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釜石市の復興を支援する北九州市職員

竹内邦彦復興支援統括官写真

北九州市・釜石デスク

竹内邦彦 復興支援統括官

 本市は、震災発生直後から職員を釜石市へ派遣し、復興支援を行ってきました。職員の派遣は、保健師に始まり、当初は避難所の運営や市民課・税務課の窓口業務などを行う事務職員が中心でしたが、復興計画が動き出すにつれ、復興工事に関わる技術職員中心へと移行していきました。

 現在、釜石市には10人の職員が派遣されており、ほとんどの職員が被災者と同じ仮設住宅で暮らしています。同じ環境で生活し、被災者の置かれている状況を共有することで、職員たちの意識向上にもつながっていると思います。

 私の仕事は、復興の状況や釜石市の支援ニーズを把握し、両市の関係部局との調整や派遣職員のサポートなどを行っています。私たちの仕事が少しでも釜石市の早期復興の一助になればと思い、職員一丸となって日々業務に取り組んでいます。

瀧口庸司係長写真

建設部都市計画課都市計画係

 瀧口庸司 係長

 私は、平成27年4月から派遣され、都市計画決定の変更と橋・道路および公園・広場等の施工監理などを主に行っています。現在は、まちににぎわいを取り戻すためのフロントプロジェクトで誘致した大型商業施設から国道283号線につながる橋の建設を担当しています。この橋は、商業施設に集まった人たちの避難路としての機能を併せ持ち、28年度中に完成させる予定です。

 釜石への派遣を希望した理由は、釜石市は技術職が不足していると聞き、自分の経験を生かせると思ったことと、ボランティア活動をしたいという理由もありました。今は、月2回ほど釜石市社会福祉協議会のボランティアに参加し、仮設住宅の掃除や、仮設住宅から復興公営住宅へ引っ越しする人の手伝いなどをしています。私も仮設住宅暮らしですが、集会所でお茶や菓子を持ち寄って集う会「お茶っこ」に参加し、釜石の人の温かさを感じています。

内村英樹係長写真

復興推進本部都市整備推進室都市拠点復興係

 内村英樹 係長

 私は、釜石市中心部で用地買収を行っています。

 中心部の地区では、市がすべての土地を一度買収し、盛り土などの造成をした後、再分譲するという他の地区であまり行われていない方式が採られています。平成26年4月から用地買収を始め、現在までに約8割の買収が終わりました。残りは、亡くなった土地所有者の相続人が多く、相続人調査や権利調整に時間を要したり、かさ上げ工事期間中の仮住居や仮営業を行う場所を探したりと、いろいろと大変ですが、十分に説明し、納得していただいたうえで契約を行うよう努めています。

 釜石への派遣希望は、震災発生当時、区役所ロビーにあるテレビで津波の生中継映像をたまたま目にして強い衝撃を受け、用地買収の仕事の経験を復興に生かせないかと思ったことがきっかけです。とはいえ、こちらへ来るまでは正直迷いもありましたが、今では本当に来て良かったと思っています。

長岡睦美主査写真

復興推進本部都市整備推進室区画整理係

 長岡睦美 主査

 私は、区画整理のための物件移転補償交渉をしています。

 担当している地区では、平地のほとんどが津波で壊滅的な被害を受けました。現在は、人が住めない危険地区での公共施設の再整備や、土地を4・5mかさ上げする工事を含む区画整理事業を進めています。

 対象戸数が多いため、私が赴任した平成26年12月からの1年間だけでも、約100件の物件移転補償契約に関わりました。釜石の皆さんはとても好意的で、「他都市から応援に来てくれているのだから協力しよう」と言ってくれます。これも前任の職員が信頼関係を築いてくれたおかげです。

 北九州市役所では卓球部に所属しており、釜石市に来てすぐに「試合に出てくれないか」と頼まれ出場したところ、団体戦で優勝することができました。以来、釜石でも卓球を続けていますが、地権者や釜石市職員と早く打ち解けられるきっかけとなり、卓球を通じた多くの人とのつながりにとても助けられています。

猪股博之主任写真

復興推進本部都市整備推進室都市拠点復興係

 猪股博之 主任

 私は、岩手県大船渡市出身で、実際に東日本大震災を経験し、自宅も津波で床下まで浸水しました。その後、平成24年に北九州市役所に転職し、震災の経験を少しでも生かせればと思い27年4月から釜石市に来ています。

 釜石では、市の中心部における道路のかさ上げや整備、住宅・商業地のかさ上げ工事の発注などを担当しています。特に、市街地の東側は7mもかさ上げをするので工事の規模も大きく他の機関や工事関係者との調整などに苦労しています。また、工事の発注は順調に進みましたが、人手不足が深刻で工事の進捗はなかなか思うようにいきません。このような状況のため、いまだに中心部の道路でも水が溜まったりする箇所も多いことから、社会活動に支障が生じることのないように早く整備を進めていきたいです。

 北九州市へは単身赴任でしたが、今は大船渡市の自宅から通勤できるので、休日に家族と過ごせるのが息抜きになっています。

末永芳治主査写真

産業振興部水産課基盤整備係

 末永芳治 主査

 私は、平成24年に水産関係の第一陣として派遣され、今回が2回目の派遣です。1回目の後、やり残したことがあると感じ、もう一度行きたいと思っていました。前回の派遣から2年経ちましたが、再び釜石の地を目にした時は、思っていた以上に復興が進んでいないと感じました。

