全国に、およそ三十四万六千人。これは何の数字だと思いますか。実は、文部科学省が発表した令和五年度の小・中学校における不登校の児童生徒数です。十一年連続で増加し、過去最多となりました。
今、ある家庭で、小学六年生の子どもと母親がこんなやり取りをしています。ちょっと耳を傾けてみましょう。
【母親】早くしないと遅刻するわよ。
【子ども】学校…行きたくない…。
【母親】えっ? どうしたの? 何かあった?
【子ども】ん……。
【母親】お兄ちゃんも学校に行きたくない日はあったけど、それでも休まずに行ってえらかったわよ。ほかの子もちゃんと行ってるんだから、頑張らないと。
【子ども】でも、行きたくない…。
【母親】学校に行けばなんとかなるから、頑張れるでしょ?
この会話を聞いて、皆さんはどう感じましたか?
母親は、学校に行きたがらない子どもを、とにかく学校に行かせようとしています。学校に行かないのは良くないこと、と捉えているようです。
しかし、子どもの「学校に行きたくない」には、例えばいじめや友人間のトラブル、学業の悩み、家庭環境の変化、漠然とした不安などが隠されていることがあります。そんな気持ちを自分では自覚できていない子どももいますが、不登校は子どもたちが抱えるさまざまな困難のサインであり、SOSです。
では、子どものSOSに気づいたら、どうすればいいのでしょうか。子どもの様子に注意深く目を配ることはもちろんですが、大切なのは、「学校に行かせるための対応」よりも、「子どもの気持ちに寄り添った対応」です。
なぜ学校に行きたくないのかという根本に向き合うために、まず子どもの声にしっかり耳を傾けること。そして、子どもの気持ちに寄り添い、「辛かったね」「大変だったね」と共感する言葉を掛けることも大切です。
また、地域では子どもたちの見守りや安心して過ごせる居場所があることで、不登校の子どもたちを孤立から救うことができます。
先ほどの母親も、後日、子どものSOSに気づいたようです。そして、子どもにこんな声を掛けました。
【母親】話したくなかったら話さなくてもいいわよ。でも、今日は一緒にいるからね。大事なのは学校に行くことより、元気でいてくれることだから。
では、また。



