北九州イクボス同盟

今こそイクボス

企業インタビュー

株式会社安川電機

ワーク・ライフ・バランスが充実し、働きがいのある会社を目指して

 世界30カ国にビジネス拠点を持ち、モーションコントロール(ACサーボ・インバータ)、ロボット、システムエンジニアリング事業をグローバルに拡大している株式会社安川電機。管理部門にはダイバーシティを推進する専門部署があり、多様な人材の活躍、ワーク・ライフ・バランスの推進、イクボスの育成などに取り組み、総合的な活力を生み出しています。
 今回は、安川電機のイクボスのお一人である上席執行役員 環境・社会システム事業部長 山田 達哉さんに話を伺ってきました。

(上席執行役員 環境・社会システム事業部長 山田 達哉さん)

社長直轄でダイバーシティ推進を開始(※1)

 イクボスの取組を始めたのは、前社長の津田純嗣(現会長)が2014年にダイバーシティの推進部門を立ち上げたことがきっかけです。この人材多様性推進室の室長を津田が自ら務め、多様な人材の活躍や働き方改革に取り組んできました。こうした動きのなかで、浮かび上がってきたのが管理職の課題でした。
 当社の管理職は若い頃から仕事一筋の人が多く、育児や介護をしている部下への配慮はしているものの、自分とは違う環境下にある部下の育成に慣れていない人も多い状況でした。一人ひとりを活かすためには、管理職が部下の人生を応援する大きな視点を持つことが必要です。その重要性を改めて認識したことが、イクボスの取組につながりました。
 2016年には全国組織のイクボス企業同盟に加盟し、翌年設立された北九州イクボス同盟にも参加。社内では「イクボス座談会」を定期的に開催してきました。私もイクボスの一人として参加し、部長たちと、部下の育成や日頃の悩みなどについて意見を交わしています。

(※1)現在は総務・リスクマネジメント本部付

イクボスの本質を培ったドイツ駐在

 私自身のイクボスの本質である「多様性の受容」と「ワーク・ライフ・バランスの充実」は、海外駐在で培われました。30代のときドイツの欧州支社で営業技術者(後に管理者)として8年間務め、帰国後に管理職となり、その後アメリカに2年間駐在しました。
  ドイツでは欧州全域への製品拡販に携わり、各国の代理店や顧客を通して異なる習慣や文化に触れました。例えばドイツ人とイタリア人も全然違いますし、多様性を痛感する日々でしたね。女性の管理職と一緒に仕事をしたことも、貴重な経験でした。
  駐在して間もない頃の話です。50代のドイツ人が担当するお客さまに問題が発生し、その人が対応していたのですが、5時になると「今日は奥さんと食事の約束があるから」と、中途半端な状態で帰宅しようとしたのです。日本ではあり得ないことです。つたない英語で必死に説得し、何とか翌日の段取りを整えてから帰ってもらいました。25年経ちますが、喧々諤々と議論したことは鮮明に覚えています。海外では、文化や価値観が違う人とも理解し合うコミュニケーション力を鍛えられました。
  ドイツには妻と子ども3人(1・3・5歳)を帯同し、生活も大きく変化しました。以前は夜10時まで残業し、家事は妻に任せきりでしたが、ドイツでは一緒に夕食をとり、子どもをお風呂に入れる毎日。週末は家族と外出し、夏は長期休暇を取って観光地を巡りました。仕事で実績を上げられたのは、充実した家庭生活のおかげだと思っています。

働きがいのある職場をつくるさまざまな取組

 当社では、ワーク・ライフ・バランスの充実により働きがいが生まれ、生産性が向上する好循環を目指しています。一人ひとりの意見を反映できるよう、2016年から毎月アンケートを取って社員の声を聞いています。働きがいが低下している場合は配置転換をすることもあり、人材を活かす取組の一つになっています。
 私が特に力を入れているのは、5連休の取得です。計画的な長期休暇によって生活が充実するだけではなく、周囲と協力した業務の遂行やそのための調整も行えるようになると考えているからです。取得率は100%となりましたが、まだ期末に慌てて取得する人も見受けられるため、計画的な実行を促していきたいですね。
 男性の育児休業の取得率は2020年度11.8%で、全国平均には至りませんが、5年前と比べると4倍になりました。平均取得日数は68日です。類似の配偶者出産休暇(5日)の取得率は、6割を超えています。
 目下の課題は、女性管理職の比率が低いことです。当社はあらゆる職種で女性が活躍していますが、管理職は少ないため、比率向上に努めていきます。

お客さまを勝たせる企業であるために

 当社の社長・小笠原浩は、「BtoBビジネスである安川電機の仕事は、お客さまに利益を生んでいただき、お客さまを勝たせることだ」と言っています。現在の海外売上比率は7割近くを占めており、海外の多様な顧客ニーズをしっかり把握しないと、グローバルな事業はできません。やはり多様性の理解は、大事なキーワードなのです。
 会社は今後、より成果を重視する人事制度への移行や、業務改革などさまざまな経営課題に挑んでいきます。以前より進めていたDXやテレワークもコロナ禍で加速しています。改革を着実に進め、会社の成長と社員の幸せが直結する組織をつくるために、イクボスの果たす役割は重要です。社内のイクボスたちと一緒に、部下の働きがいの向上に努め、生産性をアップするとともに、次世代の育成にも取り組んでいきたいですね。

社員からのコメント

環境・社会システム事業部 生産技術課(兼務:ダイバーシティ推進者)
武田 孟さん

子どもが生まれるときに、配偶者出産休暇を取得しました。配偶者が出産する前後の8週間以内に、5日間の有給休暇を取れる制度で、2人の子どもでそれぞれ利用しています。職場の理解があり、遠慮せずに上司に言える雰囲気ですね。1回目のときは毎月のルーティンがあったので業務の引継ぎをしましたが、2回目は業務内容が変わり、特に引き継ぎは必要なかったです。何か問題があれば、連絡を取れるようにしておきました。周囲で育児休業を取得する男性も増えており、制度の利用が徐々に浸透してきていると感じています。

【企業プロフィール】

企業名:株式会社安川電機
    YASKAWA Electric Corporation
代表者:代表取締役社長 小笠原 浩
所在地:北九州市八幡西区黒崎城石2-1
業種:製造業
創業:1915年(大正4年)7月16日
従業員数:連結14,892名 ※臨時社員含む
     2021年2月28日現在(単体:女性割合 約12%)
企業HP:https://www.yaskawa.co.jp/