北九州イクボス同盟

今こそイクボス

企業インタビュー

株式会社ハピクロ

ライフスタイルに合わせて働ける環境をつくり、新しいビジネスモデルに

 八幡西区で「にじいろのはな保育園」を運営している株式会社ハピクロ。「子どもにも保護者にも職員にも寄り添う園」を理念に、すべての職員がライフスタイルに合わせて快適に働ける職場づくりを実践してきました。ITシステムの積極的な導入によって業務の負担を減らし、他社の課題解決にも活用できる新しいビジネスモデルを発信しています。

代表取締役社長 中田 佳孝さん(右)、園長 吉田 真由美さん(左)

理念を実現するフラットな組織づくり

[中田] 待機児童ゼロと子育て支援を目指して、5年前に起業しました。前職のIT企業で培った知識や経験を生かしながら、保育のプロである園長と一緒に、北九州市認可小規模保育事業所を運営しています。
 当社の理念の根底にあるのは、保育士が生き生きと働ける職場が、安心で質の高い保育を提供できるという考え方です。子ども、保護者、職員みんなの幸せを願い、共通の目的に向かって進んでいける会社づくりをしています。園長を除いて管理職のいないフラットな組織なので、職員同士の上下関係はありません。私自身は裏方だと思っています。
 個々の目標については、3カ月ごとに個人面談でフォローします。外部の研修には積極的に参加し、厚生労働省のキャリアアッププランに沿って全国どこでも通用する資格取得に努めています。

[吉田]私は「園長先生」ではなく「まゆみ先生」と呼ばれています。経験年数は違っても、子どもの前では同じ立場。みんなが主体的に考えて行動し、お互いに協力して保育にあたっています。園長の役割としては、日々のコミュニケーションを通して職員一人ひとりに気を配り、適切なサポートができるよう心がけています。

お互いさまの精神で、気兼ねなく働ける関係

[吉田]当園では20代~50代までの職員(保育士・調理師)が働いています。子育てや介護など家庭の状況に合わせて勤務時間を設定し、柔軟にシフトを組んでいます。育児休暇の取得率は100%、子どもが2歳以上でも継続は可能です。学校行事などによる休暇はいつでも取得できます。
 母子登園を推進しており、現在3人の職員が子どもと一緒に通っています。0歳児もいるので、授乳も勤務時間に含めています。子どもの成長を見守りながら働けますし、「他の保育士を頼ることもできて、とても安心感がある」と喜ばれますね。子育て中の保育士がいると、保護者の方たちも悩みを相談しやすいようです。

 一般的に保育業界では行事前の残業が多いのですが、うちでは原則禁止です。残業が必要なときは、事前に申請してもらっています。シフト時間とカードキーが連動していて、早く来ても鍵が開かないし、残業すると鍵が閉まらなくなるんですよ。日頃からお互いさまの精神を大切に、職員間のワークシェアを徹底しているので、残業や仕事の持ち帰りはありませんね。

IT技術を活用して職員の負担を軽減する

[中田]保育において安全対策は重要です。特に乳幼児は睡眠中に死亡事故が起こることがあるため、0歳児は5分に1回、1歳児は10分に1回、お昼寝中の姿勢や呼吸の様子を確認し、記録することが義務付けられています。この見守り業務をサポートするために、システムをメーカーと共同開発しました。マットに呼吸の振動を検知するセンサーが入っていて、タブレットのモニターに映し出されるようになっています。浅くてわかりにくい赤ちゃんの呼吸を、人と機器でダブルチェックできるため、保育士の精神的な負担がかなり軽くなりました。

 当社では、ITを活用してさまざまな事業課題を解決し、培った技術を他の園や業種にも提供する事業を展開しています。その中の一つが、食品の衛生管理です。給食を担当する職員の負担を軽減するために、手間暇かかる帳票作成をタブレットで簡単にできるシステムをつくり、コスト削減にもつなげてきました。この実績をもとに開発したプログラムが、地域の飲食店や食品製造業にも導入されています。

課題解決のノウハウを地域社会に広げていく 

[中田]私たちが自社の取組をオープンにしているのは、働きやすい企業が増えて欲しいという思いがあるから。北九州イクボス同盟に加盟したり、福岡県子育て応援宣言企業に登録したりしているのも、こうした考えに基づいています。
 今の時代、ものすごいスピードで技術やコミュニケーションの手法が変化しています。それに合わせた仕組みをつくり、みんなが快適に働ける環境を広げていきたい。保育園や幼稚園ができたことは、ITに慣れていない中小企業や店舗でも活用できるはずです。ありがたいことに、市主催のフォーラムで事例紹介をしたり、DX推進のセミナー講師をしたりする機会も増えてきました。今年9月には、幼児向けの教育支援事業を立ち上げ、各園の理念に合わせた教育プログラムの導入や運営のサポートもしています。

 ITは人を活かすためのツールです。常に「人に寄り添う」視点を持って上手く使いながら、これからもより良い職場環境をつくっていきたいと思っています。培った経験や技術を地域の課題解決にも役立て、好循環を広げていきたいですね。

社員からのコメント

保育士 西屋 美奈さん

 大学卒業後に入職し、1年間働いた後に産休と育休を取得しました。現在は2歳3カ月の子どもと一緒に登園しています。自分の子どもの成長を近くで見られるのは、ありがたいですね。職員は優しい人ばかりで何でも相談しやすく、子どもが風邪をひいたときにもすぐに対応できるので助かっています。必要なときは気兼ねなく休めますし、残業や持ち帰りの仕事もありません。子どもと保護者だけでなく、保育士にも温かく寄り添ってくれるので、とても働きやすいです。

【企業プロフィール】

企業名:株式会社ハピクロ
代表者:代表取締役 社長 中田 佳孝
所在地:北九州市八幡西区八千代町3-16
業種:児童福祉事業、情報通信業
創業:2017年6月
従業員数:19人(うち女性18人)
企業HP:https://hapikuro.com/