今日は、福岡法務局と福岡県人権擁護委員連合会主催の第四十三回全国中学生人権作文コンテスト福岡県大会でNHK福岡放送局賞を受賞した福岡市の中学三年生、田道友子さんの作文を紹介します。題は『当たり前の現実?』です。この作文は、一部省略して朗読します。
ある日、こんなコマーシャルが目に留まりました。
赤ちゃんの泣き声とともに映された、「はいは~い今行くね~」という言葉。ビルの絵とともに映された、「我が社の経営方針を発表します」という言葉。そして、「聞こえてきたのは、男性の声ですか? 女性の声ですか? 無意識の偏見に気づくことから、はじめませんか」と締めくくられました。
私は一番目は女の人、二番目は男の人だと思ってしまいましたが、そういう先入観が問題なのだと考えさせられました。
それから一年ほど経ち、祖父が亡くなりました。お葬式をしてから父の実家に戻り、親族で食事をしました。
母や祖母、伯母たちが食事やお酒の用意をしている間、男の人たちは上座の方へ座っていき、祖母は一番お仏壇から遠い、下座に座っていました。姉と
「なんで、ばあちゃんが喪主なのに、一番下座におるん?」
と話していると、親戚のおばさんが、
「おばあちゃんも男の人がいっぱいいる上座より、下座の方が居心地いいでしょう? それに、お料理を運びやすいからね。」
と、教えてくれました。私は、そのときの光景が頭から離れませんでした。
なぜ、女の人が料理やお酒を運ぶ前提なんだろう。
なぜ、喪主が下座にいるのに、誰も不思議に思っていないんだろう。
あのコマーシャルを見たときには、「考えさせられるなぁ」としか思わなかったのに、自分自身の問題になって、やっと、自分がいかに何も考えずに生きてきたか気付かされました。
社会で、男女の平等を実現させるための取り組みは、日々広がっています。けれど、「男は仕事、女は家事」といった考え方を持つ人や、当たり前だと飲みこんでしまう人がいることも事実です。私に今できることは、そういう現実が当たり前になってしまわないよう疑問を持ち、考え続けることなのだと思いました。このきっかけを、忘れないようにしたいです。
いかがでしたか。
性別による無意識の思い込みは、時として人の心を傷つけることがあります。私たちも「当たり前の現実」になっていないか、考え続けていきたいですね。
では、また。



