特集世界文化遺産に推薦

建設中の東田第一高炉写真
▲明治33(1900)年、建設中の東田第一高炉を伊藤博文公(初代内閣総理大臣)も視察に訪れた

日本の産業革命を支えた遺産群

 政府は9月、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」を今年度の世界文化遺産推薦候補に決定しました。これは、8県11市の28資産で構成された産業に関する遺産群で、本市と中間市にある八幡製鐵所関連4施設も含まれています。今回はこの産業遺産の概要や、わが国の急速な産業化において八幡製鐵所が果たしてきた役割などについて特集します。

日本の産業化の歴史を世界文化遺産に

 世界遺産は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が未来へと引き継いでいく普遍的な価値があると認めた遺産です。日本では現在17件が登録されています。9月、今年度の世界文化遺産への推薦候補に「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が選ばれました。

 日本は幕末から明治後期までのわずか半世紀で、産業構造が急速に変化しました。短期間で、製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業など重工業中心の産業国家へと変貌したさまは、日本の産業革命ともいえるものです。「明治日本の産業革命遺産」は、近代製鉄発祥の証拠である橋野高炉跡(岩手県釜石市)や、日本最大の石炭産出量を誇った三池炭鉱(大牟田市、熊本県荒尾市)など、日本の産業化の歴史を今に伝える28資産で構成されています。北九州地域では、八幡製鐵所関連資産の「旧本事務所」「修繕工場」「旧鍛冶工場」「遠賀川水源地ポンプ室」の4施設が含まれています。

 これらの資産の中には、100年以上も経過した今も現役で稼働している工場施設などがあります。稼働している施設の世界文化遺産登録は日本では例が無く、世界でも珍しい事例です。

 また、地理的に分散した関連資産を一つのまとまりとして登録を目指す「シリアルノミネーション」であることも特徴です。

世界文化遺産登録までの流れ

平成20年10月 世界遺産登録推進
協議会発足
平成21年1月 ユネスコ世界遺産
暫定リスト入り
平成25年9月 国内推薦候補に
決定
平成26年1月末 ユネスコに推薦書
を提出
平成26年8~9月頃 ユネスコの諮問機関
による現地調査
平成27年6月頃 ユネスコによる登録
の可否決定

八幡製鐵所が果たしてきた役割

 西欧では200~300年かかったといわれる産業の近代化を、日本は50年ほどで成し遂げ、その過程において八幡製鐵所は大きな役割を果たしました。

 明治期、産業の近代化に伴い全国で鉄鋼の需要が高まりました。しかし、国内には、鉱石原料から鋼の製品までを一貫して製造できる銑鋼(せんこう)一貫の施設は無く、輸入に頼るしかありませんでした。そこで政府は銑鋼一貫製鉄所の設立を決め、筑豊炭田に近いことや輸送、水利の便に優れていること、地元の熱心な誘致活動などもあり、旧八幡村を建設の地に選びました。

 明治34(1901)年に操業を開始した八幡製鐵所は、さまざまなトラブルを乗り越え、高炉の改良を重ね、同43年には国内鋼材生産量の9割を賄うまでになりました。アジアで初めて成功した銑鋼一貫の近代製鉄所として日本の発展に大きく貢献し、後の北九州工業地帯の基礎が形成されたのです。

ものづくりの系譜を未来へと引き継ぐ

 世界文化遺産登録の可否は、再来年夏のユネスコ世界遺産委員会で決定されます。登録されれば、本市の魅力を世界に発信することになります。それは、「ものづくりのまち」としての誇りであると同時に、地域活性化にもつながります。ものづくりの系譜を受け継いできたまちの歴史を、私たちの未来へと引き継いでいきましょう。

明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域

~八幡製鐵所関連4施設(いずれも企業敷地内にあるため非公開)

旧本事務所写真

◆旧本事務所(八幡東区)

明治32年に建設された日本と西欧の建築様式を併せ持った建物。長官室、顧問技師室、外国人技師室などがある製鐵所の中核施設だった。

旧鍛冶工場写真

◆旧鍛冶工場(八幡東区)

明治33年に建設されたドイツ式の丸屋根が特徴の鉄骨建築物で、製鐵所建設に必要な大型の工具などを造っていた。

修繕工場写真

◆修繕工場(八幡東区)※稼働中

明治33年、ドイツの製鉄会社によって建設された鉄骨建築物。現存する日本で最も古い鉄骨構造の建物で、現在も修理工場として使用されている。

遠賀川水源地ポンプ室写真

◆遠賀川水源地ポンプ室(中間市)※稼働中

明治43年、鋼材生産量をそれまでの2倍とする第一期拡張工事に伴い、必要となった大量の水を遠賀川から製鐵所まで送るため造られた。

写真提供:新日鐵住金(株)八幡製鐵所

その他の構成資産

山口県萩市〈萩城下町、萩反射炉、恵美須ヶ鼻造船所跡、大板山たたら製鉄遺跡、松下村塾〉
鹿児島市〈旧集成館、旧集成館機械工場、旧鹿児島紡績所技師館〉
佐賀市〈三重津海軍所跡〉
静岡県伊豆の国市〈韮山反射炉〉
岩手県釜石市〈橋野高炉跡及び関連遺跡〉
長崎市〈小菅修船場跡、長崎造船所第三船渠、同 旧木型場、同 ジャイアント・カンチレバークレーン、同 占勝閣、高島炭坑、端島炭坑、旧グラバー住宅〉
福岡県大牟田市〈三池炭鉱 宮原坑、三池港〉
福岡県大牟田市・熊本県荒尾市〈三池炭鉱 万田坑、同 専用鉄道敷跡〉
熊本県宇城市〈三角西(旧)港〉
10
北九州市〈八幡製鐵所 旧本事務所、同修繕工場、同 旧鍛冶工場〉
11
福岡県中間市〈八幡製鐵所 遠賀川水源地ポンプ室〉

【この特集に関する問い合わせ】 総務企画局世界遺産登録推進室 TEL093・582・2922

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