人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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明日への伝言板試聴コーナー

  • 2023年11月30日(木)放送
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体と心で感じるハンセン病問題

今日は、国立のハンセン病療養所「菊池恵楓園」のお話です。
ハンセン病は「らい菌」に感染して起こる病気ですが、「らい菌」は感染力がとても弱く、現代では感染することも発病することもほぼありません。万一、発病したとしても、適切な治療により完治するようになりました。
しかし、治療法が確立された後もなお、感染者は、国の政策によって強制的に家族や地域と引き離され、療養所に収容されました。その政策は、一九九六年の「らい予防法」廃止まで、およそ九十年にもわたったのです。隔離されたまま一生を終えた人も少なくありません。
そんな療養所の一つが、熊本県合志市にある菊池恵楓園です。敷地内には、ハンセン病問題を次の世代に伝える「歴史資料館」があります。

館内に入ると、かつて、園を囲んで外界と隔てていた「隔離の壁」の一部が展示されています。この壁には、入所者が故郷を懐かしく思う一心で開けた小さなのぞき穴があり、彼らの無念を訴えかけてきます。

資料館の企画に携わった学芸員の原田寿真さんは、「資料館の基本理念は『あなたは私』『私はあなた』。来館者も入所者も同じ人間です。この理念には、『自分事としてハンセン病問題を考えてほしい』という切実な願いが込められているのです。」と言います。
展示の内容や説明文などは、全て、今もここで暮らす入所者の方々と共に考えたものだそうです。
中には、後遺症で物がまぶしく見える患者の視覚を体感できるコーナーもあり、展示資料に触れることで、知識として知るだけでなく、体と心でハンセン病に関する様々な問題を感じ取ることができるように工夫されています。
訪れた人からは、「入所者の心情がよく分かった」「頭ではなく心で理解できた」との声があり、中には「こんなにもひどい隔離の歴史があったのか」と涙する人もいるそうです。

いかがですか。
人として当たり前の暮らしが許されず、人権を奪われたまま生きてこられた入所者の方たち。そして御家族もまた、厳しい差別や偏見に苦しんできました。その人生とハンセン病問題の歴史を知ることで、私たちは、人権が尊重される社会の大切さを実感できます。
歴史資料館の様子はインターネット上でも見ることができます。「菊池恵楓園バーチャルガイド」と検索してみてください。
では、また。