北九州イクボス同盟

今こそイクボス

企業インタビュー

光和精鉱株式会社

トップと話しやすい職場風土をつくり、チーム力を高めて、働き方改革を推進

 社長が率先してイクボスとなり、風通しのよい組織づくりを進めてきた光和精鉱株式会社。第14回北九州市女性活躍・ワークライフバランス表彰では、市長賞を受賞しました。コミュニケーションを大切にした数々の取組は、働き方改革推進の土台となり、ものづくり企業の命綱であるリスク管理にも直結しています。

情報を共有し、リスク管理ができるチームに

(代表取締役社長 平嶋 直樹さん)

 私の役目は、働く人を元気にして、一人ひとりの潜在能力を引き出すトリガーになることだと思っています。企業が成長するためには、従業員の皆さんに力を発揮してもらい、チーム力を高めていかなければなりません。そう考えてやってきたことが、自然にイクボスの取組につながりました。
  弊社では、産業廃棄物の処理をして資源化する事業をしています。企業なので収益はもちろん大事ですが、それ以上に重視しているのは「安全・防災」です。安全な職場づくりに、コミュニケーションは欠かせません。日頃から情報を共有し、問題が小さいうちに解決すれば、大きなトラブルも未然に防ぐことができます。
  経営者としては、悪い情報ほど早く知らせてほしいのですが、本人はあまり言いたくないですよね(笑)。リスク管理の観点からも、誰もが声を上げやすい人間関係をつくり、チームで知恵を出し合い、必要に応じて迅速にトップが対処できる体制が重要だと考えています。

何でも話せる風通しのよい組織づくり

 2015年に日本製鉄から弊社に着任したとき、すぐに実施したのが従業員との懇親会でした。まずはお互いに知り合うことが大事だと思い、毎回3~4人ずつ集めて開催しました。「人の悪口以外は何でも聞きます。会社への不満、仕事や家庭の悩みなど、言える人は何でも言ってください」と伝え、希望制にしたところ、子どものいる女性従業員も含めて全員が参加してくれました。思った以上に好評で、コロナ禍になるまで毎年続けてきました。
 また、2016年からは、会社として30年ぶりに家族工場見学を行いました。バスを手配して1回100人ほどのご家族を招待し、製鉄所構内の職場を見ていただきました。ご家族からはとても喜ばれ、従業員が清掃を頑張るという相乗効果もありました。

対話から生まれた女性社員の登用制度

 懇親会で女性従業員の話を聞けたことは、女性活躍を推進するきっかけになりました。男性中心の業界なので、当時の女性従業員は、非正規採用の派遣社員がほとんど。女性たちと話をするまで、私はご自身の事情で派遣社員を選んでいると勘違いしていたんです。実際には、会社側に正社員登用のシステムがないため、無理だと思われていたことがわかりました。
 派遣社員の方々は、産業廃棄物の書類作成や経理業務など専門的な仕事を担当し、いなくてはならない人ばかりでした。ご本人の希望に沿い、会社としても長く勤めていただくために、2018年には9人の派遣社員の女性を全員正社員に登用しました。
 その後も、希望する方は正社員に登用し、女性管理職も誕生しました。新卒採用も積極的に行い、事務職から技術職まで入社希望者が増えてきました。女性社員が増えたので、トイレや更衣室などハード面の整備も行いました。

働き方を変えるためには、まずやってみることが大事

 2018年に働き方改革法案ができてからは、長時間労働の削減に取り組んできました。残業を減らすために、19時までのパソコン利用制限を私が提案したときは、皆さんから「えー!?」と言われたんですが、どうしても難しい場合は1~3時間の猶予を認めることにして、試しにやってみたんです。結果的には、工夫して計画的に仕事をするようになり、生産性は上がってきました。
 産業廃棄物の窓口時間も短縮し、6時から18時の受付を、8時半から17時に変更しました。「お客さんから文句を言われます」「売上が落ちます」という意見はありましたが、予想されるリスクを挙げたうえで、まずはトライアルで実施。お客さまには丁寧に説明し、不都合があれば言っていただくことを徹底しました。実際には心配したようなクレームはなく、売上に影響もなかったですね。

人生を豊かにする職場でありたい

 働き方改革は法律の関係でやらざるをえないところもあり、リスクは承知のうえで、トップダウンで進めました。こうした改革ができたのも、言いたいことが言える関係があってこそ。私は、反対意見は出たほうがいいと考えています。課題をみんなで考え、解決していくことが大事だと思うのです。
 昨年11月には会社としてSDGs宣言を行い、SDGs推進委員会を社内で立ち上げました。委員会は各職場から若手が集まり、ボトムアップで取り組んでいるところです。
 今後も、従業員の皆さんが活躍できるよう、女性のキャリア形成もさらに進めていきたいと考えています。昇格を躊躇する方もいますが、大変なだけではなく、そのポジションになって初めてわかることも多いのでチャレンジしてほしいですね。いろいろな仕事経験を通して、「人生を豊かにしてほしい」というのが私の願いです。

社員からのコメント

(左から日野さん、髙辻さん)

総務部総務人事課  髙辻 美幸さん

 派遣社員として長く勤めた後、正社員になる機会をいただき、ありがたかったです。今では、参加できる会議も増えて意見も言えるようになり、仕事の幅が広がりました。社長は意見を聞いてくれるだけではなく、できることはすぐに改善してくれる方です。何でも相談しやすく、安心して働ける職場です。

業務部物流管理課 日野 真梨奈さん

 私は1年間の派遣社員を経て、正社員になりました。面接時に「管理職をやってみたいと思いますか?」と訊かれ、女性が活躍できる可能性を感じました。狭かった更衣室も広くなって快適です。髙辻さんと一緒にSDGs推進委員をしているので、自分を活かして活動していこうと思います。

【企業プロフィール】

企業名:光和精鉱株式会社
代表者:代表取締役社長   平嶋 直樹
所在地:北九州市戸畑区大字中原字先ノ浜46-93
業種:廃棄物処理業
創業:1961年2月
従業員数:161人(うち女性従業員数24名)
企業HP:https://kowa-seiko.co.jp/