、めぐみさんを含めた十二名は未だ帰ってくることができていません。めぐみさんの父親の横田滋さんは、日本各地の拉致被害者の家族とともに「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」を結成して長年活動されてきました。しかし、二〇二〇年六月、愛娘との再会が叶わぬまま、八十七歳でお亡くなりになりました。母親の早紀江さんも八十六歳になり、最後の力を振り絞る思いで救出を訴え続けています。他の拉致被害者の家族も高齢になり、「自分の命のあるうちに再会を」と祈りながらも、残された時間のなさや、思うように活動ができなくなっていく自分に焦りを募らせながら、一日、一日を過ごしていらっしゃいます。

「子どもを返して」と願い続ける、耐えがたい苦しみが四十五年も続いているという現実。私たちにできることは、拉致問題という決してあってはならない人権侵害を、遠い歴史上の出来事のように追いやったり、自分の生活とは関係のないことと切り捨てたりしないことです。

横田早紀江さんは、記者会見でめぐみさんにかけたい言葉を問われたとき、「元気でいてください。みんな待っているから」とお答えになりました。拉致被害者の家族だけでなく、私たち一人一人が「みんな待っているから」という気持ちを持って、この問題を考え続けていきましょう。
では、また。