北九州市政だより

NO.1401

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令和4年1月1日号 特集

特集
年初めの一冊
お正月に読みたいおススメの本

 読書は、いつでもどこでも、自分のペースで手軽に楽しめる娯楽の一つです。本市には、中央図書館、子ども図書館、地区図書館をはじめ、文学館、松本清張記念館、漫画ミュージアムなど、図書施設や文化施設が充実しています。

 新春号特集では、図書を専門とするスタッフや学芸員が「年初めにふさわしいおススメの一冊」を選び、皆さんにご紹介します。

中央図書館写真
中央図書館
「建築界のノーベル賞」とも言われる「プリツカー賞」を受賞した建築家・磯崎新氏が設計を手掛けた中央図書館は、半円筒のカマボコ型の屋根を曲げながら空間を展開させたデザインが特徴。映画「図書館戦争」のロケ地にもなりました。

あけましておめでとうございます

北橋健治市長写真

市長からのメッセージ

 あけましておめでとうございます。

 昨年は、新型コロナワクチン接種をはじめとする感染症対策を積極的に進める一方、世界初の同時開催となった「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」や「東アジア文化都市北九州2020▶21」を通じて、本市の存在感を世界に向けて力強く発信できた一年でもありました。

 本年も、新型コロナウイルスの感染拡大防止と地域経済対策の両立に全力で取り組みます。また、新型コロナウイルス感染症収束後の市の成長を見据え、グリーン社会の実現や地方創生、DXの推進等を図り、市民の皆さんのくらしを支えてまいります。

 さて、新春号の特集は「年初めの一冊」です。読書は知識を深めるだけでなく、人生をより深く味わう楽しみを与えてくれます。市内には、気軽に本に触れることのできる施設が充実しています。新しい年の始まりに、新しい本と出会ってみませんか。

北九州市長 北橋 健治

お正月に読みたい
「おススメの一冊」

 本市出身の作家による作品や市が舞台になった作品などから、図書施設や文化施設のスタッフに、自分で読んでみて面白いと思った本を紹介していただきました。市には、森鷗外や林芙美子などの文学者、松本零士、わたせせいぞうなどの漫画家など、ゆかりのある作家が数多くいます。図書施設にある気になる本を探して読んでみませんか。

※漫画「インビンシブル」は漫画ミュージアムで、それ以外の本は中央図書館や各地区図書館などで所蔵しています。図書館で予約が多い場合はすぐに貸し出しできないことがあります。

書籍写真

コンビニ兄弟
-テンダネス門司港こがね村店-

町田そのこ/作
新潮文庫

 門司港を舞台に、コンビニを中心に回る、人々の温かい交流の物語。コンビニは、老若男女分け隔てなく利用する場所の一つです。短編で構成されている本作は、一作ごとに登場人物が変わり、さまざまな世代、さまざまな苦悩がコンビニと関わることによって癒やされていきます。テンダネスというチェーン店名にふさわしく、優しさにあふれた物語です。読み終えた後はきっと誰かに優しくしたくなることでしょう。なじみの地名も数多く出ていて、物語を色鮮やかに彩ってくれます。
※表紙デザインは発行時期によって異なります

三井恵未子さん写真
中央図書館
司書 三井恵未子さん

書籍写真

インナーアース

小森陽一/作
集英社文庫

 このSF小説は、日本海の地下深くに出現した大空洞の地図作りを題材とした物語。会社のモデルになったのは北九州市に本社を構える国内大手の地図製作会社ゼンリン。作中の地図製作会社も北九州にあるため、地元の地名や街が多数登場します。フィクションと分かっていながらも、まるで彼らが現実に存在しているかのように感じられます。また、行き方も対策も分からない前人未到の地底に挑む彼らを通して、地図作りの現場のリアルを知り、読み手は家にいながら地底を探検する感覚を味わえます。読み終えた後は本に登場するゆかりの地に行きたくなる1冊です。

上條ひとみさん写真
中央図書館
司書 上條ひとみさん

書籍写真

ある男

平野啓一郎/作
文春文庫

 作者は八幡西区出身の芥川賞作家。物語は、亡くなった夫が別人だったことが判明し、妻の里枝が弁護士の城戸に調査を依頼することから始まります。夫(ある男)は一体誰だったのか?里枝と城戸、二人の視点で物語が展開し、次第に“ある男”の人生が浮かび上がるミステリー仕立てになっており、物語に一気に引き込まれます。多面的な存在であるはずの人間が、ある一面だけ強調されて語られ、人生を決定づけられてしまう不条理な現実が描かれる一方で、人間の優しさや愛の可能性も感じられる作品です。「私」(自分自身)について考えるきっかけにも。今年、映画化されます。

