ここに、一冊の絵本があります。題は『色んなみんな』。作者は八幡高校二年生の七人グループです。物語では、実在するノドジロシトドという四種類の性をもつ小鳥のジロが、パーティーに招待するお客さんを探します。ジロは、恐竜や車やヒーローが大好きな女の子や、「僕にはお父さんが二人いるんだ」と明るく話す男の子と出会ったり、人生の途中まで男性として生きてきたという女性に話を聞いたり。それぞれ自分らしく生きている、いろんな人と出会っていきます。
「この世界には、色とりどりのみんながいて、それぞれの性のあり方や自分らしい生き方があっていいよね、ということを伝えたいと思って作りました。」
そう語ってくれたのは、作者の高校生たちです。絵本を作る過程では、性的マイノリティの当事者の方にもお話を聞き、「まずは知ってほしい」と言われたことが心に残っているそうです。彼女たちは、
「知らないということは、その存在を『ないこと』にしてしまうとても悲しいこと。私たちも、最初はどこか他人事のように考えていましたが、物語の流れやセリフを考えていくうちに、自分も絵本の中の登場人物の一人なんだ、と思うようになっていきました」と言います。
自分の事として考えるようになった彼女たちが作った物語には、誰かを否定したり、いじめたりする人は出てきません。
「偏見を『無くす』のではなく、『生まない』ことに重きを置きたかったからです。未来を担う子どもたちには、絵本のように偏見がまったく無い世界が当たり前なんだ、と知ってほしいと願っています」と力強く伝えてくれました。
いかがでしたか。彼女たちは、こんな言葉を最後に語ってくれました。
「この活動を通して、当事者の方の気持ちを本当に理解して、行動するのは難しいことかもしれない、と感じました。だからこそ、この物語を通じて、この世界にはたくさんの『色んな人』がいて、自分にとっての普通とは、まったく違う普通を持っている人がいることを広めていけたら、それだけで世界は少しずつ優しくなっていく気がします。人の心に強く根づいてしまっている偏見にとらわれない心を持つことが、人権を尊重し合える社会につながると思います。」
では、また。



