人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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  • 2019年11月29日(金)放送

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注文をまちがえる料理店
内閣府の平成二十九年版高齢社会白書のデータによると、二〇二五年、日本の六十五歳以上のおよそ五人に一人が認知症になるといわれています。認知症はさまざまな原因で脳に障害が起こり、日常生活に支障が出る状態です。認知症になったら、働くことも、自分らしく生きることもできなくなるのでしょうか。

二〇一七年九月、東京都港区六本木に認知症の人がスタッフとして働くレストラン「注文をまちがえる料理店」が三日間限定でオープンしました。料理店の実行委員長、和田行男さんは総合介護サービス会社のディレクターを務めています。和田さんは介護福祉士として働く中で、何もかも手助けする介護のやり方に疑問を感じていました。自分の能力を発揮できると、誰もが生き生きと輝きます。認知症になっても、アクティブに働ける場をつくりたい。和田さんの考えに共感したテレビ局ディレクターの呼び掛けで誕生したのが、この料理店です。
実行委員のメンバーは「料理店」の名にふさわしいように、食事も雰囲気も一流を目指しました。同時に、和田さんは認知症の人が働きやすい環境をつくろうと工夫を凝らしました。メニュー名は番号、注文票は〇を付けるだけに。お客さんと会話が生まれやすい接客の仕方を考え、サポートスタッフの配置
にも気を配りました。プレオープンでは、ホットコーヒーにストローが添えられたり、注文と違う料理が来たり、お客さんの六割が何らかの間違いを体験しました。それでも店内は笑い声が絶えず、和気あいあいとした空気に満ちていました。お客さんの助けもあり、本番で間違いを体験した人は三割に減りました。

二〇一九年、「注文をまちがえる料理店」は法人化され、スタッフに給与を支払うことができました。「認知症の人はできない人ではありません。サポートがあれば、できることは増え、自分主体の生活を続けられるのです」と和田さんは強調します。認知症によって生じた記憶のズレを周囲が受け入れる寛容な心を持つ社会になることが、全ての人の希望ある未来につながるはずです。
では、また。