小野恵さん写真
文学館
学芸員 小野恵さん

書籍写真

時間の習俗

松本清張/作
新潮文庫

 物語は、旧暦元旦の未明、門司の和布刈神社で古式ゆかしく行われる神事の描写で幕を開けます。同じ日の夜、神奈川県の相模湖畔で殺人事件が起こります。しかし、容疑者は“和布刈神事”を拝観し、それをカメラに収めていたというアリバイが…。フィルムトリックを駆使した「完全なアリバイ」に、「点と線」でおなじみの三原警部補と鳥飼刑事のコンビが挑みます。社会派ミステリーブームを巻き起こした名作「点と線」発表の四年後に、本作も雑誌「旅」に連載されました。お正月の休みに、「和布刈」発、ミステリーの旅はいかがでしょうか。

中川里志さん写真
松本清張記念館
学芸担当主任 中川里志さん

書籍写真

インビンシブル

瀬下猛/作
講談社

 この作品は架空のラグビーチーム「北九州小倉ホワイツ」の低迷からの再起を描く作品です。突如現れた謎の助っ人である主人公を軸に繰り広げられる迫力ある展開と熱い人間関係が魅力です。ホームグラウンドとして登場する「ミクニワールドスタジアム北九州」を始め、北九州の街並み・名産が随所に出てくるこの作品は、皆さんも身近に感じることができるのではないかと思います。本作は現在、週刊漫画誌「モーニング」にて連載中。お正月に開催される大学・高校ラグビーの試合ともども、選手たちの白熱した戦いから目が離せませんね!

田中千尋さん写真
漫画ミュージアム
田中千尋さん

書籍写真

こんにちはウーフ
(くまの子ウーフの童話集・2)

神沢利子/作 井上洋介/絵
ポプラ社

 主人公の子熊のウーフが、身近な世界に「不思議だな」「どうしてだろう」と問いかけながら成長する8編の童話。第6話「雪の朝」は、冬の季節にピッタリのお話。いつもより鼻先が冷たい朝、ウーフを待っていたのは一面の雪。さっそく外に出て遊ぶと…。雪の明るさや誰かの足跡に興味を示し、友達との遊びをまじえてユーモラスに展開する様子は、小さな子どもの時間そのものともいえるウーフの世界。読んでもらっても自分で読んでも楽しめるお話集です。この童話集は戸畑出身の作者が生んだ代表作の一つで、子どもたちに50年以上読み継がれています。

福島波磨子さん写真
子ども図書館
司書 福島波磨子さん

書籍写真

ぽとんぽとんは なんのおと

神沢利子/作 平山英三/絵
福音館書店

 ふゆごもりのあなのなか、熊のかあさんが二匹の坊やを生みました。坊やたちはすくすく育ち、外から聞こえてくる音に耳を澄ませます。「かーん、かーんってなんのおと?」音が聞こえる度にかあさんに聞く坊やたちーー。白い雪とほのかな縹(はなだ)色に包まれる森の奥、木の洞の中で寄り添いながら春を待つ熊の母子のぬくもりがしみじみ伝わる作品。淡く柔らかな色彩と優しい筆遣いが、寒い森の姿を優しく描き出し、冬の自然の息遣いを鮮やかに伝えています。温かな毛布にくるまれながら、家族と読んでもらいたい一冊。

亀山愛理さん写真
子ども図書館
司書 亀山愛理さん

点字図書、録音図書写真

みずかみかずよ生誕80年記念
詩画集「ふきのとう」

みずかみかずよ/詩 西川幸夫/画
詩画集「ふきのとう」刊行する会

 作者は八幡出身の詩人。37編の詩に、北九州市在住の淡彩画家が絵を添えた詩画集。表題作「ふきのとう」を読んだ瞬間おもわず笑みがこぼれ心が暖かくなり、一気に読んでしまいました。作者が紡ぐ詩はどれも柔らかく、分かりやすい言葉でつづられていて、刊行の祝辞にある「子供にも、大人にも、老いた人にもまっすぐに暖かく響いてゆきます」に納得です。視覚障害のある私には、詩に添えられている絵を見ることはできませんが、ボランティアさんによる点訳・音声訳の絵の説明に助けられ、イメージを広げる事ができました。

