今日は、福岡法務局と福岡県人権擁護委員連合会主催の第四十二回全国中学生人権作文コンテスト福岡県大会で優秀賞を受賞した、八女市の中学一年生、佐多あやねさんの作文『優しさの道も一歩から』を紹介します。この作文は、一部省略して朗読します。
私の祖父は肺が悪く、歩くと呼吸が苦しいことから、旅行に行く時は車椅子を使っていました。
ある夏休みに家族でリゾートホテルに行った時のことです。食事のフロアに行くエレベーターは大混雑でした。祖父も車椅子は邪魔だろうと遠慮して、
「次でよかよ。」
と、なかなか乗りませんでした。
やっと乗り込めそうなエレベーターのドアが開き、車椅子を押して入ろうとすると、中にいる人が
「せま…。」
と嫌そうな顔をしながら言ったのが聞こえました。私は悔しいのか悲しいのか分からないモヤモヤした気持ちで、唇をかみしめ、車椅子を押す手にギュッと力を込めましたが、また祖父が言います。
「よかよか。次ので。」
祖父の言葉に中の人は急いで「閉」のボタンを押したようでした。私は寂しい気持ちでいっぱいで、楽しみにしていた旅行も少しつまらなく感じたその時でした。
エレベーターが開き、大学生くらいのお兄さんが、
「どうぞ。」
と自分が降りて、車椅子を中へと入れてくれ、
「自分は階段でいきます!」
と笑顔で言ってくれたのです。
私はモヤモヤした気持ちが急激に晴れて、心がぽかぽかしてくるのを感じました。じーんと心が温かくなったのです。
この出来事があって自分を振り返ってみると、困っている人に積極的に声をかけたことがないことに気付かされました。声をかけるという一歩進んだ行為は勇気のいることです。
エレベーターで通り過ぎて行った人は、私のように声をかける勇気を持ち合わせてなかっただけかもしれません。
祖父の車椅子を押すという経験をして初めて、
「思ってるだけではだめだ。行動に移さなきゃ。」
という気持ちにさせられました。
いかがでしたか。
作者は作文の最後をこう締めくくっています。
「私は今度困っている人を見かけたら、声をかけようと心に決めました。自分から行動するということは勇気のいることですが、私の中に広がったぽかぽかした気持ちを、他の人にも届けてあげたいと思います。」
あやねさんのように、私たちもぽかぽかした気持ちを届けられるよう、勇気の一歩を踏み出してみませんか。
では、また。