人権を考える5分間のラジオ番組「明日への伝言板」

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明日への伝言板試聴コーナー

  • 2025年11月27日(木)放送
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  • 人が人を思うとき

岡澤 アキラ

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人が人を思うとき

 今日は、福岡法務局と福岡県人権擁護委員連合会主催の第四十三回全国中学生人権作文コンテスト福岡県大会で最優秀賞を受賞した、北九州市の中学三年生、安田悠真さんの作文『人が人を思うとき』を紹介します。この作文は、一部省略して朗読します。

 僕は少しの間、学校に行けなくなったことがある。始まりは、同級生のささいなからかいだった。当時の僕は、からかいを受けてもうまく対処できなかった。自分を丸ごと否定されたような気がしたからだ。僕の何がいけないんだろう。どこがおかしかったんだろう。この時の僕は、暗い森の中に迷いこんで、出口を見失ったような気持ちだった。何も感じない、カラカラの乾いた心を自覚したまま、学校へ行けない日が続いた。
 そんなある日、夜中に携帯電話が鳴った。みると、一通のメールが届いていた。小学校から仲良くしていた友達だ。
「大丈夫。」
 たった一言だった。僕は困惑した。「大丈夫?」って聞きたかったのかな。でも、?マークがついていない。何かあったのだろうか。気が付いたら、友達のことばかり考えていた。いつもの明るい笑顔。冗談を言い合って、お腹がよじれるほど笑った放課後。ほんの数日前のことなのに、何もかもが懐かしく思えた。友達に会いたい。鼻の奥がツンとして、涙が落ちそうになった。この時やっと僕は気づいた。あのメールの「大丈夫」は、僕に、一人ぼっちじゃないこと、仲間が寄り添ってくれていることを伝えていたのだ。僕はぼろぼろ泣いた。そうして泣くだけ泣いたら、学校へ行く勇気がわいてきた。
 次の日、僕は早めに登校して、友達が来るのを待った。そして、
「昨日はメールありがとう。」
と伝えた。友達は、はにかんだような笑顔を見せて、おう、とだけ言った。僕は、仲間という光に導かれて、暗い森から抜け出すことができた。
 人が人を思うとき、その瞬間が、温かさに包まれていてほしいと思う。あの「大丈夫」のメッセージは間違いなく、相手を思う温かさに満ち溢れていた。温もりを持って人を思うことの大切さに気づかせてくれた友達を、僕は心から尊敬している。
 僕もいつか、友達のようになりたい。悩みを抱えている人へ、温かい言葉を伝えることができるようになりたい。

 いかがでしたか。
 人を思い、寄り添う気持ちが届く言葉。それはときに、誰かを導く一筋の光になるのかもしれませんね。
 では、また。

▶作文の全文はこちら(PDF)