写真
点字図書館
福島朗子さん

施設情報

中央図書館

電話093-571-1481

〒803-0813小倉北区城内4-1

開所時間
9時30分〜19時(土・日曜日、祝・休日は、9時30分〜18時) 
休所日
月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月27日〜1月3日、館内整理日(原則、毎月末日)
文学館

電話093-571-1505

〒803-0813小倉北区城内4-1

開所時間
9時30分〜18時(入館は17時30分まで)
休所日
月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月29日〜1月3日
料金、費用
一般240円、中学・高校生120円、小学生60円
松本清張記念館

電話093-582-2761

〒803-0813小倉北区城内2-3

開所時間
9時30分〜18時(入館は17時30分まで)
休所日
月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月29日〜1月3日
料金、費用
一般600円、中学・高校生360円、小学生240円
漫画ミュージアム

電話093-512-5077

〒802-0001小倉北区浅野2丁目14-5、あるあるCity5・6階

開所時間
11〜19時(入館は18時30分まで)
休所日
火曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月31日〜1月3日(12月28日、1月4日は特別開館)
料金、費用
一般480円、中学・高校生240円、小学生120円、未就学児は無料
子ども図書館

電話093-571-0011

〒803-0813小倉北区城内4-1

開所時間
9時30分〜19時(土・日曜日、祝・休日は、9時30分〜18時)
休所日
月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月27日〜1月3日、館内整理日、特別整理期間
子ども電子図書館

図鑑や学習参考書など約2000冊の電子図書をそろえており、インターネットで貸し出し、予約を行うことができます。利用には、電子図書館専用のIDが必要になります。

点字図書館

電話093-645-1210

視覚に障害のある人のために、点字図書や録音図書を貸し出しています。

〒806-0021八幡西区黒崎3丁目15-3、コムシティ5階

開所時間
10〜17時30分
休所日
火曜日、祝・休日(火曜日が祝・休日のときは翌日も休館)、12月28日〜1月4日

〈ご利用にあたって〉登録が必要です。北九州市内に居住か通勤・通学し、視覚障害の身体障害者手帳を所有している人が対象です。

知らないともったいない図書館の活用方法

図書館の司書さんに聞いてみました

▼希望する本の予約ができます

 市立図書館(中央図書館、子ども図書館、各地区図書館・分館)では読みたい本が貸し出し中のときは、予約をすることができます。市内の図書館にある本は取り寄せも可能です。本の準備ができ次第、希望の連絡先にご連絡します(利用者登録が必要)。
※取り寄せできないものもあります。

▼図書館に行かなくても予約ができます

 市立図書館では、パソコンやスマートフォンから資料の予約が可能です。また、貸し出しや予約の状況確認などもできます。

▼市外の公共図書館からの本の取り寄せもできます

 市内の図書館に所蔵がないものは、市外の図書館からの取り寄せにも相談に乗ります。
※国立国会図書館・他の自治体図書館からの本の取り寄せには、送料がかかる場合があります。

▼調べもののお手伝いをします

 市立図書館には「司書」という図書の専門家がいます。司書は、皆さんに読んで欲しい本を取り寄せたり、たくさんある本を分類・整理したり、資料を探して欲しい時に相談に乗ってくれたりする仕事をしています。「こんな本が読みたい」「郷土史を調べたい」など図書について分からないことがあったら、相談してみましょう。

お気軽にご相談を!

問い合わせ
中央図書館 電話093-571-1481

本にまつわるビックリ! まめ知識
中央図書館に世界最古の印刷物が!

 中央図書館に所蔵されている「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」は、制作年が明確な世界最古の現存印刷物と言われている「陀羅尼(経文)」を木製の小さな塔に納めたものです。天平宝字8年(奈良時代)、称徳天皇によって制作され、東大寺や法隆寺など10カ所のお寺に10万基ずつ奉納されました。「藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱」で大勢の死者が出たことを悼み、この戦いを平定した際に、人々の供養と平和への願いを経文に込めた、と伝えられています。中央図書館が昭和50年(1975年)に開館した際、そのうちの一つが寄贈され、歴史的な貴重資料として大切に保管されています。※現在は非公開です。

百万塔陀羅尼写真
▲木製の三重の塔の中に「陀羅尼(経文)」が収められています

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