 今は、漁港と防潮堤災害復旧事業を担当しています。釜石市では職員が少ないため設計から現場監督まで、あらゆる業務を行っています。

 災害復旧事業の課題の一つは、資材の供給や作業員の確保が思うようにいかず、工期が延びてしまうことですが、漁港の災害復旧については、今年度でめどが立ちそうな状況です。こちらでの仕事は、やった分だけ直接市民の役に立っているという実感があり、とてもやりがいを感じられます。ここ1~2年が復興のピークなので、今しか出来ない仕事をやり遂げてから帰りたいと思っています。

藤本敦主査写真

復興推進本部都市整備推進室漁業集落復興係

 藤本敦 主査

 私は、平成26年4月から釜石に来ています。仕事は主に被災地区における造成工事の施工監理や地元調整の窓口業務を担当しています。市の中心部から離れた所での復興公営住宅や自力再建者が住宅建築を行うための土地の造成や被災跡地の利活用のための工事を進めています。

 担当地区は古くからの漁業集落で、戸建て住宅に住んでいた人が多く集合住宅があまり馴染まないこともあり、戸建ての復興公営住宅建設が多い地区です。作業員不足などで工事が予定より遅れている地区もありますが、住民説明会では、その状況を理解していただくことができ、協力的な姿勢に感動しました。

 北九州に妻と3人の子どもを残して来ましたが、こちらに来てみると他では経験できないことが多く、もし今後どこかで災害が起こったときには、きっとこの経験が生かせると思って取り組んでいます。

中野功治主任写真

復興推進本部復興住宅整備室

 中野功治 主任

 私は、平成26年4月から派遣され、復興公営住宅の建設工事の監理を行っています。阪神大震災の際は避難所運営のボランティアを、また釜石派遣の前には、震災発生直後の福島へ支援職員として派遣された経験があり、また機会があれば支援活動に行きたいと考えていましたので、今回はこれまでの経験が生かせるのではないかとの思いから釜石に来ました。

 写真の建設中の復興公営住宅は、6階建てで44戸の予定です。ここは建物4棟が外回りの廊下でつながっている珍しい構造で、住居も単身用と家族用が混在しています。これは住民による単身世帯の見守りの機会を増やす狙いがあります。また、鉄筋コンクリートではなく鉄骨構造となっているのは、揺れに強いことなどが背景にあります。

 建設資材や作業員の不足によりここも工期が遅れています。私も仮設住宅に住んでいて辛さが分かるだけに、一日も早く完成させたいと思います。

復興に向けて

 大震災から5年が経過する今、「釜石市復興まちづくり基本計画」に掲げられた施策の9割以上が、事業実施中という進捗状況にあります。

 しかし、被災者が入居する復興住宅の完成は4割程度で、いまだに仮設住宅での不自由な暮らしを余儀なくされている人たちも多く存在します。復興は道半ばであり、今後も被災地の復興に向けて継続的な支援が必要な状況です。

写真:現地で頑張る北九州市職員

野田武則 釜石市長写真
野田武則 釜石市長

釜石市長のメッセージ

 北九州市民の皆様には震災直後からこれまで、当市の復興に多大なるご尽力をいただき、釜石市民を代表して心より感謝を申し上げます。

 震災から間もなく5年が経過しようとしておりますが、住まい・暮らしの再建は道半ばであり、一刻も早く安心した日常が取り戻せるよう、生活と暮らしの再建を最優先課題として取り組んでおります。

 このような中、当市は平成31年に日本で開催されるラグビーワールドカップの試合会場地の一つに選定され、そしてまた近代製鉄の発祥を物語る橋野鉄鉱山がユネスコ文化遺産に登録されるなど、将来のまちづくりにつながる明るい話題もありました。復興への取り組みを着実に形づくっていくとともに、釡石がこれまでに培ってきた歴史・文化を再認識し、釡石らしい品格を追求しながら新しいまちづくりを進め、一日でも早く復興宣言が出せるよう全力を傾注して市政運営を行ってまいります。

写真:昨年3月29日に就航したFDA機 復興工事の様子(釜石市)

FDA乗継便で行く被災地視察・世界文化遺産見学ツアー

 フジドリームエアラインズ(FDA)の就航1周年と北九州空港開港10周年を記念し、FDAの全面協力により、被災地視察ツアーを開催します。

 東北への行き来が便利になった北九州空港発着のFDA乗り継ぎ便(名古屋小牧空港乗り継ぎ花巻空港着発)を利用し、釜石市を訪問します。現地では、釜石市に派遣中の本市職員が被災地を案内し、世界文化遺産に登録された「橋野鉄鉱山・高炉跡」を見学します。

 出発は3月29日(火)。1泊2日、4食付き。対象 小学生以上でグループ参加(2~6人)できる人(小・中学生は保護者同伴)。定員、定数 35人。料金、費用 一般1万5000円、小学生1万2000円。申し込みは往復はがき(1グループだけ)に基本事項を書いて3月10日までに交通局旅行センター(〒803―8510 小倉北区大手町1―1、TEL093・582・3700)へ。

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