市長先生は災害に関して、どのような活動に取り組んでおられますか。
准教授本学は北九州市と防災協定を結んでおり、授業に防災科目を取り入れたり、学内の地域共生教育センターなどで防災人材の育成に力を入れたりしています。その他、市の防災・減災教育推進アドバイザーとして市内の小学校で防災授業を行うなど、幅広い取り組みを進めています。
災害はいつ起きてもおかしくない
市長昭和28年に北九州大水害があったように、災害はいつ、どこで起こるか分かりません。災害から命を守るためには、一人一人が防災に対する正しい知識や心構えを持つことが重要です。先生の地域活動を通じて、住民の意識について気づかれたことはありますか。
准教授防災意識に関しては市内でも地域差が大きいと感じます。地形条件や歴史的な経緯から「今まで大丈夫だったから今後も心配ないだろう」と楽観しがちな地域もありますが、気候変動が進んでいる背景もあり、市内のどこでも、いつ災害が起きてもおかしくないことを広く知ってもらうことが重要です。
市長防災に関する情報発信として、市では、防災ガイドブックやハザードマップの作成、出前講演や防災イベントの実施のほか、災害時にはさまざまな手法で避難情報などを発信しています。情報取得について、市民の方々へのアドバイスはありますか。
准教授台風や大雨など「空」が原因で起きる気象災害には必ず兆しがあり、必要な備えを準備する時間があります。明日は大雨になりそうだ、台風が近づいている、といった場合に、各自が備えるだけでなく、近隣に「備えは大丈夫?」と一声かければ、地域で備えの連携ができます。一方で、地震など「地面」で起きる災害は予測ができないので、日頃からの備えが大事になります。情報取得に際してはどうしても個人差や世帯差が生じるため、地域の中でキーマンとなる人たちが近隣住民に積極的に知らせていくことが重要です。
▲危機管理室内の大型モニター
(避難所開設の状況をリアルタイムで表示)
防災は声をかけ合える関係から
市長そのためにも、いざという時に気軽に声をかけ合える関係づくり、地域において共助の機運を高める取り組みが求められているのだと思います。実際に、地域が主体となって特色ある防災活動を行っているところもあるようですが、いくつか事例を紹介していただけますか。
准教授小倉北区の貴船校区では、校区内のある企業は紫川の氾濫時に企業の立体駐車場を避難場所として提供することとし、避難訓練も実施しています。また小倉南区の横代校区では、地域の防災訓練において中学生が小学生の指導役となり、それを地域の大人たちがサポートする取り組みが定着しています。
市長そうした先進的な取り組みが、各地域の状況に応じた形で広がってほしいですね。市としても、地域、住民、企業の三方よしの成果につなげられるよう、後押ししていきたいと思います。地域の防災活動を支援していく中で、どんな課題がありますか。
准教授地域防災には、住民だけでなく、企業、学生などさまざまな立場の人にできる限り多く参加してもらうという視点が必要です。その意味でも、本学では多くの防災人材を育成し、北九州市のみならず全国に送り出したいと考えています。災害ボランティアなどで得た知見が、防災はもちろん、まちづくりやその他の社会課題の解決にも大いに役立つでしょう。
市長災害対応にあたっては、市や関係機関、地域、住民の皆さんが一体となって取り組むことが必要です。子どもや若者にいかに関わってもらうかも重要となります。最後に、市民の皆さんへのお願いです。災害はいつどこで起こってもおかしくありません。日頃から、災害時の避難経路の確認や家庭内での食料、水などの備蓄をお願いします。市としましても、防災の強化に一層努めていきます。
村江 史年 北九州市立大学 准教授
北九州市防災会議委員、みんな de Bousaiまちづくり推進事業ファシリテーターなど、防災関連の要職多数。本市事業以外でも、学生を交えた被災地支援(熊本、朝倉)など、活動は多岐にわたる。