人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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明日への伝言板試聴コーナー

  • 2024年11月7日(木)放送
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冨永裕輔

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こんな姿でまたの再会を

今日は、法務省と全国人権擁護委員連合会主催の第四十二回全国中学生人権作文コンテストで全国人権擁護委員連合会会長賞を受賞した、北九州市の中学二年生、小田孝太朗さんの作文『こんな姿でまたの再会を』を紹介します。この作文は、一部省略して朗読します。

「マイクロアグレッション」という言葉をどのくらいの人が知っているだろうか。
 二週間程前、私は、かつてスイミングスクールで、ライバルとして競い合っていた友人と、市内の公共プールを訪れていた。友人は、父はアメリカ、母は日本出身で、現在はアメリカに居住している。そのプールで、二年ぶりに小学校のときの同級生と再会し、開口一番こう言われた。
「すげえ。黒人の友人がおったん。」と。
「う、うん。」
と思わず答え、その場をすぐに離れた。友人は私を気づかってか、
「気にしなくてもいいよ。日本はまだまだマイクロアグレッション多いよな。」とつぶやいた。
 「マイクロアグレッション」とは、何気ない日常の言動に現れる偏見や差別に基づく、見下しや侮辱、否定的な態度のこと。「小さな攻撃性」と言われ、海外では長らく問題視されている。
 ふと、ある出来事が頭に浮かんできた。友人と互いに自画像を描いていた際、
「ねえ、肌色貸して。」
と声をかけた。友人は二つの色を手に取り戸惑っていた。すると友人の母が尋ねた。
「うすだいだい色を借りたいんだよね。でもこの子の肌はうすだいだい色かな。」
 小学四年生だった私だが、思わず言葉を失ったことを今でも鮮明に覚えている。
 その後、友人の母から悲しい思いを味わった際の話を聞いた。日本では、同じプールに入ることを断られたり、楽しみにしていたレストランの入店を拒まれたりしたこともあったそうだ。
 この「マイクロアグレッション」を、せめて減らすことはできないだろうか。
 言葉のもつ力をいつも意識する。言葉は良くも悪くも人間の心理に影響を与える。心をつなぐ、安心できる言葉を選び、たくさん発していくようにしたい。そして、相手のことを常に意識し、受け入れ、自分自身も大切にできる。そんな自他ともに尊重できる人に成長して、いつかまた自信をもって友人と再会したい。

いかがでしたか。日々の生活やネットの中で、何気なく発している「マイクロアグレッション」。本当に「小さな攻撃性」といえるのでしょうか。皆さんも一度考えてみませんか。
 では、また。