かつて、国の隔離政策によって患者やその家族がいわれのない差別や偏見の対象となってきたハンセン病。
皆さんは、「今も、全国にハンセン病の療養所があり、病気が治った後も、そこで暮らし続けている人がいる」ということをご存じでしょうか。
令和六年四月に公表された厚生労働省による全国的な意識調査では、回答者の六割以上が、この事実を知らないと回答しています。
また、ハンセン病の元患者やその家族と「手をつなぐなどの身体に触れること」や、「ホテルなどで同じ浴場を利用すること」、「元患者の家族と自分の家族が結婚すること」に抵抗を感じると答えた人は、それぞれ二割前後で、依然として、偏見や差別の意識が根強く残っていることが浮き彫りになりました。
ハンセン病は、「らい菌」による感染症ですが、その感染力は非常に弱く、現在の日本の衛生状態や医療の状況などを考えると、「らい菌」に感染したり、ハンセン病を発病したりすることは、ほとんどありません。また、すでに薬や治療法も確立されています。
しかし、いまだに正しい知識や理解がないまま、ハンセン病の患者や元患者を避けようとする人たちがいます。こうした偏見や差別を恐れ、療養所で暮らし続けるしかなかった人もいるのです。
これは、今も続く人権問題です。病気との闘いだけでなく、長い間、周囲の偏見や差別に苦しんだ人生を想像してみてください。大切なのは、私たち一人一人がハンセン病への正しい知識を持つこと。そして、自分の中にあるかもしれない偏見に気づくことです。
皆さんも記憶に新しいところでは、「新型コロナウイルス感染症」でも、たくさんの情報に混乱する中で、思い込みや過剰な不安により、患者やその家族、医療従事者などに対する様々な偏見や差別の問題がありました。
「ハンセン病の患者や家族に対する、厳しい差別や偏見の歴史をみんなが重く受け止め、教訓としていたならば、もしかすると、コロナ差別の状況は変わっていたかもしれない」と言う人もいます。
感染症に関係する人権問題は『誰か』のことではありません。改めて自分のこととして考えてみませんか。
では、また。