八幡西区の大原小学校では、五年生の理科の学習で、メダカの出前授業が行われています。
ちょっと教室の様子を見てみましょう。子どもたちが顕微鏡をのぞき込み、はずんだ声を上げています。
「うわぁ、すごい! 心臓が動いてる」
「目が黒くなってきた!」
「しっぽが見えるよ!」
顕微鏡で見ているのは、メダカの卵です。当日の朝に受精したものから十日目までを順番に並べ、どんな変化が起こっているのか観察しています。一ミリという小さい世界の中で、心臓が脈打ち、血液が流れ、どんどん形を変えながら命が育っていく様子に、みんな夢中です。十日目の卵が孵化してメダカが誕生すると、目を輝かせて喜びます。
授業を担当しているのは、「メダカ博士」と呼ばれる妙見博士さんです。定年退職後にメダカの飼育をするようになり、その魅力に引き込まれ、豊富な知識を身に付けてきました。十年ほど前から依頼を受け、いくつかの小学校で出前授業をしています。
妙見さんは授業の初めに、「野生のメダカは絶滅危惧種になっていることを、皆さんは知っていますか?」と語りかけます。人間の生活によって水環境が悪くなり、メダカが少なくなったことや、メダカの育て方などを丁寧に説明します。
顕微鏡で観察する卵は、妙見さんの自宅で育てたメダカが産んだものです。当日に受精卵ができるように、一年前から準備してきました。子どもたちに卵を直接触ってもらい、命を肌で感じる体験も大事にしています。
授業を受けた子どもたちは、「自然を守っていきたいです」「命はかけがえのないものだと気づきました」「姿や形が違うだけで、メダカも人間も同じだと思いました」「生き物を守って、愛していきたいです」など、たくさんの声を聞かせてくれました。
妙見さんは言います。
「メダカも私たちと同じ地球に暮らす仲間です。身近な自然環境を守ることや命の大切さを、子どもたちに伝えていければと思っています。」
いかがでしたか。
その後、子どもたちは校庭で見つけた昆虫をかわいがったり、友達に温かく接するようになったり、さまざまな変化が見られるそうです。
すべての生き物にかけがえのない命があり、大切にしていこうという思いが、日々の暮らしの中でも育まれています。
では、また。



