今日は、認知症に関わる、ある取組をご紹介します。
市内のNPO法人「老いを支える北九州家族の会」では、令和元年に「私を知ってっちゃノート」という独自の冊子を作成し、市民センターなどでノートの説明会を行っています。
「私を知ってっちゃノート」は、その名の通り、私のことを知ってもらうためのノート。認知症になっても自分らしく、希望を持って暮らし続けることができるように、自分のことを記しておくノートです。書くのは、おもに認知症の方や支えるご家族、支援する介護スタッフの方など。書き方の見本に沿って、安心できる場所や頼りにしている人、好きなことや苦手な食べ物、今一番やりたいこと、もしもの時の病気の告知方法や、判断能力が低下した時にどうしてほしいか、など自分の「思い」も記入します。
このほか、幼い頃の思い出や学校のことなど、生活史も書き込みます。特に大事なのは、職業を書いておくこと。長年の仕事で身に付いた癖や習慣が、認知症になった時の不可解な行動に表れることもあるからだそうです。ノートに書いた情報は、認知症の方を支える周囲の人の声かけやケアの種として役立ちます。例えば、苦手な食べ物を知っていれば、出さないように配慮もできます。また、「自治会の役員をなさっていたんですね」など、昔のことを話題に話しかけると、認知症によって言葉が出にくくなった時でも、表情が明るくなったり、「私のことをよく知っとうね」とうれしそうにしたりすることもあるそうです。
「大切なのは、相手に関心を持って、ちゃんと聞くこと。認知症を正しく理解すると同時に、その人がどうやって生きてきたかを知るだけで、関わり方も変わりますし、本人も穏やかに過ごせるんです。知ってもらっているだけで、安心できるから…」という、ノートづくりに携わった看護師さんの言葉が胸に残りました。
いかがでしたか。
ノートを作成することで、「その人らしさ」を尊重したケアにつながるんですね。人となりや生活史を理解することで、不可解だった行動の理由が理解でき、介護する側にも心にゆとりが生まれます。そこから互いに尊重し合い、安心して暮らせる「安らぐまち」の実現へとつなげていきたいですね。
では、また。



